今後はアウトドアよりも購入頻度が高いカジュアルを増やしていく方針だ(写真:ワークマン)

アウトドアから大人カジュアルへ――。作業服チェーンのワークマンは今年の秋冬から「#ワークマン女子」(女子店)で男子向けの専用商品を新たに販売する。

これまで主流だったレインウェアなど、アウトドアの商品からシャツやスラックスといった大人カジュアルのラインナップを増やす。1年後にはメンズ売り場の半分までカジュアル服を広げる。

一般の女性客をターゲットにした女子店は今年で4年が経過し、全国で54店(2024年6月末時点)展開している。同社の成長軸だったが、コロナ禍後はアウトドアブームも落ち着き、既存店の業績は伸び悩んでいる。「大人カジュアル」で活路を切り開けるか。

大人カジュアルのメンズ服を開発

現在、女子店の店頭にもメンズ商品は並んでいる。しかし、女子店専用の商品ではなく、既存業態の「ワークマン」や「ワークマンプラス」向けに開発した商品を販売してきた。

これらは登山や釣りといったアウトドアやスポーツシーンで着用する「アクティブウェア」と呼ばれる商品群で、オレンジや青など、派手な色を用いた商品も多い。

今後、女子店に導入する専用商品はこれまでと一線を画すものだ。ジャケットとスラックスのセットアップのほか、シャツやニットを投入。ベージュやネイビーなど落ち着いたトーンで、ほかの服とのコーディネートのしやすさも意識する。こうした商品を「大人カジュアル」と定義している。


とくに、パンツは同社が注力するアイテムの一つ。これまでもスラックスやテーパードパンツなど、すっきりとしたデザインのパンツも展開してきた。


#ワークマン女子はショッピングセンター内に加えて路面店でも出店を進めている(写真:ワークマン)

作業服のパンツなども得意で、カーゴパンツは細めの商品も含め100種類以上をそろえる。パンツは今年の秋冬に数パターンを投入し、2025年の春夏でも13〜14種類と、投入する商品数も増やしていく計画だ。

加えて、強みである低価格戦略も重視。「ユニクロ」などの大手で4000円近い商品を1500円で販売する考えだ。服の機能性もわかりやすく伝える。撥水性を示す耐雨度や防寒度、ストレッチ度などの機能を格付けし、「防寒度グレード3」など数字で表示する。

女子店の売り場の構成も検討中だ。正面から見て左側は女性の大人カジュアル、中心にキッズ、右側でメンズの専用商品を1列目、後列にアクティブウェアを配置するなど、カジュアル重視の構成にする。

ユニクロと勝負できるようになった

女子店の方向性を大人カジュアルにシフトすることで、作業服の「ワークマン」、アウトドアやスポーツの「ワークマンプラス」、カジュアルの「#ワークマン女子」と、業態間の違いをより明確にしていく。

経営企画や開発などを担当する土屋哲雄専務は、「今まではユニクロに対抗すると負けると思っていたが、価格はもちろん、機能やデザインでユニクロと真っ向勝負ができるようになった」と自信をみせる。


これまでのワークマンはアウトドアブームを背景に、職人以外の一般客の開拓も進めて店舗数を拡大し、業績も伸ばしてきた。

ところが、2022年度以降は円安や原材料高騰の要因も重なり、営業益2期連続減益となった。2020年から始まった女子店も、2年目以降は客数を伸ばせず、昨年度の既存店売上高は前年比88.9%と低調だった。

土屋専務は、アウトドア軸の路線がいずれ行き詰まることを予期していたという。


土屋専務はアウトドアブームの沈静化を受けて、「ワークマン女子がアウトドアのイメージのままではまずい。商品はきれいめのテイストに統一していく」と語る(記者撮影)

「ワークマンは超効率経営なので、店舗数が少ない女子店向けのメンズ専用商品を展開していなかった。出店数を増やしていく中で、本格的に取り組もうと決めた」と経緯を説明する。

女子店の専用商品の開発は重要策の1つだ。メンズだけでなく、レディースも今年の春夏から購買頻度の高い肌着を新たに販売、レディースの専用商品の比率も現状の25%から秋冬には35%と引き上げていく構えだ。

出店も加速し、路面店とショッピングセンターを中心に、今年度で30店舗以上出店する方針だ。

秋冬商戦は社運を懸けた勝負に

土屋専務によれば、女子店にがっちりと決まった戦略はなく、業態の完成までに10年ほどかかるとの考えだ。店名も「ワークマンファミリー」などへの改名を検討しているという。

「無理に社員をコントロールしたくないため、明確な方向性を決めるよりも、走りながら考えていく。今回はアウトドアから『大人カジュアル』へのシフトがそうだ」(土屋専務)

メンズ、カジュアルの専用商品を拡充し、女子店の客数の底上げにつなげられるか。今年の秋冬シーズンは極めて重要な商戦になる。

(井上 沙耶 : 東洋経済 記者)