(※写真はイメージです/PIXTA)

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物価高が続くなか、実質賃金がプラスに転じ、明るい兆しがみえてきたなか、まだまだ浮上できずに苦しむ人たちも。東京のド真ん中で貧困生活を続ける若者の実態とは?

令和の米騒動…米高騰に嘆きも「米を炊ける環境なだけ、まだまし」

――お昼、お弁当

――はい、家でおにぎりを握ってきました。今月(生活が)苦しくて

――偉いね

――お米さえあれば何とかなります

そんなオフィスでの会話。入社間もない学卒者は、まだ給与も低く、1人暮らしだと家計もひっ迫。ランチにお金をかけるわけにもいかず、手作り弁当を持参するというのは定番。なかでもおにぎりは、定番中の定番かもしれません。

たとえば米5キロで考えてみましょう。コンビニのおにぎりは1個100グラムほど。米3分の1合で1個のおにぎりが作れます。そして1合のお米は炊いたあと、約300グラムになるので、米5キロあれば、おにぎりが105個作れる計算になります。お昼におにぎり2個作って持ってくるとしたら、2ヵ月くらいは持つことになります。

そう考えると「お米さえあれば何とかなる」はまさにその通り。しかしそんな米が高騰しているのは、多くの人が知っているところ。総務省統計局『小売物価統計調査統計調査』によると、2024年8月の米5キロ(コシヒカリを除く)は全国平均2,650円。前年8月が2,043円なので、実に3割も高くなっています。

おもな都市別にみていくと、最も高いのが「東大阪市」で米5キロが3,650円。「西宮」「大津市」「相模原市」「和歌山市」と続きます。一方で最安値は「八戸市」で2,139円。「盛岡市」「松山市」「旭川市」「高松市」と続きます。日本の主要都市のなかで1,500円も差が生じているわけですから、地域によって実感値は異なるかもしれませんが、米の高騰は、生活苦を自炊で乗り越えようとしている自炊サラリーマンを苦しめています。

――米を炊けるだけいいですよ

鈴木翔太さん(仮名・29歳)。米を炊きたくても炊けない、そのワケは? 実は鈴木さん、今は家なし。家賃が払えず強制退去。今は友人の家を転々と、時には野宿をしながら暮らしているといいます。

毒親から逃げるために上京も「手取り14万円」のブラック企業に就職

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会『第27回 賃貸住宅市場景況感調査 「日管協短観」 2022年4月〜2023年3月』によると、全国の月末で1ヵ月の滞納率は0.8%、2ヵ月以上の滞納率は0.3%。また首都圏では1ヵ月滞納率が0.4%と、関西圏3.3%、その他地域の2.3%よりもだいぶ低く、また2ヵ月以上の滞納率でも首都圏では0.2%に対して関西圏では1.1%、その他地域では0.8%と地域差があります。

さらに鈴木さんのように、家賃が払えず追い出されるというのは相当まれ。果たして鈴木さんに何があったのでしょうか。

上京してきたのは、20歳のとき。「とにかく毒親から逃げたかった」と振り返ります。

――うちは片親なんですが、働かず過干渉、僕の収入に依存していて。そんな生活に疲れて……縁を切るつもりで家を飛び出しました

必要最低限の荷物と、必要最低限のお金を持って上京。住み込みのアルバイトをしながらお金を貯め、アパートを借りられるようになったタイミングで就職。正社員として働き始めましたが、人間関係に悩み退職してしまったとか。

――いわゆるブラック企業。給与ももらえるだけましと思っていたけど、手取りで14万円。生活はカツカツでした

手取り14万円ということは、月収にすると18万円ほど。厚生労働省の調査によると、サラリーマン(正社員)の月収の中央値は32.0万円。下位25%で25.6万円、下位10%で21.5万円。18万円というと、下位6%にあたります。

貯金もほとんどない状態で無職になった鈴木さん。家賃も払えず、ホームレス状態。携帯電話料金も払えず、現在は解約。フリーWi-Fiを頼りに職探しをしているとか。

――どこでWi-Fiを拾えるか、ずいぶんと詳しくなりましたよ(笑)

できるだけ早く新しい職を見つけて生活を安定させることが直近の目標。そんななか、もうすぐ30歳になるという現実に、少々落ち込むことも。

――僕、まだ手遅れではないですか?

地元では結婚し、仕事に子育てに忙しくしている友人も多く、彼らと比べると、ずいぶんと後方を走っていることに焦りを感じているといいます。だからといって、もう地元には戻りたくないと鈴木さん。実家での日々を振り返り、東京での極貧生活のほうがまだマシだといいます。

――次はブラック企業かどうか、きちんと見極めようと思います。2度と同じ失敗はしないように

[参考資料]

総務省統計局『小売物価統計調査統計調査』

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会『第27回 賃貸住宅市場景況感調査 「日管協短観」 2022年4月〜2023年3月』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』