関東では「肉まん」だけど…

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 方言の違いはもちろん、「うどんのつゆは透き通った色か濃い色か」「卵焼きは甘いかしょっぱいか」など、何かと違いの多い関東と関西の食文化。実は「肉」という言葉の意味に関しても、関東・関西で認識の違いがあるといいます。一体どんな違いがあるのでしょうか。

カレーや肉じゃがに使う肉といえば…?

 まず「肉」と聞いて、あなたが思い浮かべるのは何の肉ですか? 一般的に、関東圏では「肉」と聞いて特定の肉を思い浮かべる人は少ないのに対し、関西では「肉=牛肉」を連想する人が多いようです。

 そのため、関西では牛肉以外の肉を使う際、何の肉を使っているか分かりやすい呼び方になっていることがよくあります。有名な例でいうと、例えば「肉まん」は、関西では「豚まん」と呼ぶのが一般的。「肉まん」だと牛肉を連想してしまう人が多いため、間違える人がいないように「豚まん」と呼ばれるようになったようです。

 また、カレーに入れる肉も、関東では豚肉、関西では牛肉を使う家庭が多いというのは有名な話。そのため、関西では「牛肉以外の肉をカレーに入れるときは『ポークカレー』とか『チキンカレー』って呼ぶ」など、分かりやすいようにわざわざ肉の名前をつけるという声もあるほど。

 さらに、肉じゃがや肉うどんについても、関東では豚肉、関西では牛肉を使うのが一般的。このことからも、関西では「肉=牛肉」という価値観が根強く残っていることがよく分かります。

 では、なぜ「関東では豚肉、関西では牛肉」という構図が出来上がったのでしょうか。それには、もともと農耕に使われていた家畜が、関西では牛、関東では馬がメインだったという歴史的背景が関係しているようです。

 日清戦争や日露戦争で軍用食料として牛肉の缶詰が使用された時代、国内が牛肉不足に陥ったことがありました。肉不足に困った関西の人たちは、農耕用に飼われていた牛を食べて肉不足を乗り切ることができたのです。しかし、農耕に馬を使うことの多かった関東ではそうはいきません。そこで関東の人々の暮らしを支えたのが、雑食で繁殖能力も高い豚だったのです。

 関東・関西における「肉」という言葉への認識の違いは、単なる好みではなく、歴史的背景が要因となって形成されてきたことが分かります。地域ごとの料理の違いを見つけたら、その理由を調べてみると、意外な歴史の勉強になるかもしれませんね。