外観一新「AQUOS R9/wish4」、デザイナーの三宅一成氏が語る”心地よさ”
左から「AQUOS R9」と「AQUOS wish4」
シャープ製のAndroidスマートフォン「AQUOS R9」と「AQUOS wish4」が間もなく発売される。「AQUOS R9」はNTTドコモとソフトバンクから12日に、「AQUOS Wish4」はドコモとワイモバイルから7月4日に登場する。先代モデルから大きくイメージチェンジしたデザインには、どのような意図が込められているのか。
シャープの「AQUOS」シリーズのスマートフォンのデザインを手がける通信事業本部 デザインスタジオ 部長の川充雄氏と、今回デザインしたミヤケデザイン 代表の三宅一成氏が、その想いを語った。
シャープ 通信事業本部 デザインスタジオ 部長の川充雄氏と、ミヤケデザイン 代表の三宅一成氏
日本から発信するブランド「AQUOS」
川氏は、「日本から発信する『世界に通用するデザイン/ブランド』にしていきたいという思いが強く、ブランディングにあたりデザインの役割が非常に重要となった。スマートフォンを多くのユーザーが使うようになってから画一化してしまったデザインの、印象を変えていきたい」とデザイン刷新の経緯を説明。そのなかで「国内外で活躍し、温かみを感じる優しい作品」を制作している三宅氏にデザインを依頼。実際に話したところ、意思疎通ができ課題認識で共感できる部分が多く、良い物ができると感じたと話す。
シャープ 通信事業本部 デザインスタジオ 部長の川充雄氏
三宅氏は、スマートフォンのデザインについて「条件がかなり厳しい、簡単にはいかないと思った」とコメント。シャープのスマートフォンへの印象を問われると「AQUOSの名前があり、世代的にテレビの印象が強いことから、画面がすごいきれいなスマートフォン、ハイスペックな機能を素直に形どられたデザイン」と語る。
ミヤケデザイン 代表の三宅一成氏
一方、川氏は、今回のイメージチェンジについて「スマートフォンの進化はめまぐるしく、カメラの画素数や画面の反応速度、スピード、機能などをデザインに落とし込むデザインは、業界としてデザインが画一化してしまっている」とデザイン変更の意義を説明する。
情緒的価値
今回のデザインコンセプト「情緒的価値」について、三宅氏は「日常生活の中でほぼ24時間持ち歩いて身につけているスマートフォンだから、人とどう関わっているかがすごく大事になる」とコメント。その上で、「ハイスペックな機種(AQUOS R9)ではあるが、そのハイスペック感を面に出すよりは、人にどう親近感を与えられるか? というところに落とし込んだデザイン」と解説する。
三宅氏
続けて三宅氏は、これまでのプロダクトを振り返り「昔からインテリアデザインや雑誌のデザインなどを手がけてきたが、写真の中に家電があまり写り込んでいないと感じていた。電子機器や家電が“感じ良い物”に写っていないのではないかと感じてきた。そのなかに“感じ良いスマホ”がもしあれば、作品を邪魔しないものになるのではないか。こういうものを作っていく」と、そのコンセプトを説明した。
カメラ部に「自由曲線」を取り入れた今回のデザインについては「(スマートフォンのデザインでは)外枠の形があって、そこからオフセットでセンタリングしたり形を当てていったりするのが王道のやり方だが、今回は、かなり自由な丸でも四角でもない形を取り入れた。少し横長にしたりカメラのレイアウトもそろえずにランダムにすることで、心地よいレイアウトにしている」とコメント。「人に近い、少し緩い感じがする、親近感がある中で“人に近い形”となった。自由曲線を取り入れたいからデザインに取り入れたわけではなく、人に近いデザインを目指した」という。
言葉にしやすいデザインは良いデザイン
5月に外観が発表された際、Web上ではさまざまな意見が投稿された。そのなかで、カメラ部のデザインがあるアニメのキャラクターに似ているという投稿が散見されたという。
「AQUOS R9」のカメラ部
三宅氏は、これらの投稿については「歓迎している」とコメント。人に近いところを目指してデザインしており、特に何かに似せようという感覚を持ってデザインしているわけではないとしたものの、5月の発表後あらためて見てみると「確かに似ているかもしれない」と感じたという。三宅氏は「何かに例えてもらえるのは良いこと。デザインする際に『簡単な言葉で表現できるデザイン』は心がけていることで大事なこと」と説明。川氏も「デザインの言語化は難しい」とうなずく。
デザインのわかりやすさや伝わりやすさについて三宅氏は「誰かに簡単な言葉で伝えられるということは重要視している」と、意見に対して好意的な反応を示す。
社内でも賛否両論
川氏
今回のデザインを、シャープ社内で初めてプレゼンした際、社内では賛否両論あったと話すのは川氏。三宅氏は「カメラ部分が特徴的なデザインだが、はじめてのプレゼンから量産するために細かいところは変わっているが、デザイン自体はあまり変わっていない」と話す。
川氏は、「実際に小林(通信事業本部 本部長の小林繁氏)もスケッチを見てしっくりきていないように見えたが、実機を見ると大変気に入っていた」と振り返る。今回のデザインを「まさしく『日本から発信するデザイン』になったのかなと思う」と評価した。
「どう人に影響するか」を考えてデザイン
デザインする上で心がけている物はあるか? と問われた三宅氏は「人が使う物、1つ1つの形が人にどう影響するかを考えてデザインしている。ベースの考え方はあまり変えていない」と説明。物のデザインは「人が使うようになってはじめて成立する」とし、見た目だけではなく利用シーンにも重きを置いたデザインをしているという。
感覚的なところでは「“なんか良いよね”と思えるようなデザイン」とコメント。市場に流れる商品ゆえ、「ちょっとした魅力がないと商品として売れていくのは難しい」と指摘。感覚的な「なんか良いよね」の考え方と、機能的な部分の考え方は特に気をつけてデザインをしていると語る。
三宅氏は、いよいよ発売される「AQUOS R9/wish4」について「ようやく手に取ってもらえる段階になった。手にしていただければ、今回説明したことがなんとなく伝わると思う」とコメント。
川氏も、質感など細部にもこだわっているとし、三宅氏と引き続き一緒にやっていきたいと想いを語った。