「リモートワークをやめるか昇進を諦めるか」の2択を迫られたDell従業員の約半数が昇進を諦めたと報じられる
2020年のパンデミックに伴ってさまざまな企業でリモートワークが普及しましたが、次第にオフィス勤務に回帰しようとする動きも強まっています。Dellも「リモートワーカーは昇進の対象外になる」という方針を打ち出し、従業員をオフィスに戻そうとしていますが、約半数の従業員が昇進を放棄してリモートワークを続ける選択をしたと報じられています。
Dell said return to the office or else-nearly half of workers chose “or else” | Ars Technica
Dellはこれまで、リモートワークを支持する立場を表明していました。マイケル・デルCEOは2022年に「オフィスで働くことが昇進やパフォーマンス、エンゲージメント、給料に関して有利になるという認識は、リモートワークとオフィスを組み合わせたハイブリッドワークの神話の1つにすぎません」と述べ、従業員がリモートワークとオフィスワークの好きな方を選択できるとアピールしていました。
ところが2024年3月に、Dellは一転して「リモートワーカーは昇進させない」と通達しました。
Dellが従業員のリモートワーク支持から一転「リモートワーカーの昇進は無し」と通達 - GIGAZINE
Dellは2024年5月以降、全従業員を「リモートワーカー」または「ハイブリッドワーカー」の2種に分類し、リモートワーカーに分類された場合は昇進や役職変更の対象外になるとしています。ハイブリッドワーカーとして認められるためには、3カ月間で少なくとも39日、平均して週3日のオフィスへの出社が必要となります。
ところが、ビジネス系メディアのBusiness Insiderが確認したDellの内部データから、Dellの従業員は約50%が昇進を諦めてリモートワークを続けることを選択したことが判明しました。これにより、従業員をオフィスに回帰させようとするDellの計画は台無しになったと、テクノロジー系メディアのArs Technicaは報じています。
Business Insiderのインタビューに答えた人の多くは、リモートワークを続けている別の企業への転職を検討していると認めました。リモートワークを続けるという選択については、「リモートワークに移行して自由な時間が増え、家計への負担が軽減された」「パンデミック後に地元のオフィスが閉鎖された」「昇進に興味がない」「自分の担当チームが世界中のオフィスに分散しており、どうせZoomで通話するのでオフィスに行く意味がない」など、さまざまな理由が挙げられたと報告しています。
また、オフィスに通勤するハイブリッドワーカーを選択した従業員は、ほとんど誰もいないオフィスで仕事をして、同じく他に人がいないオフィスで仕事をする相手とビデオ通話しているとのことです。
対面式のオフィスに回帰しようとする企業の経営陣は、物理的に同じ空間で一緒に働くことで、より大きなコラボレーションとイノベーションが可能になると主張しています。Ars Technicaは、「このトピックに関する研究はさまざまな見解を示していますが、リモートワークが生産性の非常に緩やかな低下をもたらすという点では、ある程度のコンセンサスが得られているようです。たとえば、スタンフォード大学経済政策研究所の研究では、リモートワークによるコスト削減効果がその一部を補う可能性があるとしながらも、生産性が10%程度低下するとされています」と述べました。