ほとんどのスイムウェアブランドで、売上の大半を占めるのが夏だ。200億ドル(約3兆2000億円)規模の成長産業として競争が激化するなか、スイムウェアブランドは市場シェアの獲得に向けて新たなキャンペーンやコラボレーションを展開している。ウィメンズ・スイムブランドのアンディ・スイム(Andie Swim)の創業者、メラニー・トラヴィス氏によると、5月から8月にかけての売上が同ブランドの売上全体の約7割を占めるという。リゾートシーズンが到来する1月も販売が大きく伸びる時期である。トラヴィス氏とチームは、前年の末からサマーシーズンの準備を始めた。「1年を締めくくる際に何がうまくいって、何がうまくいかなかったのかを振り返っている」と同氏は述べた。「どのくらいの数のコレクションを発表するか、メーカーからの購入額はどの程度にするのか、収益目標はいくらなのかを決定し、それによって予算が決まる」。夏に狙いを定めたキャンペーンは冬に撮影しなければならないため、アンディのマーケティングチームは本拠地であるニューヨークからマイアミやバハマといった場所を訪れて撮影を行う。必要な初期費用を考えると、サマーシーズンを最大限に活用する際にいちばん難しいのは、何が売れるかを予測することだと、トラヴィス氏は語る。「あるアイテムが予想外に人気が出たときに在庫があまりなかったということがあったが、そういうのはかなり悔しい。せっかくのチャンスを無駄にしてしまう」。とはいえ同ブランドには、実際にいくつか確実に手堅いアイテムがあり、そのひとつが女優でプロデューサーのミンディ・カリングとともに5月にローンチしたコラボレーションだ。アンディがカリングと組むのは2度目だ。トラヴィス氏によると、1度目は成功を収めており、チームはSKUの数を最初のコラボレーションの33から2回目となる今回は51に増やした。

ミンディ・カリングとの2回目のコラボレーションとなる「Summer Camp」 (Photo Credit: Ari Michelson)

淘汰されるも競争は激化

カテゴリーとしてのスイムウェアは、毎年5%近くの割合で成長している。トラヴィス氏いわく、特にスキムス(Skims)やニックス(Knix)などの大手ブランドが参入し、スイムウェアにおける競争が激化している。ニックスは4月に過去最大のスイムコレクションを発表した。

ニックスの今季のスイムコレクション

「数年前は膨大な数のスイムブランドがあった気がするし、Googleで自分たちのブランドを検索すると、そうしたあらゆる小さなブランドが検索キーワードに便乗して表示されるのを目にした」とトラヴィス氏。「でも今は淘汰されている。顧客獲得には非常にコストがかかるので、そうした小規模なブランドの多くは閉鎖し、維持するだけの資本があるところのみが生き残っている。そのためブランドの数は減っているかもしれないが、競争は以前よりもハイレベルになっている」。スイムに力を入れている大手ブランドに、J.クルー(J.Crew)がある。J.クルーは6月、オリンピックを前に米国女子水泳チームと新たなスイムキャンペーンおよびコラボレーションを展開した。コレクションには、メンズ、ウィメンズ、キッズ向けのスイムスーツをはじめ、バケットハットやTシャツなど、ビーチに適した衣類が含まれている。J.クルーのブランドマーケティング担当シニアバイスプレジデント、ホールジー・アンダーソン氏は米Glossyに対し、スイムはJ.クルーが現在もっとも力を入れている分野だと語った。

J.クルーと米国女子水泳チームとのスイムコレクション (Image via J.Crew)

「スイムという重要なブランドカテゴリーにおいて、USAスイミングとのコラボレーションは、消費者に焦点を当てたエキサイティングなかたちで強力なパートナーシップとなった」とアンダーソン氏は述べている。「コラボレーションはブランドの関連性を向上し、オーディエンスを拡大してブランドと商品の双方に新鮮な視点を加味する、すばらしい方法だ」。

ワンピース人気が継続

競争を考慮すると、スイムウェアブランドは顧客に感動を与えさえすればよいというわけにはいかない。5月29日から6月5日まで開催されたマイアミ・スイムウィークでは、ブランドは卸売業者との関係も築く必要があった。トラヴィス氏によると、アンディは今年、創業7年目にして2度目のマイアミ・スイムウィークへの参加となり、卸売での存在感を高めることができたという。昨年、アンディの唯一の卸売パートナーは百貨店のノードストローム(Nordstrom)だったが、その後、サックス・フィフス・アベニュー(Saks Fifth Avenue)などとも契約し、さらに多くのバイヤーとも会っている。今年のマイアミ・スイムウィークには3万人以上の参加者が集まり、ワンピースの継続的な人気など、現在スイムウェアを席巻している最大のトレンドがいくつか紹介された。インスタグラムのアカウント@databutmakeitfashionは、業界のセンチメント分析によるとワンピースのスイムウェアが現在ビキニよりも24%人気があると報告した。「その傾向は確認している」とトラヴィス氏は述べ、現在アンディの売上の約7割をワンピースが占めていると話した。「このトレンドはここ数年ずっと続いており、また私たちの専門分野でもあるので、ブランドにとってメリットがある」。[原文:How swimwear brands geared up for a competitive summer]DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida、編集:戸田美子)