ビリオネアがバックについているメディア企業でさえ、メディアやデジタル広告業界が直面する課題と無縁ではない。

2024年8月20日、セールスフォース(Salesforce)の創設者で最高経営責任者(CEO)のマーク・ベニオフ氏とその妻で慈善家のリン・ベニオフ氏が所有するタイム(Time)で、広告売上低下のなかでの大規模な運営コスト削減策の一環として、スタッフ22人がレイオフされた。タイムCEOのジェシカ・シブリー氏がタイム社員に8月下旬に送ったメモが米DIGIDAYに公開されたが、それによると、編集、営業、マーケティング、テクノロジー、TIMEスタジオ(TIME Studios)の各チームの人員が削減されたという。さらに、請負業者の制限やニューヨーク本社の縮小など、さらなるコスト削減策が控えている。

これらの変革の核心は、タイムの「もっとも商業的に成功した仕事」と「最大の成長機会」、特にAI、気候変動、健康のカテゴリーにおけるリーダーシップの報道に、編集とビジネス戦略を集中させることにある、とシブリー氏は書いている。こうしたことは、営業チームのB2B収益戦略への移行に大きな役割を果たしてきた。

レイオフ発表前の7月22日に収録されたDIGIDAYポッドキャストの最新エピソードで、タイムのB2B収益戦略が成長のための最善の道であるとシブリー氏が考える理由や、オープンAI(OpenAI)やパーププレキシティ(Perplexity)のようなAI技術企業との提携を含む、収益機会のほかの分野についても同氏は話している。

以下は会話のハイライトで、わかりやすさのために一部編集し、まとめている。


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AIに関する交渉に注力



ビジネスの観点からいうと、特にAIにおけるメディアに関してはふたつの道があると思う。交渉の道と訴訟の道だ。一方を選ぶ企業もあれば、もう一方を選ぶ企業もあり、場合によっては両方を選ぶメディア企業もある。我々は交渉するか、AIエコシステムの一部となるかを決めている(中略)これは、我々が生きているあいだに目にすることができるもののなかでもっともエキサイティングで、同時に破壊的なテクノロジーだと思う(中略)(そして)タイムのCEOとして、我々が100年間やってきたことを継続できるように、AIに参加する方法を見つけ出したい。

もし、我々のデータを使ってトレーニングするなら、我々は、その公正な価値を求める。これは過去も今後もそうだ。また、我々が何十年も前から知っているような検索を破壊するAI企業と提携する機会もあり、我々は、そのエコシステムの一部となり、タイムが権威ある、信頼できる方法で検索結果に表示されるようにしたいと考えている。これは、信頼できるジャーナリズムを維持し、あらゆる形式の誤報や偽情報と闘うために非常に重要なことだ。

B2CからB2Bへのシフト



ペイウォールを撤廃したのは我々だけだったが、我々のブランド、使命、目的にとってそれは正しいことだと感じている(中略)Time.comは無料で入手可能であるべきであり、現在の報道だけでなく、100年前の情報も、世界中の出来事を理解するのに役立ててもらいたい。

それはすべて、ビジネス上の決断の一部であり、最高のチャンスの源泉だった。私が入社した当初から、このビジネスはB2Bに焦点を当てた収益モデルへと軸足を移してきた。

B2Bといえば、直販広告ビジネス、(中略)イベントの成長、(中略)そして戦略的パートナーシップを意味し、信頼できるジャーナリズムに根ざし、スタティスタ(Statista)のような企業と協力してエキサイティングな新しいリストやコンテンツの重点分野を構築していくことを意味する。

結果は出ている



広告収入は増加している。我々は(中略)マルチプラットフォーム、統合されたクロスプラットフォームの機会に本当に集中することができ、新規および既存の顧客に直接、ビジネスを推進するための素晴らしい機会を提供している。我々は、世界的に有名な優良企業で、最大のブランドと最大の予算を持つ有名企業と協力している。年間を通してプログラムで彼らと直接仕事をしており(中略)結果は自ずと出てきて、我々は20%の増収を達成し、下半期は非常に好調に推移する見通しだ。

[原文:Amid layoffs and cost cutting, Time CEO Jessica Sibley is expecting a ‘very strong second half’]

Kayleigh Barber(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:戸田美子)