欠席連絡は「やる気」「誠実さ」をアピールするチャンス 大学教員がメールで好印象を与える3つのポイントを伝授
大学生がやむを得ない理由で講義を欠席する際、担当教員にメールで連絡をすることがあります。事故防止や災害リスク軽減に関する心理的研究を行う、近畿大学生物理工学部・准教授の島崎敢さんによると、講義が始まる直前、学生から「体調不良のため欠席します」「用事があるので休みます」という内容のメールが届くということです。
ただ、島崎さんはこうしたメールについて、無断欠席よりはましで最低限の要件は伝わるとしつつも、一工夫をすることで教員により良い印象を与えることができるとして、もったいなさを感じているといいます。そこで、欠席連絡の際に好印象を与えるメールの書き方について、島崎さんが解説します。
欠席理由を詳しく書く
欠席連絡の際は、メールの書き方をほんの少し工夫するだけで、相手に与える印象は大きく変わります。そして、その工夫には大した手間はかかりません。メールを送るのにかける労力(コスト)と効果の関係を考えるなら、もう少し工夫してコスパの高いメールを送ることをお勧めします。
実は、欠席メールはあなたの「やる気」や「誠実さ」をアピールする絶好のチャンスです。ここで重要なのは、やる気は「表現」しないと見えないということです。誤解を恐れずに言えば、やる気があるように「見せかける」だけでも、本当はやる気があるのに表に出ていない人よりも効果的な場合があります。もちろん、本当にやる気を出すのが一番良いのは言うまでもありません。
では、具体的にどのようにすれば良いのでしょうか。次の3つのポイントを押さえると、メールの印象は劇的に変わります。
(1)きちんと理由を説明する
(2)欠席後のフォローアップについて自分から提案する
(3)メールを受信する人への配慮を示す
それでは、各ポイントについて詳しく見ていきましょう。
まず、欠席理由はしっかり書きましょう。「おなかが痛いから」「用事があるから」では、最低限の情報しか伝わりません。もう少し具体的に書くことで、あなたの誠実さが伝わります。
例えば「昨晩から38度の熱が続いており、インフルエンザの可能性があるため」や「祖父の容態が急変し、実家に戻る必要があるため」といった具合です。
もちろん、プライバシーに関わることや書きたくないことを詳しく書く必要はありませんが、ある程度、具体的に書くことで、「本当に休まなければいけない理由がある」ということが伝わるのです。
残念ながら、うその理由を書いてくる学生もいます。教員としては「本当だろうか」と疑問に思うこともあります。だからこそ、自分の正直さをアピールするのも重要なテクニックです。
例えば、病気の場合なら、「これから病院を受診してきます。必要でしたら診断書を提出いたしますので、お申し付けください」という一言を添えるのも良いでしょう。このような一言があるだけで、「うそではないだろう」と思ってもらえる可能性が高まります。
時には「寝坊しました」と正直に書いてくる人もいます。正直なのは良いことだとは思いますが、ここでも一工夫できるかもしれません。「寝坊して間に合わないので休みます」と言うのではなく「寝坊して間に合わなそうですが、とにかく今向かっています。間に合えば最後の5分だけでも出席したいと思います」などと書いてあれば、寝坊をしたのはけしからんが、やる気がある学生だなという印象は残せます。
これも誤解を恐れずに言えば、本当は向かっていなくても、こう書いておくだけでも好印象を与えられるのです。向かってないことがバレたときの責任は持てませんが。
次に、フォローアップの意思を示すことが重要です。欠席すると、その日の授業内容を学べなくなります。それをそのままにしておくと、成績も下がってしまいます。そこで、自分からフォローアップの意思を示すのです。例えば、次のような文章を添えるだけで、あなたの学習意欲が伝わります。
【欠席連絡の際に、教員に学習意欲を伝える文章の一例】
欠席した回の資料をいただけないでしょうか。次回の授業までに、今回の内容を自習したいと思います。参考になる資料などありましたらご教示ください。欠席分の課題などありましたら、ぜひ教えてください。
実際に資料をもらえなかったり、課題が出なかったりしても、あなたの「やる気」は十分に伝わるはずです。本当にやる気があるのがベストですが、やる気をしっかりと示すことも重要です。
「実際のやる気」と「やる気の表現」の関係
ここで「実際のやる気」と「やる気の表現」の関係を考えてみましょう。表1を見てください。
Aが最も望ましく、Dが最も望ましくないのは明白です。しかし、BとCは微妙な違いです。Cは実際にはやる気がないので、あまり好ましくありませんが、評価は実際にやる気があるBよりも高くなる可能性があります。これはもったいないことです。
あなたがBの状態なら、やる気を示すだけでAになれます。もしあなたがDだとしても、やる気を示せばCになり、運が良ければAと同等に、少なくともBよりも良い評価を受ける可能性が高まります。
最後に、教員への配慮も忘れずにしましょう。学生の皆さんは「先生は自分のことをよく知っている」と思いがちですが、実はそうでもありません。特に大人数の授業では、教員は何百人もの学生を相手にしているため、全員の顔と名前を一致させることが難しい場合があります。
複数の大学で非常勤講師を務める教員もいるため、そもそもどの大学の学生なのか分からない場合もあります。また、あなたの名前が分かったとしても、複数の授業を履修している場合には、どの授業を休むのかが分かりません。従って、自分の所属や名前、講義名、日時などを明記しておくと親切です。
欠席はイレギュラーな対応となるため、教員側に手間がかかります。「お手数をおかけして申し訳ございません」などの一言を添えるとより良い印象を与えることができます。
なお、送信メールアドレスは私用のものではなく、大学のものを使用するのが望ましいでしょう。さらに、署名を入れておけば、所属などを詳しく名乗る手間が省けます。件名にも注意を払いましょう。
これらの点を踏まえると、欠席連絡のメールの文章は次のようになります。
【欠席メールの文例】
〜〜
件名:5月10日(水)3限「心理統計学」欠席のご連絡
本文:
〇〇先生
□□大学●●学部△△学科2年の〇〇〇〇(学籍番号:1234567)です。
本日5月10日(水)3限の「心理統計学」の授業について、欠席のご連絡をさせていただきます。
昨晩から38度の発熱が続いており、インフルエンザの可能性があるため、本日は欠席させていただきます。これから病院を受診してまいりますので、必要でしたら診断書を提出いたします。
欠席に伴い、以下の2点についてお願いがございます。
本日の授業資料をいただくことは可能でしょうか。
欠席に伴う課題などございましたら、ご指示いただけますと幸いです。
欠席した分の内容は必ず自習いたします。次回の授業までに今回の内容をしっかりと理解し、遅れを取り戻したいと思います。
突然の欠席連絡となり、大変申し訳ございません。ご迷惑をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします。
〇〇〇〇
□□大学●●学部△△学科2年
学籍番号:1234567
メール:xxxxx@yyyy.ac.jp
電話:090-XXXX-XXXX
〜〜
いかがでしょうか。「体調が悪いので休みます」という一言だけのメールと比べたら、印象がずいぶん変わりましたね。
こういった「ちょっとした気遣い」は、社会に出てからとても重要になります。大学のうちから練習のつもりで身に付けておくと良いでしょう。やる気が感じられない人より、頑張っている人を応援したくなるのが人情というものです。誰が見ても実力で圧倒的に優れているという天才的な人でない限り、こういうスキルを身に付け、実践するに越したことはありません。
なお、このような文面は一度作成してしまえば、宛先や科目名、理由を少し編集するだけで使い回すことができます。ただし、編集漏れには十分注意しましょう。
また、最近は生成AIが適切な文章をすぐに作成してくれるため、これを基にテンプレートを作成しておくと良いでしょう。作文が苦手な人は生成AIに相談してみるのも一つの手段です。
ちなみに、先述のメール文例は生成AIに作成してもらったものです.要領よく、しかし誠実に生きていく。そんなバランス感覚を身に付けていってください。