“寝るときだけ”コンタクトレンズをつけて近視を治す!? 「オルソケラトロジー」の効果や向いている人の特徴を医師が解説!
眼鏡やコンタクトレンズを使用すると、激しいスポーツや水中でのアクティビティなどはどうしても制限されてしまいます。そうした悩みを抱える人もできる近視を抑制する治療法があることをご存知ですか? 今回は近視の治療法や適応などについて、「CS眼科クリニック」の宇井先生に解説していただきました。
≫「メガネで近視が進む」は誤解! 近視に関する「遺伝と環境」の影響を正しく理解しよう監修医師:
宇井 牧子(CS眼科クリニック)
長崎大学医学部卒業。公立昭和病院にて研修後、国立成育医療研究センター眼科、関東中央病院眼科、国立成育医療研究センター眼科などで勤務、横浜労災病院眼科医長を務める。2019年には、東京都文京区に位置する「CS眼科クリニック」の院長就任。日本眼科学会認定眼科専門医。日本弱視斜視学会、日本小児眼科学会、日本神経眼科学会、日本眼形成再建外科学会の各会員。
近視とは?編集部
近視とは、どんな状態ですか?
宇井先生
近視とは、屈折異常の1つで、遠くがぼやけてしまい、よく見えない状態を指します。通常は、網膜の位置でピントが合うため、はっきり見えるのですが、網膜よりも手前でピントが合ってしまうことでぼやけてしまうのです。
編集部
なぜ、網膜よりも手前でピントが合ってしまうのですか?
宇井先生
目の奥行き(眼軸長)が長くなってしまうからです。生まれたときの眼球は短いですが、体の成長に伴って目の奥行きも長くなるため、一定の長さを超えると近視になり、裸眼視力が低下していきます。特に屋外活動の時間が少なかったり、近くを見ることが習慣化したりすると近視になりやすいです。そして一度、眼軸長が伸びてしまうと戻ることがありません。眼軸長の伸びには個人差があり、伸びる人と伸びない人というのは遺伝による要素が大きいとされています。身長と同じで、ご両親が近視だとお子さんも近視になりやすいのです。
編集部
近視になるのは避けられないということでしょうか?
宇井先生
近視は一度なってしまうと戻らないので、眼軸長の伸びを抑えることが、近視の予防や進行抑制には重要となります。例えば当院では、近視の進行抑制治療として、自費診療にはなりますが「オルソケラトロジー」と「低濃度アトロピン点眼」をおこなっています。
近視進行抑制治療「オルソケラトロジー」とは? 効果はどのくらい持続するの?編集部
オルソケラトロジーについて、もう少し詳しく教えてください。
宇井先生
オルソケラトロジーは、特殊にデザインされたコンタクトレンズを用いて、角膜の前面を平坦化して視力を矯正する方法です。近視の進行抑制効果が認められています。従来のコンタクトレンズとは逆の使い方で、夜寝るときにレンズを装用して、日中は外します。
編集部
寝るときだけでいいのですか?
宇井先生
はい。寝ている間にコンタクトレンズをつけることで、角膜の形状を網膜上にピントが合うような形に補正します。補正された視力は一定時間維持されるため、日中は裸眼でもよく見えるようになります。
編集部
効果はどのくらい持続するのですか?
宇井先生
近視の度によりますが最初は半日くらいで、1週間ほど治療を続けると、起きている時間はずっと見えるようになる人が多い印象です。就寝時にコンタクトレンズを装着するという繰り返しで、近視の進行を抑制します。なお、オルソケラトロジーをやめれば、元の視力に戻る可逆的な近視矯正法です。
オルソケラトロジーが向いているのはどんな人?編集部
オルソケラトロジーのメリットや向いている人の特徴を教えてください。
宇井先生
近視の進行を抑えたい人はもちろんのこと、日中は裸眼で過ごすことができるので、特にサッカーやバスケットボールなどのコンタクトスポーツや、水泳など水中のスポーツなどをやっているお子さんにはメリットが大きいと思います。また、レンズの着脱も基本的に自宅内なので、例えば「学校にいる間にコンタクトレンズが外れてしまった」といった心配もないため、親御さんも安心できるでしょう。
編集部
では、オルソケラトロジーの注意点はありますか?
宇井先生
装用してしばらくは効果の持続時間が短かったり、視力が安定するまでは見え方が変動したりすることがあります。ほかにも、大人は夜間まぶしい、にじんで見える「ハロー・グレア」と呼ばれる現象が起こります。また、通常のコンタクトレンズと同様、目の傷のリスクや感染リスクが伴うので、毎日のケアと定期検査を適切におこなうようにしてください。
編集部
オルソケラトロジーは誰でも受けられるのですか?
宇井先生
日本のオルソケラトロジーガイドラインが2018年に改正され、これまで禁忌だった20歳未満への使用が慎重使用となり、小中学生でも使用が可能になりました。ただし、まずはオルソケラトロジーが適応となるかどうか、近視・乱視の度数、目の病気の有無、涙液の検査などをチェックする必要があり、近視の度数や角膜の形状、目の病気によっては、適応外となる可能性もあります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
宇井先生
体の成長に伴って、近視が急速に進行するお子さんは多くいらっしゃいます。この時期にオルソケラトロジーをやっていると、やらなかった場合に比べて大人になったときの近視の進行度が少なく済むと考えられています。医療機関によって差はありますが、保険診療の際に無料でカウンセリングをおこなっている眼科もあります。さらに、お試し装用をしてみて、合わなかったらやめることも可能なので、まずは近くの眼科で相談してみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
オルソケラトロジーの効果や向いている人、注意点などを解説していただきました。オルソケラトロジーは、寝ている間に視力を矯正できる便利な方法で、特に近視の進行を抑えたい子どもや、日中に眼鏡やコンタクトレンズを使いたくない人に向いているとのことでした。また、定期的に眼科検診を受けて適切なコンタクトレンズのケアをおこなうことが大切です。自費診療になりますが、近視の増加に伴って取り扱う眼科も増えているので、興味があればぜひ相談してみてください。
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