ドヘニーの当日体重増も覚悟…バキバキの肉体美を仕上げた井上尚弥が口にした“哲学”「数年後にフェザーを見据えるならまだまだ」
さらなる進化を見据え、細部にまでこだわりを見せる井上。(C)Lemino/SECOND CAREER
いよいよ、ゴングの時が迫っている。
9月3日、東京・有明アリーナで実施されるボクシングの4団体(WBA、WBC、IBF、WBO)世界スーパーバンタム級タイトルマッチで、王者・井上尚弥(大橋)と挑戦者テレンス・ジョン・ドヘニー(アイルランド)が拳を交える。
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前日計量はともに一発でクリア。とくに井上はリミットちょうどの55.3キロと寸分の狂いもなくパスした。
そして計量後に行われたフェイスオフ。約20秒の睨み合いを繰り広げた末に先にニヤッと笑った井上の身体はまるで彫刻のようだった。バキバキの肉体には筋肉が浮かび上がり、そのシルエットは美しさすらある。
本人曰く「ここでそんなさらっと言えるくらいのものではない」という水抜きの効果はある。ただ、ガリガリにやせ細ったというわけではなく、きめの細かい筋肉が増えたことで、体躯は大きくなっている。それは一朝一夕で仕上がる身体つきではないように見えた。
本人も手ごたえを口にする。試合に向けた調整法について「仕上げ方も今回4回目(スーパーバンタム転級)だが、かなりできている。自分の感覚になるが、もちろん筋肉量の作り方だったり、プラスそれに対してスピードも落とさずというところをこう意識している」と井上は、こう続ける。
「スーパーバンタム、数年後にフェザー級を見据えるのであれば、やっぱり、まだまだやらなければいけないことはあると思う。そこにやっぱり向き合っていかないと成長は見られないと思う。今までやってきたものをそのままやっていくのではなくて、何か新しいことを取り入れながら、手探りでだがそれは進めていかないと現状維持で止まってしまう」
いまや勝利はもちろん、大衆に納得される試合内容も期待されるようになっている。そんな絶対王者であり続けるために、井上は「そうならないためにも何かをやっぱ変えるべきだと思うし、そういった意味でも、今自分の中で考えながらやっている」と現状維持を嫌う。それが彼の哲学なのだ。
ドヘニーは過去に10キロ以上の体重増も記録した。そうした中で今日の試合は当日リカバリーの制限はない。つまり階級制のスポーツにおいて、井上は体格差のある相手と対峙しなければならない可能性が大いにある。
それでも頂点を追及し続ける“モンスター”が、増量したドヘニーを打ち砕く光景を見られるのではないか――。そんな期待をせずにいられない。
[取材・文:羽澄凜太郎]