銀座の百貨店の免税カウンター。訪日客の急増でいつも混雑する

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 円安で過去最高の外国人が押し寄せ、インバウンドが絶好調のなか、訪日客の免税制度の悪用が問題になっている。消費税を逃れた商品の行き着く先はどこなのか。取材を進めると意外な実態が浮かび上がってきた。
◆免税不正転売最大の謎!商品はどこに流れるのか

 6月に「ダイコクドラッグ」が消費税の免税要件を満たさない外国人客に免税販売したとして、運営会社が3億円を追徴課税されたことが明らかになった。

 過去にはアップルジャパンや近鉄百貨店なども追徴課税されており、近年社会問題化しているが、外国人観光客向けの免税制度とはどういうことなのか。

 元国税調査官の税理士・笹圭吾氏はこう解説する。

「消費税は国内で使用される商品にかかる税金なので、短期滞在の外国人が自ら海外で使用するために購入した商品は、基本的に免除されます。しかし、日本に長期滞在していたり、購入した商品を日本国内で使用したり転売すると、免税要件から外れます。また、海外に持ち出しても転売目的であれば業者とみなされ、免税販売が認められません」

 つまり、これらの企業は、転売目的で課税対象の取引であると判定されたものについて、追徴課税されたのだ。

 短期滞在の外国人は、10%の消費税を支払わずに商品を購入できる。その商品を定価かそれ以上の金額で売り捌くことができれば、当然、大儲けとなる。

◆中華SNSで盛んに募集される“買い子”

 急増する免税不正購入の背後には、転売グループが暗躍し、組織的に商品を買い漁っているという。

「最近ではベトナム人や韓国人も増えていますが、圧倒的に多いのは中国人転売グループです」(免税店コンサルティング会社の関係者)

「小紅書」や「微信」など中国SNSでは、誰でも簡単に転売できる仕組みが構築されている。中国事情に詳しいライターの広瀬大介氏は言う。

「SNSには免税品を販売するアカウントが多数存在するほか、短期滞在ビザを所有する買い子を提供する業者や、商品を中国に輸送して通関手続きまで行う業者がすぐに見つかります。また、『◯◯百貨店で列に並び商品を購入。日当500元(約1万円)』といった買い子を募集する書き込みや、『帰国の際にモノを運びます』といった個人旅行者の投稿もよく見られます」

 こうした中国人による免税不正転売はテレビでも報じられ、広く知られるようになった。しかし、どのような人が転売に手を染め、商品はどこに行くのかといった実態は謎になっている。

◆年間数千万円の利益を出す中国人も

 SPA!記者は今回、複数の転売グループや物流業者にコンタクトをとった。まず話を聞いたのは、大連市出身のHさん(40歳)。専業主婦ながら荒稼ぎしている。

「800万円のバーキンを転売して100万円近く儲けたこともあります。バーキンやヴィトンなどのハイブランドは利益が出やすい。中国では人気商品の場合、抱き合わせ販売しかしないことがあり、100万円のバッグを買うのに倍近い金額がかかることもありますが、日本ではそれがないので、需要があります」

 Hさんのママ友も組織的に転売をしていると言う。

「かなり大掛かりにやっているママ友は、年間数千万円の利益を出しています。彼女は、表向きは飲食業や貿易業をやっているので、とにかく人脈が広いんです」

 一方、飲食店を経営する上海市出身のLさん(32歳)は、副業として免税品の転売を行っているという。

「私は、日本の商品を好きな中国人が集まる複数のグループに入っていて、そこで注文を受けた商品を購入して郵送しています。グループでは買い子や売れ筋商品などの情報も常に入ってきます。最近だとウイスキー『山崎』やアイコス、ロキソニンなどが定番ですね。資生堂『クレ・ド・ポー ボーテ』の限定品も高値で転売しやすい」