「バリウム検査後」の食事や体調不良になったらどうすればいい?医師が解説!
バリウム検査後に腹痛や体調不良・気持ち悪くなったらどうすべき?Medical DOC監修医が検査後の注意点や対処法、おすすめの食事などを解説します。
≫「胃がんの前兆となる5つの初期症状」はご存知ですか?予防法も医師が解説!監修医師:
伊藤 陽子(医師)
浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。
バリウム検査(胃部X線検査)後の食事や注意点
バリウム検査は、古くから行われている検査の一つです。経鼻内視鏡で胃カメラができるようになり、胃カメラのハードルが下がってきた現在でも、胃の全体像を把握するのに役立つことから多くの医療機関で検査が行われています。検査時間が短いことから、仕事の前に検査を済ませることも可能です。
バリウム検査とは?
バリウム検査とは、造影剤であるバリウムを飲み、発泡剤で胃を膨らませてからX線を照射して胃の状態を調べる検査です。胃部X線検査と呼ばれることもあります。健康診断などで行われることが多いでしょう。バリウムを飲むのは、そのままX線を照射しても内部までしっかりと写し出すことができないためです。また、空っぽの状態の胃はしぼんでいるため、発泡剤で膨らませる必要があります。
バリウム検査後の食事
バリウムは消化も吸収もされません。体内に長時間残っていると、便の水分が吸収されて固くなり、便秘になりやすくなります。そのため、バリウム検査後は、便秘にならないように気をつけることが大切です。通常はバリウムを排泄するために下剤が処方されます。ただし、下剤だけではうまく排泄されない可能性もあるため、バリウム検査後は水分を多めに摂るようにしましょう。水分をしっかり摂ることで便が固くなるのを防ぐことができます。また、検査後の飲酒は控えてください。アルコールには利尿作用があるため、腸内でバリウムが固まりやすくなってしまいます。
バリウム検査後に体調不良を感じたらどうすればいい?
バリウム検査は安全な検査だといわれていますが、人によっては検査後に体調不良を感じることがあります。
バリウム検査後に気持ち悪くなったらどうすればいい?
バリウム検査後に気持ち悪い、嘔吐するなどの症状が出た場合は早めに医療機関を受診しましょう。排便がない状態が続いている場合は、便秘が原因で吐き気などの症状が出ている可能性があります。バリウムが2日以上出ないときは便が詰まって腸閉塞を起こすこともあるため、早めに医師の指示を仰ぎましょう。
バリウム検査後に胃もたれや腹痛を感じたらどうすればいい?
バリウム検査では発泡剤を飲む必要があるため、人によっては胃が張ったようになり胃もたれすることがあります。腹痛がある場合は、バリウムが腸から出ていない可能性があるでしょう。胃もたれや腹痛がある場合、まずは処方された下剤を服用して排便を促します。それでも排便がない場合は、医療機関を受診してください。
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バリウム検査後に頭痛を感じたらどうすればいい?
バリウム検査と頭痛に直接的な関係はないと考えられますが、検査後に頭痛が起きたという方も一定数いるようです。軽い頭痛でしたら市販の頭痛薬を服用しても構いません。症状が気になるようでしたら、医療機関で相談してみてください。
バリウム検査前日や当日の流れ・注意点
「バリウム検査を受けるのが怖い」「当日はどのような流れで検査を行うの?」と気になっている方もいるでしょう。初めてバリウム検査を受ける方は、不安に思う気持ちがあるかと思います。しかし、バリウム検査は胃がんによる死亡率を減らせるエビデンスがしっかりと認められている検査です。検査の注意点や当日の流れを理解しておくことで、バリウム検査の苦痛を軽減できるでしょう。
バリウム検査前日の注意点
バリウム検査は、胃が空っぽの状態で受ける必要があります。前日の夜遅くに食事をすると食べ物が消化しきれずに残ってしまうことがあるため、バリウム検査の前日は20時から22時頃までに食事を済ませるようにしてください。具体的な時間についてはバリウム検査を受ける医療機関の指示に従いましょう。なお、水やお茶などは基本的に就寝前までなら飲んでも大丈夫です。牛乳やヨーグルトなどの乳製品は胃粘膜を覆ってしまうため、検査に影響が出る場合があります。乳製品の摂取は控えましょう。胃の中に食べ物が残っているとバリウム検査を中止しなければいけなくなるため、食事をする時間は指示通りに守ってください。
バリウム検査当日の流れ
検査当日の食事は控えてください。検査の2時間前まででしたらコップ1杯(200ml)程度の水を摂取しても構いません。常用薬がある場合は、事前に医療機関へ確認しておきましょう。検査を行う際、検査台に立ってバリウムと発泡剤を飲みます。検査が終わるまでゲップは我慢してください。バリウムは150ml程度と少量ですが、飲みにくいと感じる場合は味を確かめようとせずできるだけ一気に飲み込むようにするのがおすすめです。バリウムと発泡剤を飲み終わったのを確認した後、検査台を動かしていきます。その都度、技師から指示があるので従ってください。なお、バリウム検査当日に発熱や腹痛、下痢などの症状がある場合は、検査を受けられないことがあります。
バリウム検査当日の注意点
バリウム検査後には、下剤が処方されます。バリウムの排泄が遅れると便秘になって消化管に穴が空いたり詰まったりすることがあるため、排便には十分に注意しましょう。バリウム検査後の便は白いことが多く、バリウムが排泄されるにつれて便の色は茶色くなります。便の色が通常通りに戻るまでは飲酒やコーヒーの摂取を控えてください。飲酒やコーヒーなどのカフェインは利尿作用があり脱水になりやすく、便が硬くなるためです。そのほかの水分を多く摂り、便秘にならないようにしましょう。
「バリウム検査」で発見できる病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「バリウム検査」に関する病気を紹介します。
どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
胃がん
胃がんは、胃の内側を覆っている粘膜の部分にできるがんのことです。がんが大きくなると大腸や膵臓にまで広がることがあります。胃がん発症の主な原因は、多量の塩分摂取や飲酒、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染、喫煙などです。胃がんになった場合、自分で対処することはできません。内視鏡治療や手術、薬物療法などが必要となるため、胃がんが見つかった場合は必ず医療機関で治療を受けましょう。胃がんは初期の段階ではほとんど症状がありません。人によっては進行しても症状が出ないことがあります。胃が痛いことが多く、胃の不快感や胸やけ、食欲不振、血便、下痢などの症状が続いているときは、念のため消化器内科や消化器外科を受診してください。
食道がん
食道がんは、食道の内側にある粘膜にできるがんです。主な要因は、喫煙や飲酒だといわれています。とくに飲酒によって生じるアセトアルデヒドの代謝がしづらい体質の方は、食道がんのリスクが高いことが明らかです。食道がんに対してご自身で対処することはできません。治療は、内視鏡的切除や手術、放射線治療、薬物療法などを行います。初期の場合はほとんど症状がありません。進行すると飲食物がつかえる感じや体重減少、胸や背中の痛み、咳などの症状が見られることがあります。食道がんが疑われる場合は、消化器内科や消化器外科を受診しましょう。
胃・十二指腸潰瘍
胃潰瘍と十二指腸潰瘍のことをまとめて、胃・十二指腸潰瘍といいます。胃潰瘍とは胃の粘膜に潰瘍ができたもの、十二指腸潰瘍は十二指腸の粘膜に潰瘍ができたものです。ヘリコバクター・ピロリ菌の感染や解熱鎮痛剤の副作用、ストレス、飲酒や喫煙などが原因になるといわれています。胃・十二指腸潰瘍を自然に治癒させるのは難しいでしょう。胃潰瘍の場合は食事中から食後にかけて、十二指腸潰瘍の場合は空腹時に痛みが出やすいことが特徴です。胃酸の分泌を抑える薬や胃の粘膜を保護する薬などを使って治療を行います。胃痛や胃の不快感、下血や吐血などの症状がある場合は早急に消化器科や消化器内科を受診しましょう。
胃ポリープ
胃ポリープとは、胃の粘膜にできる良性の隆起性病変のことです。いくつか種類がありますが、とくに胃底腺ポリープと過形成ポリープがよく見られます。ストレスや遺伝、ヘリコバクター・ピロリ菌への感染、暴飲暴食などが主な原因です。問題のない胃ポリープもありますが、とくに対処をせず経過観察を行うこともあります。胃ポリープが大きくなって出血している場合やがんの合併が疑われる場合は、内視鏡によって切除されることが多いでしょう。基本的には無症状であることがほとんどです。胃ポリープを指摘されたり食欲不振や胃もたれなどの症状が続いたりしているときは、消化器内科や消化器外科を受診しましょう。
「バリウム検査後」についてよくある質問
ここまでバリウム検査後について紹介しました。ここでは「バリウム検査後」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
バリウム検査後に水分をしっかり摂ったほうがいいのはなぜですか?
伊藤 陽子(医師)
バリウムが腸内に長時間残ると、便の水分が吸収されて固くなり便秘になりやすくなるためです。消化管に穴があいたり、腸閉塞を起こしたりすることもあります。
バリウム検査でレントゲン撮影をした後は飲酒をしても大丈夫ですか?
伊藤 陽子(医師)
バリウム検査をした後は、バリウムがすべて排泄されるまで飲酒は控えてください。飲酒は脱水になりやすく、便が硬くなり便秘が悪化するためです。
バリウムはX線検査後どれくらいで便として排出されますか?
伊藤 陽子(医師)
下剤を服用後のバリウム便の排出時間には個人差があります。4時間ほどで便が排出される方もいれば、7.8時間たっても便があまり出ない方もいます。全部出し切るまで2日程度かかる人が多いようです。これ以上かかる場合には、医療機関を受診して相談しましょう。
バリウム検査後に便秘で排便がない場合、どうすればいいでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
バリウム検査を行って、7、8時間経過しても便が出ない場合には下剤を追加し、水分を多く摂るようにしましょう。2日経っても排便がない場合は、早めに検査を受けた医療機関に相談してください。
まとめ バリウム検査後は便秘に注意!
バリウム検査は、胃がんや胃・十二指腸潰瘍などの発見に役立つ検査です。バリウムが腸内に長時間残ると、便の水分が吸収されて固くなり便秘になることがあります。腸閉塞などを起こすこともあるため、検査後は必ず処方された下剤を服用しましょう。バリウム検査後に何か気になる症状がある場合は、検査を受けた医療機関に相談してみてください。
「バリウム検査」で考えられる病気と特徴
「バリウム検査」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器科の病気
胃がん
食道がん胃・十二指腸潰瘍
胃ポリープバリウム検査は、胃がんや食道がんなどを発見するのに役立ちます。これらの病気が見つかった場合は、速やかに消化器外科や消化器外科などを受診しましょう。
参考文献
胃がん検診の見直しについて(厚生労働省)
胃がん(国立がん研究センター)
食道がん(国立がん研究センター)