新しい犯罪集団「トクリュウ」とは? その犯罪手口、私たちが気を付けるには…専門家が解説
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜〜金曜6:00〜9:00)。7月31日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「匿名・流動型犯罪グループ“トクリュウ”その手口と対策は?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
◆SNSなどで「闇バイト」を募集する犯罪グループ
警察庁は先月、SNSなどで緩やかにつながって活動する「匿名・流動型犯罪グループ」(通称:トクリュウ)の動向や対策を特集した2024年版の警察白書を公表しました。
吉田:この「トクリュウ」は、どのような犯罪グループなのでしょうか?
塚越:トクリュウは「“匿(トク)”名・“流(リュウ)”動型犯罪グループ」の略です。簡単に言えば、SNSや求人サイトで集めた人を実行役にして犯罪を繰り返す、新しいタイプの犯罪集団を指します。去年から各メディアで報道されています。
警察白書によれば、トクリュウはSNS上で「高額バイト」をうたってメンバーを集めて、事件ごとに離合集散を繰り返しています。
特に匿名性が強い通信手段、例えば「テレグラム」という通信アプリを使っているのが特徴です。跡をたどるのが難しいので、暴力団に比べても指示役をはじめとした集団の中核となっている容疑者の特定が難しいのが問題です。
それでも警察庁によれば、今年4月〜6月にトクリュウとみられる犯罪で検挙された人数は、詐欺や窃盗、強盗など合わせて824人います。多いのは詐欺で452人、続いて窃盗、薬物事犯、強盗が続いています。
トクリュウの犯罪というと、去年大々的に報じられた東京狛江市の強盗殺人事件のような強盗、そして窃盗のイメージがありますが、実際には詐欺が多いとみられており、SNSでは資金の回収役である「受け子」の募集もおこなわれます。
他にも、多額の借金を背負った女性客に売春などをさせる悪質ホストクラブの背後で利益を得ている可能性も指摘されています。活動の幅がかなり広がっているということです。
吉田:「トクリュウ」は、実行役をSNSなどで集めていることが特徴ということですか?
塚越:そうです。先ほど話した4月〜6月に摘発した計824人のうち、3割はSNSがきっかけで犯罪に関与したということです。他にも人のツテなどもあります。
白書によれば、グループが実行役を募集する際は、まず運転免許証の画像や顔写真を送信させます。応募した側が犯罪をためらったり、「2回目をやるのは嫌だ」と拒否しても、送った写真や書類を脅迫に使って服従させたり、報酬を支払わないケースもあったということです。
これは何度も言われていることですが、知らない人に個人情報を簡単に送らないことです。また、SNSに出てくる「高額バイト」といった類の投稿は必ず無視するか、通報することが大事です。
◆“末端”の使い捨て要員をいくら捕まえても中核メンバーに迫れない?
ユージ:この「トクリュウ」に対して、現状どのような対策がとられていますか?
塚越:警察も捜査手法の変革を急いでいます。基本的に犯罪組織の捜査では、例えば暴力団であれば末端から入って幹部にたどり着くという手法でしたが、トクリュウは末端の実行役と幹部の間に匿名性の高いアプリを使っていたりと、大きな溝があって捜査ができません。
逮捕される人は、ネットで集めたいわゆる“末端”の“使い捨て”が多く、中核メンバーの逮捕に至らないことが課題だと感じています。末端をいくら逮捕しても上につながらないことが問題です。
そのため、トクリュウ対策として資金の流れを重視することが大事です。トクリュウは特殊詐欺だけでなく、違法オンラインカジノや悪質なホストクラブといった犯罪への関与も疑われており、警察はそれぞれの収益のいきつく先に中核メンバーがいるとみられているので、それぞれ捜査していこうとしています。
警察庁は資金の経路を追うために、大規模な繁華街を管轄する警察に捜査部門を横断した新たな組織体制をつくるほか、全国でおよそ700人を増員。全国レベルで組織横断を実行していこうとしています。
もう1つは「闇バイトの募集」を阻止する取り組みです。警察庁は去年9月、ネット上での犯罪実行者を募集する投稿を「重要犯罪密接関連情報」という類型に加えることで、SNS事情社に投稿の削除を要請しています。実際にその後、去年の9月〜12月の間に2,136件が削除されました。
求人サイトも対策を強化しており、「バイトル」の運営会社は生成AIを活用して、不審な求人を検知する仕組みを導入しており、これによって人間の目視のみのチェックに比べて作業時間をおよそ80%減らせているとのことで、求人サイト側も対策を進めています。
◆「闇バイト」対策とともに、情報通信に詳しい人材を警察へ
ユージ:「トクリュウ」の手口や対策を、塚越さんはどうご覧になりましたか?
塚越:顔の見えない犯罪がどんどん増えてきているということです。あとは、暗号資産などもこのトクリュウが使っているとみられています。警察の内部にそういった情報通信にかなり詳しい方をどんどん入れて、人材募集することが大事です。青少年が闇バイトなどに入りやすい傾向がありますので、そこは対策が必要です。この2つは、重要になっていくのかなと思います。
<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
※写真はイメージです
◆SNSなどで「闇バイト」を募集する犯罪グループ
警察庁は先月、SNSなどで緩やかにつながって活動する「匿名・流動型犯罪グループ」(通称:トクリュウ)の動向や対策を特集した2024年版の警察白書を公表しました。
吉田:この「トクリュウ」は、どのような犯罪グループなのでしょうか?
塚越:トクリュウは「“匿(トク)”名・“流(リュウ)”動型犯罪グループ」の略です。簡単に言えば、SNSや求人サイトで集めた人を実行役にして犯罪を繰り返す、新しいタイプの犯罪集団を指します。去年から各メディアで報道されています。
警察白書によれば、トクリュウはSNS上で「高額バイト」をうたってメンバーを集めて、事件ごとに離合集散を繰り返しています。
特に匿名性が強い通信手段、例えば「テレグラム」という通信アプリを使っているのが特徴です。跡をたどるのが難しいので、暴力団に比べても指示役をはじめとした集団の中核となっている容疑者の特定が難しいのが問題です。
それでも警察庁によれば、今年4月〜6月にトクリュウとみられる犯罪で検挙された人数は、詐欺や窃盗、強盗など合わせて824人います。多いのは詐欺で452人、続いて窃盗、薬物事犯、強盗が続いています。
トクリュウの犯罪というと、去年大々的に報じられた東京狛江市の強盗殺人事件のような強盗、そして窃盗のイメージがありますが、実際には詐欺が多いとみられており、SNSでは資金の回収役である「受け子」の募集もおこなわれます。
他にも、多額の借金を背負った女性客に売春などをさせる悪質ホストクラブの背後で利益を得ている可能性も指摘されています。活動の幅がかなり広がっているということです。
吉田:「トクリュウ」は、実行役をSNSなどで集めていることが特徴ということですか?
塚越:そうです。先ほど話した4月〜6月に摘発した計824人のうち、3割はSNSがきっかけで犯罪に関与したということです。他にも人のツテなどもあります。
白書によれば、グループが実行役を募集する際は、まず運転免許証の画像や顔写真を送信させます。応募した側が犯罪をためらったり、「2回目をやるのは嫌だ」と拒否しても、送った写真や書類を脅迫に使って服従させたり、報酬を支払わないケースもあったということです。
これは何度も言われていることですが、知らない人に個人情報を簡単に送らないことです。また、SNSに出てくる「高額バイト」といった類の投稿は必ず無視するか、通報することが大事です。
◆“末端”の使い捨て要員をいくら捕まえても中核メンバーに迫れない?
ユージ:この「トクリュウ」に対して、現状どのような対策がとられていますか?
塚越:警察も捜査手法の変革を急いでいます。基本的に犯罪組織の捜査では、例えば暴力団であれば末端から入って幹部にたどり着くという手法でしたが、トクリュウは末端の実行役と幹部の間に匿名性の高いアプリを使っていたりと、大きな溝があって捜査ができません。
逮捕される人は、ネットで集めたいわゆる“末端”の“使い捨て”が多く、中核メンバーの逮捕に至らないことが課題だと感じています。末端をいくら逮捕しても上につながらないことが問題です。
そのため、トクリュウ対策として資金の流れを重視することが大事です。トクリュウは特殊詐欺だけでなく、違法オンラインカジノや悪質なホストクラブといった犯罪への関与も疑われており、警察はそれぞれの収益のいきつく先に中核メンバーがいるとみられているので、それぞれ捜査していこうとしています。
警察庁は資金の経路を追うために、大規模な繁華街を管轄する警察に捜査部門を横断した新たな組織体制をつくるほか、全国でおよそ700人を増員。全国レベルで組織横断を実行していこうとしています。
もう1つは「闇バイトの募集」を阻止する取り組みです。警察庁は去年9月、ネット上での犯罪実行者を募集する投稿を「重要犯罪密接関連情報」という類型に加えることで、SNS事情社に投稿の削除を要請しています。実際にその後、去年の9月〜12月の間に2,136件が削除されました。
求人サイトも対策を強化しており、「バイトル」の運営会社は生成AIを活用して、不審な求人を検知する仕組みを導入しており、これによって人間の目視のみのチェックに比べて作業時間をおよそ80%減らせているとのことで、求人サイト側も対策を進めています。
◆「闇バイト」対策とともに、情報通信に詳しい人材を警察へ
ユージ:「トクリュウ」の手口や対策を、塚越さんはどうご覧になりましたか?
塚越:顔の見えない犯罪がどんどん増えてきているということです。あとは、暗号資産などもこのトクリュウが使っているとみられています。警察の内部にそういった情報通信にかなり詳しい方をどんどん入れて、人材募集することが大事です。青少年が闇バイトなどに入りやすい傾向がありますので、そこは対策が必要です。この2つは、重要になっていくのかなと思います。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/