大河原克行のNewsInsight 第323回 NTTコノキューが国産スマートグラスを今秋発売、価格訴求と眼鏡らしさへも意欲
NTTコノキューデバイスは、約125gの軽量化を実現したXRグラス「MiRZA(ミルザ)」を発表した。クアルコムのSnapdragon AR2 Gen 1を、世界で初めてスマートグラスに搭載。手軽に6DoFコンテンツを活用できる性能を備えているのが特徴だ。
NTTコノキューデバイスのXRグラス「MiRZA(ミルザ)」。価格は24万8000円。2024年秋に発売
NTTコノキューデバイスの堀清敬社長は、「眼鏡のような軽い掛け心地ととともに、スマートフォンと無線接続ができるため、取り回しが軽快である。それでいて、中身は空間認識による6 DoF 表現がしっかりとできる性能を持つ。NTTコノキューデバイスとしては初の製品である。グローバルに見ても、ユニークな商品であると自負している。これまでになかった世界を体験してもらいたい」と述べた。
価格は24万8000円。2024年秋に発売する。
NTTコノキューデバイス 代表取締役社長の堀清敬氏
NTTコミュニケーションズを通じた法人向け販売のほか、NTTドコモのオンラインショップやレンタルサービスのドコモkikitoを通じた販売展開を計画。Amazonなどを通じた個人向け販売や、ソリューションパートナーを通じた販売も計画している。
9月11日からは、東京・秋葉原の秋原駅構内にあるXR BASEで実機の体験ができる。また、今後はドコモショップの一部でも展示する計画だ。
なお、本体の企画から開発、製造までを日本国内で行っているほか、ソフトウェアやアプリケーションも、NTTコノキューデバイスが開発している。
MiRZAは約125gと軽量。眼鏡のような軽い掛け心地で、取り回しが軽快という
MiRZAの特徴。3Dコンテンツの表現も可能
現時点の想定販路。個人向けの販売もある
東京の秋葉原駅構内などで実機体験ができる
○まだ世の中に無い、簡単で気兼ねなく利用できるデバイスを
NTTコノキューデバイスは、2023年4月に、NTTドコモの100%子会社であるNTTコノキューと、シャープの合弁会社として設立。個人および法人を対象にしたXRサービス向けのデバイスを開発している。
「メタバースやXRなどのテクノロジーを、世の中の暮らしや企業経営に役立つ価値あるサービスにしたいと考えている。だが、簡単に装着し、気兼ねなくサービスを利用するためのデバイスがない。コノキューグループの事業目的を達成するためにも、世の中にないデバイスを自分たちで作ろうと考えて設立した企業である」とする。
MiRZAは企画・開発から製造まで一貫して日本国内であることもポイント
今回発表したMiRZAは、レンズ部分には、LetinAR の薄型ミラーバー方式の光学モジュールを採用。両眼FHD(1920×1080)のMicroOLEDディスプレイを搭載しており、対角45度 の広視野角を実現。最大1000nitsの明るさとなっている。「プリズムを介さない仕組みであるため、ユニットが小型化しているだけでなく、天面のプロジェクターをミラーで反射しており、明るさが減衰しないという特徴を持つ」とした。
中央部にはFHDのRGBカメラを搭載。さらに、フレーム前面の左右両端部には空間認識用のモノクロカメラを搭載している。カメラ利用中は、周りに周知するため、LEDが点滅する仕様となっている。また、フレームのつる部分には操作用のタッチセンサーや4個のマイク、左右に合計2個のスピーカーを搭載しており、音の指向性を持ったサービスの提供も可能になるという。装着状態を確認する近接センサーや、ディスプレイの明るさを自動調整する照度センサーも搭載している。
開発プラットフォームは、Snapdragon Spaces Technology に対応しており、UnityやUnreal Engine での3Dコンテンツの開発が可能だ。
MiRZAアプリによって、シャープのAndroidスマホ「AQUOS R9」と、Bluetooth5.0およびWiFi6Eでの接続が可能であり、今後、シャープの他機種や、他社のAndroidスマホにも対応製品を広げる。iPhoneへの対応は現時点では予定していない。なお、MiRZAアプリには、ランチャー機能を搭載しており、ブラウザを通じてコンテンツを見ることもできる。
MiRZAの主なスペック
また、視力補正が必要なユーザーのために、パリミキとアイジャパンと協業。視力補正用レンズを組み合わせることが可能だ。ドコモショップ内にあるアイメガネ南浦和店では、9月13日からMiRZAの体験が行えるようにする。
視力補正用レンズを組み合わせることも可能
具体的な利用シーンをいくつかあげた。
ひとつめは、通訳や文字起こしである。海外の言葉が理解できなかったり、耳が不自由な利用者も、MiRZAのグラス上にテキストが表示されたりするため、スムーズなコミュニケーションができるようになるという。
2つめはオフィスワークである。複数の画面をMiRZAに表示。自宅で仕事をする場合にも、MiRZAと接続したスマホ、キーボードがあるだけで業務が行える。
3つめは、遠隔作業支援だ。現場作業者とオペレータがネットワークでつながり、作業を支援。生産性を高めたり、作業品質を向上させたりできる。「MiRZAは、ゴーグル型XRとは異なり、作業現場でもスムーズな装着や脱着が行える」とした。
そのほか、美術館や博物館では、展示物を見た際の仮想ガイドを表示したり、デジタル展示物を持ち上げたりといった用途を想定。ライブコンテンツの配信やゲームでの活用なども想定している。
美術館や博物館では展示物の仮想ガイドを表示
デジタル展示物を持ち上げるといった利用も可能だ
立体感がある新たなゲーム体験もできる
オフィスワークでは複数の画面を表示することができる
遠隔作業支援により熟練者のサポートを得ながら作業できる
MiRZAのグラス上にテキストが表示され、スムーズなコミュニケーションができる
NTTコノキューデバイスでは、MiRZAの利用シーン拡大に向けて、12社のソリューションパートナーと連携。さらに、2社の事業創出パートナーを通じて、具体的な活用シーンを模索している。事業創出パートナーの1社であるENENでは、店舗やオフィス、空き部屋などにMiRZAを持ち込み、家具の配置シミュレーションを行う利用提案を進めるという。また、もう1社の事業創出パートナーである広島三越では、外商部門において、MiRZAを通じてリモートで商品を紹介。目の前に商品があるような新たな購買体験に活用するという。
また、親会社のNTTコノキューでは、パートナープログラムを用意し、対応アプリケーションの開発支援や、共同プロモーションの実施などに取り組む。
利用シーンを様々なパートナーと共に創出
「多くの方々と連携することで、我々が想像する利用シーンを超えるアイデアをもとに、MiRZAの活用を広げていきたい」とする。
○MiRZAは拡大促す「ステップ1」、来年はより「眼鏡」な商品を開発
NTTコノキューデバイスでは、今回のMiRZAの発表を「ステップ1」と位置づけ、まずは、法人向けや開発者向けに販売することになる。
「XRグラスがどんどん売れていく環境にはなっていない。ソリューションやサービスの創出を含めて、これからの市場である。2、3年後に数10万台が売れるという状況も難しいだろう。だが、MiRZAでは大掛かりな準備をしなくても、手軽に3Dコンテンツや6 DoFを体験してもらえる世界を実現したことは間違いない。まずは体験をしてもらい、そこから様々なアイデアが生まれ、利用シーンを拡大させるきっかけを作りたい」と述べた。
また、「ステップ2」として、2025年の早いタイミングには、MiRZAの2号機を製品化し、個人向けにも展開する。「より眼鏡に近づき、一般ユーザーが手に取りやすい価格帯での販売を目指す。すでに開発をスタートしており、1号機とは性質が異なるものになる。普段から装着してもらい、生活シーンに溶け込んだ商品を提供したい」と述べた。
現時点での課題は、バッテリー駆動時間といえそうだ。現在の仕様では、1〜1.5時間としており、堀社長も「課題として認識している」とする。「眼鏡としての装着性や重量バランスを考えると、現時点での限界といえる部分でもある。試行錯誤した結果の仕様となっている。長時間利用する場合には、外付けバッテリーを接続した利用も可能になっている」と述べた。
今後の展開。ステップ2では「ほぼメガネ」を目指す
さらに、それ以降の製品計画として、「ほぼ眼鏡といえるMiRZAの次世代機を開発し、多くの人が利用する製品づくりを進めたい。MiRZA をPCと接続して利用することも検討していく。数年後には事業として収益を得られるようにしたい」と述べた。
MiRZAの進化がどう進むのか、それに伴ってソリューションやサービスがどう広がるのかが、今後の普及戦略の鍵を握る。
NTTコノキューデバイスのXRグラス「MiRZA(ミルザ)」。価格は24万8000円。2024年秋に発売
NTTコノキューデバイスの堀清敬社長は、「眼鏡のような軽い掛け心地ととともに、スマートフォンと無線接続ができるため、取り回しが軽快である。それでいて、中身は空間認識による6 DoF 表現がしっかりとできる性能を持つ。NTTコノキューデバイスとしては初の製品である。グローバルに見ても、ユニークな商品であると自負している。これまでになかった世界を体験してもらいたい」と述べた。
NTTコノキューデバイス 代表取締役社長の堀清敬氏
NTTコミュニケーションズを通じた法人向け販売のほか、NTTドコモのオンラインショップやレンタルサービスのドコモkikitoを通じた販売展開を計画。Amazonなどを通じた個人向け販売や、ソリューションパートナーを通じた販売も計画している。
9月11日からは、東京・秋葉原の秋原駅構内にあるXR BASEで実機の体験ができる。また、今後はドコモショップの一部でも展示する計画だ。
なお、本体の企画から開発、製造までを日本国内で行っているほか、ソフトウェアやアプリケーションも、NTTコノキューデバイスが開発している。
MiRZAは約125gと軽量。眼鏡のような軽い掛け心地で、取り回しが軽快という
MiRZAの特徴。3Dコンテンツの表現も可能
現時点の想定販路。個人向けの販売もある
東京の秋葉原駅構内などで実機体験ができる
○まだ世の中に無い、簡単で気兼ねなく利用できるデバイスを
NTTコノキューデバイスは、2023年4月に、NTTドコモの100%子会社であるNTTコノキューと、シャープの合弁会社として設立。個人および法人を対象にしたXRサービス向けのデバイスを開発している。
「メタバースやXRなどのテクノロジーを、世の中の暮らしや企業経営に役立つ価値あるサービスにしたいと考えている。だが、簡単に装着し、気兼ねなくサービスを利用するためのデバイスがない。コノキューグループの事業目的を達成するためにも、世の中にないデバイスを自分たちで作ろうと考えて設立した企業である」とする。
MiRZAは企画・開発から製造まで一貫して日本国内であることもポイント
今回発表したMiRZAは、レンズ部分には、LetinAR の薄型ミラーバー方式の光学モジュールを採用。両眼FHD(1920×1080)のMicroOLEDディスプレイを搭載しており、対角45度 の広視野角を実現。最大1000nitsの明るさとなっている。「プリズムを介さない仕組みであるため、ユニットが小型化しているだけでなく、天面のプロジェクターをミラーで反射しており、明るさが減衰しないという特徴を持つ」とした。
中央部にはFHDのRGBカメラを搭載。さらに、フレーム前面の左右両端部には空間認識用のモノクロカメラを搭載している。カメラ利用中は、周りに周知するため、LEDが点滅する仕様となっている。また、フレームのつる部分には操作用のタッチセンサーや4個のマイク、左右に合計2個のスピーカーを搭載しており、音の指向性を持ったサービスの提供も可能になるという。装着状態を確認する近接センサーや、ディスプレイの明るさを自動調整する照度センサーも搭載している。
開発プラットフォームは、Snapdragon Spaces Technology に対応しており、UnityやUnreal Engine での3Dコンテンツの開発が可能だ。
MiRZAアプリによって、シャープのAndroidスマホ「AQUOS R9」と、Bluetooth5.0およびWiFi6Eでの接続が可能であり、今後、シャープの他機種や、他社のAndroidスマホにも対応製品を広げる。iPhoneへの対応は現時点では予定していない。なお、MiRZAアプリには、ランチャー機能を搭載しており、ブラウザを通じてコンテンツを見ることもできる。
MiRZAの主なスペック
また、視力補正が必要なユーザーのために、パリミキとアイジャパンと協業。視力補正用レンズを組み合わせることが可能だ。ドコモショップ内にあるアイメガネ南浦和店では、9月13日からMiRZAの体験が行えるようにする。
視力補正用レンズを組み合わせることも可能
具体的な利用シーンをいくつかあげた。
ひとつめは、通訳や文字起こしである。海外の言葉が理解できなかったり、耳が不自由な利用者も、MiRZAのグラス上にテキストが表示されたりするため、スムーズなコミュニケーションができるようになるという。
2つめはオフィスワークである。複数の画面をMiRZAに表示。自宅で仕事をする場合にも、MiRZAと接続したスマホ、キーボードがあるだけで業務が行える。
3つめは、遠隔作業支援だ。現場作業者とオペレータがネットワークでつながり、作業を支援。生産性を高めたり、作業品質を向上させたりできる。「MiRZAは、ゴーグル型XRとは異なり、作業現場でもスムーズな装着や脱着が行える」とした。
そのほか、美術館や博物館では、展示物を見た際の仮想ガイドを表示したり、デジタル展示物を持ち上げたりといった用途を想定。ライブコンテンツの配信やゲームでの活用なども想定している。
美術館や博物館では展示物の仮想ガイドを表示
デジタル展示物を持ち上げるといった利用も可能だ
立体感がある新たなゲーム体験もできる
オフィスワークでは複数の画面を表示することができる
遠隔作業支援により熟練者のサポートを得ながら作業できる
MiRZAのグラス上にテキストが表示され、スムーズなコミュニケーションができる
NTTコノキューデバイスでは、MiRZAの利用シーン拡大に向けて、12社のソリューションパートナーと連携。さらに、2社の事業創出パートナーを通じて、具体的な活用シーンを模索している。事業創出パートナーの1社であるENENでは、店舗やオフィス、空き部屋などにMiRZAを持ち込み、家具の配置シミュレーションを行う利用提案を進めるという。また、もう1社の事業創出パートナーである広島三越では、外商部門において、MiRZAを通じてリモートで商品を紹介。目の前に商品があるような新たな購買体験に活用するという。
また、親会社のNTTコノキューでは、パートナープログラムを用意し、対応アプリケーションの開発支援や、共同プロモーションの実施などに取り組む。
利用シーンを様々なパートナーと共に創出
「多くの方々と連携することで、我々が想像する利用シーンを超えるアイデアをもとに、MiRZAの活用を広げていきたい」とする。
○MiRZAは拡大促す「ステップ1」、来年はより「眼鏡」な商品を開発
NTTコノキューデバイスでは、今回のMiRZAの発表を「ステップ1」と位置づけ、まずは、法人向けや開発者向けに販売することになる。
「XRグラスがどんどん売れていく環境にはなっていない。ソリューションやサービスの創出を含めて、これからの市場である。2、3年後に数10万台が売れるという状況も難しいだろう。だが、MiRZAでは大掛かりな準備をしなくても、手軽に3Dコンテンツや6 DoFを体験してもらえる世界を実現したことは間違いない。まずは体験をしてもらい、そこから様々なアイデアが生まれ、利用シーンを拡大させるきっかけを作りたい」と述べた。
また、「ステップ2」として、2025年の早いタイミングには、MiRZAの2号機を製品化し、個人向けにも展開する。「より眼鏡に近づき、一般ユーザーが手に取りやすい価格帯での販売を目指す。すでに開発をスタートしており、1号機とは性質が異なるものになる。普段から装着してもらい、生活シーンに溶け込んだ商品を提供したい」と述べた。
現時点での課題は、バッテリー駆動時間といえそうだ。現在の仕様では、1〜1.5時間としており、堀社長も「課題として認識している」とする。「眼鏡としての装着性や重量バランスを考えると、現時点での限界といえる部分でもある。試行錯誤した結果の仕様となっている。長時間利用する場合には、外付けバッテリーを接続した利用も可能になっている」と述べた。
今後の展開。ステップ2では「ほぼメガネ」を目指す
さらに、それ以降の製品計画として、「ほぼ眼鏡といえるMiRZAの次世代機を開発し、多くの人が利用する製品づくりを進めたい。MiRZA をPCと接続して利用することも検討していく。数年後には事業として収益を得られるようにしたい」と述べた。
MiRZAの進化がどう進むのか、それに伴ってソリューションやサービスがどう広がるのかが、今後の普及戦略の鍵を握る。