1.太り過ぎ

いびきとは、上気道(空気の通り道)が狭くなった結果、発生する振動音のことです。猫と人間では、いびきの引き金になる部位が少し違います。簡単に言うと、人間は喉まわりで、猫は鼻腔(鼻の穴)です。

猫のいびきの要因のひとつは、肥満です。首まわりに脂肪がたっぷりついてしまうと、気道が狭くなることでいびきが生じます。人間の肥満によるいびきと同じ理屈です。

肥満が原因のいびきそのものには過度な心配はいりません。しかし、ご承知のように、肥満はさまざまな病気を引き起こす「温床」です。放っておくと、関節炎をはじめ、糖尿病、心臓病、呼吸器疾患などのリスクが高くなります。

いくらかわいいと言っても、肥満によるいびきは一定の注意が必要です。愛猫の健康のためにも、日々、適切なカロリー摂取、適度な運動などで、適正体重を維持するように心がけましょう。

2.いびきをかきやすい猫種だから

2つ目の理由は、いびきをかきやすい猫種がいることです。具体例を挙げると、ペルシャをはじめ、スコティッシュフォールド、エキゾチックショートヘア、チンチラなど。共通するのは、どの猫も短頭種という点です。

通称「鼻ペチャ」な猫は、度重なる品種改良の結果、もともと鼻腔が狭く、呼吸しづらくなっています。

また、鼻や喉の構造上、呼吸時の筋肉負荷もかかるうえに肥満が重なると、ますます気道を圧迫します。つまり短頭種は、先天的・後天的、2つの要素によって、いびきをかきやすい体質と言えるわけです。

短頭種で気をつけたいのは、「短頭種気道症候群」という病気です。鼻づまりのような呼吸音や口呼吸、睡眠時のいびきなどが症状としてあらわれます。

悪化すると、呼吸や体温調節が正常に機能せず、命を落とす危険もあるので要注意です。

3.鼻腔内のトラブル

最後は、鼻腔内のトラブルの可能性です。まず、疑われるのは、ヘルペスウィルスやカリシウィルス、クラミジアなどの感染性鼻炎です。

典型的な症状は、くしゃみと鼻水、鼻水づまりなど。特に、鼻の粘膜が腫れてしまうと、鼻腔が狭くなり、必然的にいびきをかきやすくなります。

さらに、鼻腔内腫瘍がいびきのきっかけになるケースもあります。腫瘍のために鼻腔が塞がり、鼻呼吸が困難になるからです。

鼻腔内腫瘍は悪性がほとんどで、症状が進むと、鼻血や顔面変形を伴うこともあります。特に両鼻からの鼻出血ではなく、片鼻のみの場合で長引くときには腫瘍の疑いが大きくなります。もしこのような症状が出た場合は、ただちに動物病院を受診しましょう。

まとめ

猫のいびきはかわいらしく、愛嬌のあるものですが、場合によっては、病気の可能性が潜んでいることもあります。

「スースー」や「ピーピー」などの音が高めのいびきは、リラックスして眠っている証拠です。正常ないびきなので問題はありません。一方、「ブーブー」や「ガーゴー」など音が大きく太いいびきは、少し心配です。

もしいつものいびきと違う異変を感じたら、手遅れになる前に、動物病院に相談してみてください。


(獣医師監修:平松育子)