ナイジェリアの「インプレゾンビ」がインフルエンサーに...日本大使とランチも実現 大使は日本との「架け橋」に期待
迷惑な存在だったはずの海外の「インプレゾンビ」の中には、自国の食べ物や風景の画像を投稿するなど、その投稿内容を変えた人もいる。そのひとりが、ナイジェリア在住で、日本に向けて現地の情報を発信するインフルエンサー・Ken chanさん(@OgbonnaKent)だ。そのKen chanさんが2024年7月16日にXで、「ナイジェリア駐在の日本大使松永一義氏と昼食をとりました」と明かした。松永大使らと写る写真も添えた。
なぜ、元「インプレゾンビ」が日本大使と食事することになったのか、どのような話をしたのか――。J-CASTニュースはKen chanさんと松永大使の双方に話を聞いた。
松永大使は「とても聡明で、前向きなアイデアに溢れている方」
インプレゾンビとは、Xでの広告収益につながるインプレッション数を得るため、注目を集めている投稿に意味のない言葉を返信・引用投稿するアカウントだ。Ken chanさんもその1つだったが、ある日本のXユーザーが、中東の国々の「インプレゾンビ」に向けて、地元の情報などを発信しインプレッション数を集めてはどうかと提案した。Ken chanさんはこれを受け、5月中旬に地元・ラゴスの街並みを投稿したところ、大「バスり」。以来、日本語で現地の風景や食べ物、情報を発信するようになった。
その後、わずか2か月で松永大使との会食が実現した。その経緯について、J-CASTニュースの取材に応じたKen chanさんは、友人が自身と松永大使とをつなぎ、会食を設定してくれたのだと説明した。
松永大使について「とても聡明で、前向きなアイデアに溢れている方で、彼と話すことができてとても光栄でした」と振り返った。
「温和な性格と、日本への深い関心が印象的」
松永大使にも話を聞いた。Ken chanさんと会食をした背景について次のように説明した。
「2021年5月に赴任した当初から、多くの日本人がナイジェリアに対して危険な国というステレオタイプ的な見方を持っていることを残念に思っており、草の根レベルでの相互理解を深めることが重要だと考えていました」
さらに、写真が趣味だという松永大使は、「ナイジェリアの日常風景の写真が日本人に興味深く感じてもらえると思っていましたが、立場上、そのような情報発信は控えていました」と明かす。そのような思いを抱いている中、「5月にナイジェリアの日常風景を日本語で発信してバズっているKen chanさんの存在を知りました」。
6月にラゴスに駐在する日本人の知人を介して知り合い、「現場主義の観点から直接会うことが大切だと思い、7月に別件でラゴスへ出張する機会があったため」、会食が実現した。
Ken chanさんの印象について松永大使は、「素直な青年という印象を受けました」と明かす。
「日本のアニメをはじめとする日本文化に強い関心を持ち、スマートフォンのアプリを使って熱心に日本語を勉強していることがわかりました。彼との会話を通じて、ナイジェリアと日本の架け橋になりたいという強い思いを感じました。Ken chanさんの温和な性格と、日本への深い関心が印象的でした」
元「インプレゾンビ」に「正直なところ、当初は警戒心」
一方で、Ken chanさんがいわゆる元「インプレゾンビ」であることについては、「正直なところ、当初は警戒心がありました」という。
しかし、「日本人の方からの助言によって彼の行動に変容が起きたことを知り、非常に前向きに受け止めています」と明かした。
Ken chanさんのSNS発信について、
「テレビではなかなか取り上げられないナイジェリアのリアルな姿を、Ken chanさんを通じて日本の多くの方に知ってもらえる良い機会だと考えています。Ken chanさんと私の食事の投稿が1100万回以上閲覧され、ポジティブなコメントに溢れていることに驚きつつ、日本とナイジェリアの個人同士の相互理解を促す草の根交流の重要性を再認識しました」
と述べた。
「日本人のナイジェリアに対する理解を深める架け橋となってほしい」
Ken chanさんとは、彼がインフルエンサーになった経緯や日本文化への関心や日本語学習のことなどに加えて「日本人のナイジェリアに対するステレオタイプ的な見方を変える必要性」、「来年日本で開催される第9回日本アフリカ開発会議」についても話したという。
さらに「ナイジェリアにある『日本』」――例えばナイジェリアで活動する日本企業などにも目を向けてほしいと伝えたところ、会食後に早速、Ken chanさんからこうした日本企業について問い合わせがあったという。
松永大使はKen chanさんに対し、「引き続きナイジェリアの日常生活を発信し、日本人のナイジェリアに対する理解を深める架け橋となってほしい」と期待を寄せるが、「私からの期待を押し付けるつもりは毛頭ない」とも強調した。
「基本的には、Ken chanさんが発信したいと感じる思いを尊重し、彼の自由な発信が日本とナイジェリアの草の根レベルの相互理解に貢献してくれればと思っています」
Ken chanさんも、インフルエンサーとしてナイジェリアのコミュニティーに興味のある日本企業や日本のインフルエンサーと協力したい、と今後の活動に意欲を示した。「それがナイジェリアと日本の関係を大きく前進させると私は信じています」と意気込んでいる。
本業は会社員で、「最近は仕事の関係でインフルエンサーとしてあまり活動していない」というが、「必要な後押しが得られれば、フルタイムでインフルエンサー活動をするつもりです」という。