計量台に乗り、両腕で力こぶを作る比嘉大吾【写真:荒川祐史】

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 ボクシングのWBO世界バンタム級(53.5キロ以下)タイトルマッチ12回戦が9月3日に東京・有明アリーナで行われる。2日は神奈川・横浜市内のホテルで前日計量が行われ、王者・武居由樹(大橋)と挑戦者の同級1位・比嘉大吾(志成)ともに53.4キロで一発パス。比嘉は万全のコンディションを作りきった。戦績は初防衛戦の28歳・武居が9勝(8KO)、29歳の比嘉が21勝(19KO)2敗1分け。

 親交の深い2人には睨み合いに無理があった。両者計量をパスし、恒例のフェースオフへ。しかし、先に武居が笑みを浮かべた。比嘉は「あっちが笑ったので、俺も笑って。『笑うな笑うな』って。そしたら俺が笑ってしまって」と説明。武居と師匠の八重樫東トレーナーは過去、比嘉を指導する野木丈司トレーナーの階段トレーニングに参加。戦友のような間柄だが、火花はリングで散らす。

 15戦連続KO勝ちの日本タイ記録を持つ比嘉は18年4月に世界戦では日本人初の体重超過を犯し、2度防衛したWBC世界フライ級王座を剥奪。資格停止処分を経て1敗したが、再起後4連勝で6年5か月ぶりの世界戦にたどり着いた。当時より2.7キロ重い2階級上のバンタム級で計量をパス。前夜の時点でリミットに入っており、この日は「計量をパスしたらみんなに褒められる(笑)」とおどけた。

 かつては悲壮感を漂わせていたが、笑顔でいられるのは心身ともに仕上がっている証拠。向かい合った武居についても「いい体をしていた。しっかり絞ってきたなと。表情もいい。試合当日は自分よりも戻してくると思う」と調整ぶりを歓迎した。

 野木トレーナーも相手との仲の良さを繰り返し口にしてきたが、「リングに上がった瞬間にそういうのはなくなると思う。当然、武居も同じでしょうし」と強調。パンチャー対決の青写真の一端を明かした。

「(武居の)怖いのは偶発的な交通事故みたいな一発。そういうものを持っている。いつ終わるかわからない。初回の20秒かもしれない。そういうのを見切れて、当たって当てられて、そういうような展開になれば面白んじゃないか。一通りのパンチを見られるような時間は……慎重に。大吾も相手にパンチがあるのは認識している。ちゃんと判断しながらやるんじゃないかと思う」

比嘉のリラックスぶりに野木トレーナー「世界戦だと忘れている節がある」

 8月31日の会見などでも「大吾が頭を下げて入る」と愛弟子の癖をちらつかせる発言をしてきた。「大吾の一番わかりやすい癖。当然、研究してくる。煙幕ですね」とニヤリ。「頭を下げて入ること自体がフェイントになるじゃないですか。そういう情報を仕立てていれば。これだけではないが、そういう相手の対策をできるだけ無効にするような動作を結構やってきた」と対策の対策に胸を張る。

「大吾はジャブが強い。凄く強い。(武居の)アッパーは本当に想定している。それに対するガードの移動、そういうことを注意してやってきた。アッパーを打ちにくくするようなことをやっていきたいなと思う。

 さっき本人(比嘉)を見ると、世界戦ということを忘れている節がある(笑)。『おー、世界戦だからこんなにテーブルあるんですね』みたいな。気負いは今のところ全くない。当日のリングに上がった瞬間からじゃないですかね」

 バンタム級は武居のほか、WBAに井上拓真、WBCに中谷潤人、IBFに西田凌佑が就き、全4つの王座を日本人が独占。拓真は10月13日に元日本王者・堤聖也と3度目の防衛戦を予定し、那須川天心も同級で世界獲りを見据える。

 比嘉は「緊張感はあまりないかもしれない。バンタム級に来て、ずっといつもの試合という感じでやってきた。その試合と変わらない感じで挑めたら。試合当日は緊張するかも」とスイッチを切り替えていく。

 試合はセミファイナル。メインイベントでは、世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)が元IBF王者TJ・ドヘニー(アイルランド)と4団体防衛戦を行う。

(THE ANSWER編集部)