『井上芳雄 by MYSELF × Greenville Concert 2024』8/18の放送・配信に向けて楽しみ方を徹底解説
2024年8月18日(日)WOWOWにて『井上芳雄 by MYSELF × Greenville Concert 2024』が独占放送・配信される。この度、本放送・配信の楽しみ方を徹底解説する。
ミュージカルの申し子、井上芳雄が2017年から続けているラジオ番組『井上芳雄 by MYSELF』(TBSラジオ)と、2023年に発表した最新アルバム『Greenville』(日本コロムビア)。その二つがコラボレーションしたコンサートが今年4月23日~24日、東京ガーデンシアターで開催された。『by MYSELF』発信のコンサートと言えば、2021年に無観客配信の形で行われた5時間超の『井上芳雄 by MYSELF “LIVE” 20th Anniversary Festival!~裏切らない芳雄4時間フェス~』が伝説級に有名だが、「バラエティショーのようだった今までと違って、今回は歌をちゃんと聴いてもらうコンサート」と井上。その模様を8月18日(日)、WOWOWが本人の事後インタビュー付きで放送・配信する。
ーーアルバム曲とミュージカル曲がリンクするセットリスト
『Greenville』は、ミュージシャンから劇作家まで多彩なアーティストが詞と曲を提供した、全10曲のオリジナル楽曲から成るアルバムだ。各楽曲のテーマを用意したのは井上自身で、「生を受ける」「奪われる」「召される」など、その時に気になっていたという10個のワードを各アーティストに渡し、それを基に制作してもらうという手法が採られた。『Greenville』というタイトルも、井上自身がつけたもの。アメリカの地方都市の名で、井上は中学の1年間、この町で家族と共に過ごし現地の学校に通った。
今回のコンサートは、このアルバムの収録曲と、テーマがリンクするミュージカル曲とをつなげていくという構成。たとえば、「拒否される」というワードを基にコトリンゴが書き下ろした「ライフ」のあとには、『ベートーヴェン』より「運命はこの手で」が続くといった具合だ。2023年には『エリザベート』『ジェーン・エア』『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』『ラグタイム』そして『ベートーヴェン』と、実に5本もの大作ミュージカルに出演した井上。セットリストのミュージカル曲はこの5作のナンバーが中心で、コンサートは『Greenville』の楽曲が初めて披露される機会であると同時に、怒涛のミュージカル・イヤーを駆け抜けた井上の昨年を共に振り返れる場ともなっている。
MCの中でも断片的に明かされていたこうしたコンセプトが、より詳しく語られたインタビューが収録されているのが今回の番組。アルバムとコンサートに対する井上の真摯なーーそれも決して独りよがりでもなく押しつけがましくもなく、まるでそうする機能が生まれつき備わっているかのように自然なーー姿勢は、パフォーマンスからも十分伝わるが、そこに込められた思いを本人の言葉で知ることで、“裏切らない俳優”井上に対する信頼はますます高まることだろう。またインタビューでは、ゲストの石丸幹二、浦井健治、田代万里生との共演シーンについて語る一幕も。ずっと背中を追いかけてきた先輩・石丸に対する深いリスペクトと、共にミュージカルシーンを盛り上げてきた同志・浦井と田代との強い絆を感じさせるコメントは、それぞれとのデュエット曲とあわせて必見だ。
ーーこの放送・配信を機に、あなたも“芳雄一味”に!?
井上の”裏切らない“仕事ぶりは、ミュージカルやコンサートはもちろん、その宣伝のためのプロモーション活動にも及ぶ。井上ほどの売れっ子となると、ある作品のプロモーション活動をする=取材を受ける時期にはまだその前の、あるいはその前の前の作品の本番中だったりするもの。次の次の作品のことなど考えられていなくても全く無理はない状況のなか、その作品の見どころから演じる役柄の特徴、自分にとって挑戦となるポイントまでを毎度しっかりと整理した上で取材現場に現れ、インタビュアーとその先にいる読者に必ず「次の(次の)作品も観たい」と思わせて帰るのが井上だ。
怒涛のミュージカル・イヤーを駆け抜けながら、これだけコンセプチュアルなアルバムを完成させたこと。アルバム曲をただ並べるのではなく、ミュージカル曲と組み合わせたセットリストに落とし込んだこと。初披露のアルバム曲も、本編とはアレンジや言語が異なるミュージカル曲も、一体いつ練習したのか不思議になるほどきっちり手中に収めて披露したこと。ラジオ局とレコード会社、音楽監督の大貫祐一郎とコトリンゴ、演出の小林香ら多くの協力者と共に、7000人規模の会場を2日間にわたって満員にする快挙を成し遂げたこと。すべては、生まれながらに真摯な井上だからなせる業と言っていいだろう。
ミュージカル俳優としての資質に恵まれているだけではなく、一度ファンになった観客を決して裏切らないからこそ、井上芳雄が長らく第一線で活躍し続けていることがよく分かるこのコンサート。その公式グッズの一つとして話題を呼んだ一味唐辛子、その名も「芳雄一味」は早々に売り切れてしまったそうだが、購入していなくても「僕に興味がある方は皆さん芳雄一味」と井上本人が言っている。会場にも足を運んで既に一味に加わっているのであれば、インタビューと共に味わうことで改めて。そしてこの放送を機に一味に加わるのであればまっさらな気持ちで、“裏切らない俳優”井上の底力を堪能されたい。
文:町田麻子