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中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。
コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス(以下コカ・コーラ ボトラーズ)の業績が急回復しています。記録的な猛暑が続いて清涼飲料水の消費が旺盛になりました。そこにインフレが加わって単価がアップ。業績を押し上げています。ただし、炭酸飲料の伸びは限定的。コーヒー、お茶系飲料での競争激化が予想できます。

◆2期連続の赤字から黒字転換

コカ・コーラ ボトラーズは、2021年12月期に経常利益にあたる事業利益がマイナスに転落。2期連続の赤字となりました。これはコロナ禍で外食需要が減退したこと、大型イベントの自粛、テーマパークの営業制限などの影響を受けたもの。

2023年12月期は期首に50億円の事業損失を見込んでいました。しかし、結果的には20億円の事業利益で着地します。まさかの黒字転換を果たしました。

全国清涼飲料連合会によると、2023年の清涼飲料水の生産量は全体で2300万キロリットル(「清涼飲料水統計2024」)。前年比2.2%の増加でした。2022年は猛暑日が続いて清涼飲料水の生産量は前年比で6.8%も増加していました。2023年は更にそれを上回ったのです。

◆「年2回の価格改定効果」も奏功した

コカ・コーラ ボトラーズは需要増の大波に乗った上、2度にわたる価格改定を実施。消費量の減退を引き起こさずにソフトランディングさせました。

また、製造や物流のコスト低減策を進めており、経費のカットが黒字化に貢献しています。

2024年12月期上半期の売上高にあたる売上収益は、前期比1.8%増の4114億円、27億円の事業損失(前年同期間は67億円の損失)でした。コカ・コーラ ボトラーズは夏を迎える下期に業績が偏重する傾向があります。上期が赤字であっても、通期予想に対する目標は計画通りに通過。赤字幅を圧縮したことで、堅調に業績が回復していることを印象づけました。

◆清涼飲料水の需要は膨らむも、「炭酸飲料が好調ではない」

確かに清涼飲料水の需要は膨らんでいますが、コカ・コーラ ボトラーズが得意とする炭酸飲料が好調なわけではありません。

2022年は清涼飲料水全体の生産量が7%近く増加しましたが、炭酸飲料は前年の横ばい。2023年は0.6%の減少でした。すなわち、炭酸飲料の清涼飲料水に占めるシェアは低下しているのです。2021年は全体の19.3%を占めていましたが、2023年には17.9%まで下がりました。

日本ではコーヒー飲料やお茶系飲料の人気が高いのです。

◆肥満や虫歯の象徴的な存在に?

コーラに対する消費者のイメージが下がっているという、不利な条件もあります。

マーケティング支援を行うネオマーケティングは、炭酸飲料のブランド調査を行っています(「炭酸飲料に関するエボークトセット調査」)。それによると、炭酸飲料を購入・利用する際に思い浮かぶブランドの第1位は「コカ・コーラ」。6割以上の人がブランドを想起しています。第2位は「三ツ矢サイダー」ですが、割合は2割ほど。「コカ・コーラ」には遠く及びません。

しかし、勧めるブランドとして「コカ・コーラ」と答えた人の割合は5割に届いていません。一方、「三ツ矢サイダー」は2割近くをキープしているのです。

つまり、「コカ・コーラ」というブランドは消費者の間で圧倒的な認知を獲得しているものの、それを人に強く勧められる要素は低いことがわかります。

糖分が多い清涼飲料水は、何もコーラに限ったことではありません。ところが圧倒的なブランド認知を獲得したため、コーラは肥満や虫歯の象徴的な存在として、負のイメージも染みついてしまったのでしょう。