Image: New Zealand Department of Conservation

見たいような、見ないままの方がいいような…。

7月初旬のニュージーランドで、世界で最も希少なクジラが海岸に打ち上げられたそうですよ。

生きている姿を見た者はいない

同国の自然保護局は今月15日、南島の南東部に位置するオタゴ地方の河口付近で、体長5mのバハモンドオウギハクジラのオスとみられる死骸が打ち上げられていたと発表しました。

4日にクジラが打ち上げられていると報告を受けて現地を訪れた当局と国立博物館(Te Papa)の海洋ほ乳類専門家によって、その個体がオスのバハモンドオウギハクジラであると確認されたとのことです。クジラというよりも大きなイルカのような印象を受けますね。

何が驚きって、この「世界で最も希少」といわれるクジラは、これまでに一度も生きている姿を目撃されたことがないんです! 生きたまま打ち上げられたこともなければ、海中で泳いでいる姿を見た者もいないそうです。

6頭しか記録が残っていない希少なクジラ

バハモンドオウギハクジラは、1874年にニュージーランドのチャタム諸島沖で下顎と2本の歯が発見され、新種のクジラだと確認されました。当局によると、1800年代以降、記録として残っているのはたった6頭で、そのうち5頭はニュージーランドで見つかっています。

現在、遺伝子サンプルから死骸がバハモンドオウギハクジラで間違いないかをオークランド大学が確認中で、正式な結果の発表まで数週間から数カ月かかるそうです。

生態を知る絶好のチャンス

自然保護局は、死骸の状態がよかったため、謎に満ちたバハモンドオウギハクジラの生態を知る絶好の機会になると期待しています。

クジラを神聖な生き物とする先住民マオリと相談のうえで、今後の計画を立てるとのことで、死骸は冷凍保存されています。国際的にみても貴重な発見になるため、各方面との調整から計画には時間がかかるとみられています。

自然保護局の科学アドバイザーは、人間と接触する機会がない深海で過ごしているとみられるバハモンドオウギハクジラを研究解剖すれば、臓器などの組織片から生態や海洋食物網の位置、年齢や病気、けがの有無なども把握できるといいます。

泳いでいる姿を見てみたいような、誰にもみつからない場所で人知れず平和に泳いでいてほしいような、ちょっと複雑な気分になりますね…。

Source: New Zealand Department of Conservation

Reference: New Zealand Department of Conservation / Instagram, Scientific American