【大阪・関西万博】波紋広がる「90トン」石の日かげ棚、設計者が安全性を再強調 2300字超で詳説「構造安全性に適合した計画」
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の施設「休憩所2」で建設が進む「石のパーゴラ(日かげ棚)」について、安全性を疑問視するような声が相次ぐなか、施設の設計者が改めてX上で安全性の検証体制などを説明した。
「これって本当に大丈夫なの?」
「休憩所2」は休憩所、案内所、トイレ、応急手当所、警備センター、バス停留所など計7棟の建物と、屋外上空で自然石をネックレスのようにケーブルに通して吊るす「石のパーゴラ」からなる。
石のパーゴラに関しては、技術系ウェブメディア「日経クロステック」(日経BP)が2024年8月26日に公開した記事でも紹介された。つるす石の重さは1個90〜250キログラム、総重量は約90トンで、高いところで地上約9.5メートルになるという。日よけの役割をもつとされているものの、雨には濡れるとも。
施設の情報はX上でも拡散され、「大きな重たい石を吊るされてる下で、安心して休憩とか出来る?」「雨も防げない構造の屋根をわざわざ重いもの吊るして作る理由がよくわからない」「これって本当に大丈夫なの?」といった安全性を疑問視する声が相次いだ。
注目が高まるなか、設計を担った工藤浩平建築設計事務所(東京都台東区)の代表取締役・工藤浩平氏は27日、「休憩所2では建築基準法をはじめとした各種法令を遵守し、構造計算や各種専門家へのヒアリング、強度試験などを行った上で設計・施工を進めております」などとXで釈明していた。
そして9月5日、工藤氏は2300字超の長文を投稿し、様々な角度から施設の安全性を強調するなどした。
「建築構造設計の専門家が様々な専門家の知見を加えながら...」
工藤氏は石のパーゴラの設計意図について、万博会期後を見据え、大阪湾の生態系悪化への対策になる「自然石で窪地を埋める」という方法に再利用したいとの思いで自然石を採用したと説明。ほかに技術的な側面も考慮し、「石のパーゴラが、万博という枠組みを超えて、サスティナブルな素材としての自然石の利用を広めるきっかけとなれば」という。
安全性の検証については、
「建築構造設計の専門家が様々な専門家の知見を加えながら構造計算を行って計画の安全性をチェックしています。その上で民間指定確認検査機関にて工作物の確認申請を行い、構造計算の内容も含めて審査を受けており、建築基準法に基づく構造安全性に適合した計画となっています」
とし、「常時荷重、風荷重、地震荷重に対する許容応力度計算を行っています」「石を吊るすケーブルにおいては、災害時でも石同士の衝突が起こらないよう解析結果を設計にフィードバックし、安全性の確保に努めています」などと詳説した。
岩石の研究者や熟練の石工らとともに検証を進め、原寸大の「モックアップ」も作成しており、「設置から9カ月経過していますが、石の割裂やケーブルの破断は確認されず、設計者が想定している強度の確保ができていることを確認しています」。続けて下記のとおり説明した。
「大型台風等の非常時においても石同士がぶつからないよう、構造計算結果を元に石を吊るしたケーブル間には十分な間隔を確保しております。先日の台風10号においても、多少の揺れは確認できましたが、石同士がぶつかるといった大きな揺れは確認されず、問題はありませんでした」