「やりたいことリスト」をつくってはいけない…やりたいことを実現できる人とできない人の決定的な違い
※本稿は、佐々木 正悟『「ToDoリスト」は捨てていい。時間も心も消耗しない仕事術』(大和出版)の一部を再編集したものです。
■7時間は寝よう
ただこれだけです。
1日、最低でも7時間は眠るようにしましょう。
私は7時間30分から8時間くらい寝るようにしています。
そもそも私が「タスクシュート」などで時間と行動の目安をつけているのは、7時間は寝られるように計画するためでもありました。
まず朝はだいたい7時に起きます。
その時点でタスクシュートをチラ見し、少なくとも同じ日のうちに、つまり夜の23時台にはベッドに入れるかどうかを確認します。
そこから、いくつかの時間のポイントごとに、23時台に寝られるかどうかをチェックします。たとえば、朝ごはんを用意して食べ終わったとき、やはり23時に寝られるかどうかを見ます。
さらに、できれば1日の早い段階で、人と会う約束があればその時間に間に合うかどうかをたしかめます。昼の14時に東京駅で待ち合わせるなら、家を12時台には出なければなりません。
このように、私のタスクシュートの運用ルールはとても単純です。
・約束の時間は守らなければなりません。
・締め切りが迫っている仕事から先に手がけます。
・夜の23時台に寝ます。
あとは好きなことを好きなようにするだけです。
■眠りで「再起動」を
消耗に対していちばん効く薬は、「睡眠」だと私は信じています。
理由を挙げると、「心のスペースを占有していたいくつかの記憶」が睡眠中に整理されるからだろうと考えます。
そういう意味では、睡眠はハードディスクの「デフラグ」とどこか似ています。
「心の許容量」が圧迫されたまま仕事をすると、仕事は進まず心理的な疲労も増大します。眠りはそんな私たちを「再起動」してくれるわけです。
人間関係も大事ですし、好きなことをするのも悪くないでしょう。
しかし、そのどちらも「十分に寝られたうえでの話」だと思うのです。
これにいわゆる「エビデンス」を探せば見つけられると思います。しかし私はあまり証拠を探す意欲がわきません。
私自身はもう50歳になります。幸いこの歳まで、本格的な神経症や精神障害で仕事がまったくできなくなったという経験がありません。
そして、そのことと「生まれて1日も徹夜をしたことがない」ことは深く関係していると感じているのです。
日本人は空気を読みすぎるとか生きづらい世の中を作り出すとか、いろいろな「民族性」がいわれます。私はその「日本人は」という主語の大きさに不信の気持ちがあります。
しかし、「日本人は睡眠時間が短すぎる」という言説だけには同意します。
私たちはもっと長く眠るべきです。
■願望実現リストを見る必要はない
この記事を読まれるような人は、おそらく「リスト」を多く持っています。
「いつかやりたいことリスト」とか「サムデイリスト」とか「ウィッシュリスト」とかいった願望実現リストを、2つや3つは持っているでしょう。
私は以前、そのようなリストを「捨てる」ようにいってきました。
でも、それはさすがにいいすぎだったと反省しています。
いまは、そのようなリストを「引き出しにしまっておきましょう」くらいにとどめておきます。
どちらにしても、二度と見る必要はありません。
なにより人間は変わるものです。いまやりたいことが、明日もやりたいとは思えません。いま欲しいものも、来週には欲しくなくなっているかもしれません。
「そんなことは言われなくてもわかっている」とよく言われます。
でも、わかっているとは思えない人がたくさんいます。
やりたいことはやりたくなくなるのです。だからこそ「サムデイリスト」はいつまでたっても「サムデイ」のままなのです。そんなものをたくさん作っておいても、罪悪感がつのるばかりでいいことがなにもありません。
■状況は刻一刻と変わる
しかも、そもそも罪悪感を抱く理由がありません。
やりたかったことがやりたくなくなったとして、それは「罪悪」なのでしょうか?
人が変わるだけではありません。状況も刻一刻と変化します。
たとえば2020年の3月には、経済は長いデフレ不況から少し持ち直してきたとはいえ日経平均株価は1万8千円台でした。
それがわずか4年後に、4万円台を突破しました。
この間「株式投資をしたい」と思っていた人はたくさんいたでしょう。しかしいつが最適のタイミングだったかは、誰にもわからないでしょう。
人それぞれの懐事情にもよります。つまり、人も世の中もなにもかも毎秒ごとに変わっているのです。いまもです。
このように人や状況が変わりゆく中で、「やりたかったことのリスト」の価値は、おそらく毎秒ごとに下落します。
■リストを書くことは目的でない
「やりたかったこと」は「やりたかったかもしれないこと」に変わり、やがては「やりたくもなんともないこと」になります。
「やるべきこと」もまた「やるべきだったかもしれないこと」になり、すぐに「やらないほうがマシなこと」になるでしょう。
そんなものをふり返って「できなかった罪悪感」にさいなまれていては、気力が落ち込んで当たり前です。
だから私としては、やはりシュレッダーにでもかけるのがいちばんだと思います。
それが惜しいというのであれば、二度と目につかないところにしまい込むなり、他の人にあげてしまうなりするのがおすすめなのです。
「リストに書くこと」が目的になっていませんか?
しかし、それではいつまでたっても「やりたいことがやれない」のではないか、と不満に思われるかもしれません。そんなことはありません。
やりたいことを「ウィッシュリスト」に保存したからといって「やりたいことができる」わけでないのは、すでにほとんどの人が経験済みのはずです。
リストに日付があるかないかも関係ありません。
やりたいことはできます。やりたいときに、すぐやることです。リストに書く前にやります。
■やりたいことは3分以内にやる
できればやりたくなってから3分以内にやりましょう。
3分後には別人になってしまうからです。どうしてもムリだというのであれば、せめて1日以内にはやりましょう。
もっと時間が必要な、たとえば旅行などに行きたくなったら、なるべく即座にできることをやっておくべきです。
すぐ旅行に行けなくても、ホテルの予約はできるでしょう。
わざわざリストを使う必要はありません。
1日も経たずに忘れてしまうようなら、やらなくても困らないことのはずです。
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佐々木 正悟(ささき・しょうご)
タスクシュート協会理事、ビジネス書作家
1973年北海道生まれ。1997年獨協大学外国語学部を卒業。2004年Avila University心理学部卒業。2022年タスク管理・時間管理術であるタスクシュートの普及と、自分らしい時間的豊かさの提唱を目的として「一般社団法人タスクシュート協会」を設立。タスクシュートのユーザー数は、25000人を超える。著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほか、『iPhone情報整理術』(技術評論社)、『イラスト図解 先送りせず「すぐやる人」になる100の方法』(KADOKAWA)、『クラウド時代のタスク管理の技術』(東洋経済新報社)、『なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?』(技術評論社)、『やめられなくなる、小さな習慣』(ソーテック社)、『人生100年時代 不安ゼロで生きる技術』(三笠書房)、『先送り0』(技術評論社)など。ポッドキャスト「働く人に贈る精神分析チャット(グッドモーニングボイス)」を平日にSpotifyから配信中。
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(タスクシュート協会理事、ビジネス書作家 佐々木 正悟)