「OpenSwim Pro」

猛暑のなかでもランニングに励み、暑さ耐性を身に付けようと頑張っている筆者だが、それを後押ししてくれる強力なアイテムが現れた。骨伝導イヤフォンのShokz「OpenSwim Pro」だ。

「OpenSwim」と言えば2年前の2022年、Bluetooth接続が当たり前のなかでオーディオプレーヤー機能しかもたない骨伝導イヤフォンという、かなり割り切った製品として登場したもの。OpenSwim Proはその進化版として、ついにBluetooth対応を果たした。

これ1つで仕事からスポーツまで全部カバーできてしまうということで、「最強骨伝導」の呼び声も(あくまでも筆者的に)高いOpenSwim Proのイケているところを、ぜひともお伝えしていきたい。

骨伝導オーディオプレーヤー「OpenSwim」とは?

従来機のOpenSwimはその名の通り、スイミング中のオーディオリスニングをメイン用途に据えた骨伝導イヤフォンタイプのオーディオプレーヤーだ。4GBのストレージを内蔵し、保存したMP3などのオーディオファイルを単体で再生できる機能を備える。

左が従来機の「OpenSwim」、右が新しい「OpenSwim Pro」

IP68の高い防水性能をもつため、水中はもちろんのこと、雨や汗に濡れてしまうようなランニングなどのスポーツにも適している。耳をふさがないことで周囲に気を配りやすいという骨伝導ならではの強みもある。

ただ、Bluetoothのようなワイヤレス通信機能は一切備えていなかった。泳いでいる最中はイヤフォン本体がほぼ水に浸かってしまい、水に遮られやすい無線電波は役に立たないから、というのが理由だ。

現状、屋内プールのなかには、まさにこうしたオーディオプレーヤー内蔵の骨伝導イヤフォンのみ持ち込みを許可しているところもあるようで、その意味で活躍シーンは少なくないだろう。

しかしながら、機能や使い勝手を考えるとどうしても(スマホなど外部デバイスと連携可能な)Bluetoothイヤフォンには及ばない。あらかじめパソコンにつないでデータ転送しておかなければならず、再生できるファイル形式も限定され、転送速度も高速とは言えなかったからだ。

専用ケーブルでパソコンと接続し、オーディオファイルを転送しておく

必然的に、用途は製品名の通りスイミングに限定されることになるわけで、プールに行って泳ぐようなことがそれほど多くなく、どちらかというとランニングかインドアサイクリング派な筆者の生活スタイルでは、徐々に活躍の機会が減っていくのも仕方のないところではあった。

「Pro」になってスペックはどう進化した?

それがOpenSwim Proとなって大幅に進化した。一番の違いはすでに述べた通りBluetooth接続に対応したこと。スマホなどと接続して音楽再生や通話ができ、専用スマホアプリを介して設定変更などもできるようになっている。

いろいろ進化した「OpenSwim Pro」

付属品は充電・データ転送用のケーブルにスイミング用の耳栓、ケースなど

コーデックの部分では高音質や低遅延に向けた特別な工夫はないものの、SBCとAACに対応し、一般的なBluetoothイヤフォンとほとんど全く同じように使えるようになったのは大きい。今どきらしくマルチポイント接続にも対応しているので、2台のデバイスとの同時接続により音声出力の切り替えがシームレスに行なえる。

専用アプリで設定変更などが可能

マルチポイントに対応。2台のデバイスと同時接続し、スムーズに切り替え可能

それとあわせて、オーディオプレーヤー機能も引き続き搭載する。イヤフォン本体のボタン操作などで「Bluetoothモード」と「MP3モード」(オーディオプレーヤー機能)を簡単に切り替えられるので、普段はBluetoothモードで、プールや海で泳ぐときはMP3モードで、といった使い分けが可能だ。

デフォルトでは音量ボタン2つの同時長押しでBluetoothモードとMP3モードを切り替えられる

耳の前にくる振動子に備えるマルチファンクションボタンで再生・停止等の制御が可能

ストレージ容量は実に8倍となる32GBへと拡大した。対応ファイル形式も拡大し、新たにM4AとAPEが追加されている。バッテリー容量がわずかに削減されたことでMP3モードでの再生時間は6時間と短くなってしまったものの、その分充電時間が30分短縮し、若干の軽量化が図られた。

【OpenSwim ProとOpenSwimのスペック比較】

ケーブルの変更、転送速度アップ、ロスレス対応で使い勝手が大幅向上

と、ここまではスペックシート上でのOpenSwim Proの進化点だが、そこからは見えてこない進化もある。とりわけ充電・データ転送まわりの使い勝手が大幅にアップデートしているのがポイントだ。

たとえば充電・データ転送用のケーブル。従来のOpenSwimでは、本体の端子周りを挟み込む形で取り付ける専用の充電器を利用していた。本体の防水性を考慮してこのような設計になったのだと思うが、取り付ける向きは決まっているにも関わらず、ガイドになるようなわかりやすい目印がないせいか、どの向きにどうセットすればいいのか(慣れていても)迷う。

端子の向きがこうだから~、えっと、どっち向きにすればいいんだっけ? とちょっと迷うOpenSwim

対してOpenSwim Proは、本体側の露出している端子部に充電ケーブル先端を近づけ、内蔵しているマグネットの力で接続するだけの簡単な方式になった。反対向きだとマグネットが反発してくっつかないので、端子の向きで悩むこともない。

ケーブルを近づけるとマグネットの力で勝手にくっつくOpenSwim Pro

そして、ファイル転送は大幅に高速化されている。従来モデルは4GBというストレージ容量の小ささから転送速度については妥協したところもあるのかもしれないが、ベンチマークテストを実行してみると書き込み速度は3MB/s程度だった。OpenSwim Proではこれが6倍近くの約18MB/sにまで高速化している。

読み書き速度を計測する「CrystalDiskMark」の結果(シーケンシャルリード・ライトのみ計測)

128kbpsのMP3ファイルが1曲平均4MB前後だとすると、OpenSwimでは1曲転送するのに1秒以上かかる。大量のファイル転送はなかなか厳しいな、という感じだが、OpenSwim Proでそのストレスはずいぶん軽減された。実際にMP3ファイル120曲をまとめて転送したときの時間を見ても、ほぼベンチマークテスト通りの5.7倍速だ。

MP3ファイル120個(734MB)の転送にかかった時間

この転送速度の向上は、対応ファイル形式の拡大という面から見てもメリットがある。というのも、筆者が試したところ、OpenSwim ProではロスレスのFLACファイルの再生に対応していることも確認できたのだ。ファイルサイズが大きくなりがちなロスレスデータだけれども、これをそこそこ高速に転送できるメリットは計り知れない。

そもそも近年はダウンロード楽曲にしろ、自分でCDから取り込んだデータにしろ、ロスレス形式を選ぶことが多いと思う(特にダウンロード楽曲はロスレスだとFLAC形式がメジャーだ)。それをわざわざ手間をかけて変換することなく、音質を落とすこともなく、直接イヤフォンのストレージに突っ込める。

筆者としてはオーディオファイルの変換が面倒なせいでOpenSwim離れが進んでしまったところもあるので、とりあえずパソコンのメディアライブラリにある音楽を何も考えず雑にコピーしておけばOK、という楽ちんさは思った以上にありがたく感じるところ。

いつでも聞きたい厳選したヘビロテ楽曲はすぐに再生できるようにファイル転送してMP3モードで、配信楽曲などを“ながら聞き”したいときはスマホと組み合わせてBluetoothモードで、といった使い分けも良さそうだ。

音質も着実にアップ、でもフォルダ再生の機能が省略

音質は、OpenSwimが採用していたテクノロジー「PremiumPitch 2.0」から進化した「PremiumPitch 2.0+」を搭載する。全体的にクリアさに磨きがかかり、低音も幾分か増したようだ。従来モデルの時点ですでに満足度の高い音質ではあったので、ここはそれほど大きな変化としては捉えられないかもしれないが。

音質モードは周波数帯ごとに調整するイコライザーの形ではなく、あらかじめ設定された数パターンから選ぶスタイル。Bluetoothモードでは楽曲再生に向いた「スタンダード」モードと、人の声を強調する「ボーカル」モードの2種類。MP3モードでは「スタンダード」モードと、水中でのリスニングに適した「スイミング」モードから選べる。個人的には細かいイコライザー設定はあっても結局は使わなくなるので、これくらい単純明快な方が好みだったりする。

Bluetoothモードでは「スタンダード」モードと「ボーカル」モードが選択できる

MP3モードでは「スイミング」モードが利用可

一方で、OpenSwimにはあってOpenSwim Proでは省かれてしまった機能もある。それはフォルダ対応だ。従来機はオーディオファイルをフォルダ分けしておくと、そのフォルダ単位でのリピート再生・スキップなどが可能だった。

ところがOpenSwim Proはフォルダ分けして保存はできるものの、フォルダ単位でのリピート再生・スキップなどは不可。サブフォルダ内のファイルも含めフラットに認識し再生することになる。せめてプレイリストファイル(M3U形式など)が使えればと思うのだが……。シャッフル再生や単曲リピートの機能はあるので、それに頼ることになるだろう。

フォルダごと転送はもちろんできるが、フォルダ単位でのリピート再生・スキップといった操作は不可

Web会議、ランニング、プール(熱冷まし用)で超大活躍!

OpenSwim Proをすでに1カ月ほど使用しているが、筆者の主な利用シーンはWeb会議とランニング、そしてランニング後のプールの3箇所だ。

Web会議では、パソコンと接続して音声通話に利用している。ここでは人の声が中心なので「ボーカル」モードがお役立ち。でもって、その日の仕事が一段落したらMP3モードにして、ランニング中のポッドキャスト再生に使う。

Web会議ではトランスミッターとBluetooth接続して音声通話に使用

実は、これまではポッドキャストをスマートウォッチ上でダウンロードし、Shokz(AfterShokz)の初期頃のモデルであるOpenMoveで聞いていたのだが、スマートウォッチでのダウンロードがけっこうな手間で、時間もかかっていた。操作性に難があるうえに転送速度も遅い。OpenMoveに罪はなく、純粋にスマートウォッチの問題なのだが、走り始める前に10分以上は無駄な時間を過ごすこともあった。

でもOpenSwim Proなら、パソコンでダウンロードしたポッドキャストデータをまとめて放り込んでおくだけ。転送速度も高速になったので、ずいぶん時間短縮になっている。

ランニング中は主にポッドキャストを楽しむ

炎天下でのランニングを終えた後は、庭に設置しているプールにそのままドボン。水に浸かっているとBluetooth接続は切れやすいけれど、MP3モードで再生しているので潜ったりしても問題なしだ。

ランニングでほてった身体をプールで冷ましつつ、音楽やポッドキャストを楽しむサイコーのひととき(白目)

というわけで、仕事からアクティビティまで、1台でカバーできるイヤフォンとして大活躍中のOpenSwim Pro。夏本番はこれからなので、仕事に、スポーツに、海や自宅プールに(公共プールでは使えない場合があるのでご注意)、ぜひともみなさんもガンガン使ってみてほしい。

ぶくぶく……