動揺して思考停止のようになってしまい、斗真さんはどういうことなのかと考えられなくなっていると、店長が懇切丁寧に説明を始めたそうです。

「もともと店長と恵奈さんはだいぶ前からしていて、閉店後に店内でしょっちゅう関係を持っていたらしいです。そういえば恵奈さんはよくクローズ担当になっていたんですよね。息子が中学生とはいえ、主婦がこんなにもしょっちゅう夜遅くまで働いているのに違和感はありましたが、そういうことだったのかと気付きました。あと、ただのパートさんが店のカギを持っていたのも今思えば不自然極まりないですが、腑に落ちました」

◆自分の女が誰かとしているところを見たかった

 店長は恵奈さんがパートで入ってきた当初から狙っており、時給をどんどんアップさせて高額設定にしたり、休みを自由に取れるようにはからってあげたりしているうちに、彼女が身体を許してくれるようになったんだとか。

 それならば、恵奈さんと斗真さんが関係を持ったことにブチ切れてもおかしくはなさそうだが、店長の反応は真逆。

「店長はいわゆるネトラレ属性らしくて、自分の女が誰かとしているところを見たかったんだそうです。だからもともとは店長が仕組んだことだったんですよ。なにげに僕はそこが一番ショックでした。恵奈さんは店長に命令されたから僕と関係を持ったってことですからね……」

◆豚骨臭を嗅ぐと、今でもあの夜を思い出す…

 店長は得意気に顛末を語り明かした後に、「だから今度3人で……」と提案してきたそうですが、斗真さんは無言のままその場を去ったそうです。

「翌日、バイトを辞める連絡をして、そのまま退職しました。恵奈さんが本当は僕のことをどう思っていたか知りたい気持ちもありましたが、真実を知る勇気もなかったので、恵奈さんにはそれ以来、会ってもいないし、電話もLINEもしていません」

 その一連の出来事から数年が経ち、今は吹っ切れているとのことですが、「気まずいからお客としても店に行けてない」んだとか。ただ、同系統のラーメン店に行った際に豚骨臭を嗅ぐと、今でもあの夜を思い出してしまうそうです……。

<文/堺屋大地>

【堺屋大地】
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。現在は『現代ビジネス』、『文春オンライン』、『smartFLASH』などにコラムを寄稿。LINE公式サービス『トークCARE』では、カウンセラーとして年間で約1500件の相談を受けている。X(旧Twitter):@SakaiyaDaichi