YouTubeやXなどの大手SNSは子どもを十分に保護できておらず「自社サービスに子どもユーザーは存在しない」などの言い訳を放つ
アメリカ連邦取引委員会(FTC)が大手SNS企業に対して実施した個人情報収集状況調査の結果を報告しました。報告書では企業がありとあらゆる手段で個人情報を収集していることや、子どもの保護が十分でないことが示されています。
A Look Behind the Screens: Examining the Data Practices of Social Media and Video Streaming Services - Social-Media-6b-Report-9-11-2024.pdf
FTC Staff Report Finds Large Social Media and Video Streaming Companies Have Engaged in Vast Surveillance of Users with Lax Privacy Controls and Inadequate Safeguards for Kids and Teens | Federal Trade Commission
https://www.ftc.gov/news-events/news/press-releases/2024/09/ftc-staff-report-finds-large-social-media-video-streaming-companies-have-engaged-vast-surveillance
FTCは、2020年12月に大手SNSを運営する「Amazon(Twitchを運営)」「Facebook(現Meta)」「YouTube」「Twitter(現X)」「Snap」「ByteDance(TikTokを運営)」「Discord」「Reddit」「WhatsApp」の9社に対して「個人情報や統計情報をどのように収集・追跡・使用しているか」「ユーザーに表示するコンテンツをどのように選択しているか」「個人情報や統計情報にアルゴリズムや分析を適用するか否か、どのように適用しているか」「子どもや10代の若者に与える影響」について報告するように命令しました。この命令に対する回答をまとめたものが、今回発表された報告書です。
報告書によると、SNS運営企業は「ユーザーの直接入力」「ユーザーの行動履歴」「運営企業が提供する他のSNS」「アルゴリズムやAIによる推測」「広告追跡技術」「広告主やデータブローカー」といった多様な情報源を駆使して個人情報を収集していたとのこと。
SNS運営企業は収集した個人情報を活用して年間数十億ドル(数千億円)もの収益を得ています。FTCのリナ・カーン委員長は「個人情報の収集は企業にとっては利益となる。しかし、ユーザーに対する監視行為はユーザーのプライバシーを危険にさらし、自由を脅かし、個人情報窃取やストーカー行為などのリスクにさらすことになる」と述べ、企業による個人情報収集を「監視」と表現して非難しています。
また、「一部の企業が、ユーザーから個人情報削除要求を受けた際に一部のデータを削除せず残している」「企業が『個人情報をAIやアルゴリズムで分析する自動化システム』を用いており、自動化システムによるデータ使用を制限する方法や無効化する方法を用意していない」といった問題点も指摘されています。
さらに、報告書では「SNSが若年ユーザーの精神衛生に悪影響を及ぼす」という研究結果を引用しつつ「企業はサービス上で子どもや若者に対する適切な保護を提供していない」と結論付けられています。加えて、多くの企業が責任回避のために「自社のサービスは子ども向けではない」「自社のサービスでは子どものアカウント作成を禁止しているため、プラットフォーム上に子どもは存在しない」といった言い訳を用意していたとのこと。カーン委員長は「いくつかの企業が子どもや10代の若者を適切に保護できていないことは特に憂慮すべきことだ」と述べています。
FTCは今回の報告書をもとに、政策立案者に対して「企業による監視を制限し、ユーザーにデータ管理権限を与える包括的な連邦プライバシー法案を可決すべき」と呼びかけています。また、企業に対しては「データ収集の制限」「適切なデータ削除」「プライバシーを侵害する広告追跡技術の禁止」「10代の若者に対するプライバシー保護の強化」などを求めています。