マツダ“超高級”「すごいクーペ」! めちゃ豪華なのに「爆速」!? 超絶「ロータリーパワー」&「斬新」装備の“ユーノス”「コスモ」とは

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世界初の「斬新装備」も搭載!

 絢爛だったバブル時代にはいろいろなクルマが登場しましたが、その象徴ともいえるのがマツダのラグジュアリークーペ、ユーノス「コスモ」です。
 
 その“バブリー”さは、現代では2度と生まれ得ないものでした。どのようなクルマだったのでしょう。

めちゃエレガントなのに「超高性能」!? ユーノス「コスモ」はどんなクルマなのか[Photo:Collecting Cars]

 車内のスペースは広く、燃費は徹底的に良く……と、現代の国産車はまさしく「効率重視」。

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 もちろんかつてのクルマも、それは第一に求められてきたのですが、一方で「ゆとり」や良い意味での「無駄」を感じさせるクルマをラインナップしていたのも事実です。

 と聞いて、筆者(遠藤イヅル)を含め多くのオジサンたちが思い浮かべるのが、マツダが1990年に発売したユーノス コスモではないでしょうか。

 1990年といえば、1980年代後半から1990年代初頭に沸き起こった「バブル景気」の最盛期です。

 当時のクルマは、1980年代に進歩した電子技術の普及や3ナンバーの税金が安くなったことも手伝って、車種数の増大、高級化、多様化、3ナンバー化が一気に進みました。

 高額車も飛ぶように売れ、1987年登場のトヨタ「クラウン」(8代目)のシリーズ月販目標はなんと1万4000台。「カローラ」よりも新車販売台数が多い月もあったほどです。

 マツダも例外ではなく、販売台数の拡大や高級化を画策します。

 販路を強固にすべく、それまで2系統だった販売店網を、「マツダ店」「ユーノス店」「アンフィニ店」「オートザム店」「オートラマ店」の5チャンネルに大幅拡大。

 なかでも、高級志向のプレミアムチャンネルをうたったユーノス店向けに用意された高級スペシャリティクーペがコスモでした。

 コスモといえば、1967年に世界初の市販ロータリーエンジン搭載車として誕生したクーペ。1975年に「コスモAP」としてスペシャリティクーペに発展した2代目、スペーシーな意匠で1981年に登場した3代目も、マツダの象徴であるロータリーエンジンを搭載する旗艦的モデルでした。

 そこで4代目となるユーノス コスモは、「史上最高のロータリー車」を目指してさらに高級化。全長4815mm、全幅1795mmという現在の基準で見ても大きくて幅広い車体は、当時はさらにその印象が強いものでした。

 しかも全高は1305mmしかなく、キャビンの小ささも相まって伸びやかさ・スタイリッシュさに輪をかけていました。水平基調のキャラクターライン、太いCピラーの存在感が生むサイドビューは、今なお優雅さと美しさを感じさせます。

 それでいて車内は実質的な2+2。ボディサイズを考えると広いとは言えませんでした。

 しかし、そのデザインや高級さには目を見張るものがありました。

 ラウンドしたリアシートとダッシュボード、上下に色分けされたカラースキムは囲まれ感と一体感を生み、センターコンソールと連続したリアのアームレストは、左右の座席に心地よい分断感を与えました。

 ドアトリムから連続する木目パネルとブラックアウトされたベルトが目の前を左右に横断するダッシュボードも、実に斬新でした。

 最上級グレードには、ミラノ・シンプレス工房が製作する、楡(にれ)の本杢目パネルと、オーストリア・シュミットフェルドバッハ社製の本革シートがおごられました。

 当時マツダは、肌が触れる領域すべてに本革を使用していたことを強くアピールしていました。

 高級クーペにふさわしく、キーを挿すと記憶していた位置に降りてくる電動チルトステアリングや、前席電動スライド、ハイパワーアンプ搭載のオーディオなど装備も充実。

 エアコンの操作も当時としては画期的なタッチパネル式で、世界初となるGPSカーナビの「CCS(カー・コミュニケーション・システム)」も搭載。これらの先進装備も注目を集めました。

V12エンジンに匹敵する滑らかさを誇った3ローターエンジン

 そしてやはりユーノス コスモを語るには、市販車では世界初搭載となる3ローターのロータリーエンジン「20B-REW」型を外すことはできません。

 最高出力330psを超える性能を持っていましたが、自主規制により上限値の280ps/6500rpmに抑えられていたといいます。

 最大トルクは自然吸気4リッター車に匹敵する41.0kg-m/3000rpmをマーク。V型12気筒のレシプロエンジン並みの滑らかさも、3ローターエンジンのアドバンテージでした。

 この強大なパワーを受け止めるべく、リアサスペンションにはツイン式ダンパーを備えるほどでした。

内装も「超絶」に豪華… バブルの申し子!? ユーノス「コスモ」のインテリア

 他にも2ローターの「13B-REW」型エンジンが用意されましたが、「20B-REW」ともども、日本車としては初のシーケンシャルツインターボを採用していました。

 一方で3ローターエンジンの燃費は「極悪」で、10・15モード燃費はカタログ値で6km/L台。実際には高速道路でも5km/L、街乗りでは5km/L、渋滞多めだと2km/L以下(!)だったそうです。

 時代に合わせたバブリー&ゴージャスなクーペとして生を受けたユーノス コスモですが、その後すぐにバブルは崩壊。マツダの5チャンネル化も失敗に終わり、1996年にユーノス店も消滅しました。

 ユーノス コスモも1995年に生産を終え、ユーノス店の終焉とともに販売を終了しています。

 人もモノもたくさん積めないのに車体が大きなパーソナルクーペは、言うならば「無駄」なクルマです。でもその「無駄」はゆとりや豊かさの象徴でもあるのです。

 大型クーペでさえクロスオーバー化され、さらに環境性能の高さも強く訴求される現在、燃費が悪いエンジン、狭い車内の国産高級クーペはきっともう2度と出ないはず。

 ユーノス コスモがいまも魅力的なのは、「現代ではありえないこと」で満ちているゆえなのでしょう。

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 ここまでこだわった設計にも関わらず、国内専用車だったためか、ユーノス コスモは海外のカーマニアから「知る人ぞ知る」存在のようですが、近年はその中古車が海外に流出するケースもみられます。

 2024年6月には海外のカーオークションサイト「Collecting Cars」で1990年式ユーノス コスモ(走行約16万キロ)が取り引きされ、オーストラリアで1万9215豪ドル(約207万円)にて落札されていました。

 近年は街でその姿を見ることもめっきり少なくなりましたが、二度と出てくることはないであろう豪華クーペゆえ、世界のマツダファンからこれからも大事に扱われていくことでしょう。