MAYSONʼs PARTY

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元SKALL HEADZのAYATOMO(Vo/Gt)、MIKI(Gt/Vo)、Ya-Knock(Dr/Cho)の3人を中心にTSUKASA(Ba/Cho)、MOE(Tb)、SAKI(Vo/Tp)、PON(T.Sax/Cho)が加わった7人組SKAバンドMAYSONʼs PARTY。プロデューサーにHEY-SMITH猪狩秀平を迎えて制作された1st フルアルバムに引き続き、6月5日には2nd EP『3-SUN-』をリリース。遂に現れたSKAバンド界のニューリーダーとしてバンドはまさに大ブレイク寸前。全国ツアーHello! Mr.MAYSUN TOUR2024を前に、AYATOMO&SAKIというボーカル2人に自身について、シーンについて、その想いの丈を語ってもらった。

――スカパンクのバンドって最近すごく少ないですよね。

SAKI:(小声で)少ないです……。

AYATOMO:絶滅危惧種と言われてます(笑)。

――なぜなんでしょう。

AYATOMO 特にホーン隊が入ってるスカバンドが少ないんですけど、単純にホーンメンバーを集めるのがめちゃくちゃ大変で。吹奏楽部にいたホーンの子たちがバンドをやることはなかなかないんですよ。

SAKI:うん、難しい。

AYATOMO:クラシックとかに行くのが王道で。

――でも、かつてはシーンが形成されるぐらいたくさんいたじゃないですか。

AYATOMO:先輩のバンドから聞くところによると、当時は「バンドがやりたいからギターをやろう」とか「ドラムをやろう」っていうテンションの中に、「トランペットやろう」と「トロンボーンやろう」もあったんですよ。当時はスカパンクとかスカで活躍してる海外のバンドが多かったから「じゃあ、自分もスカバンドをやりたい!」って思って、誰に習うでもなくトランペットを練習し始めた人たちがそのままバンドを組んでいったみたいですね。

SAKI:昔は大阪とかすごかったじゃないですか。私も12時間スカバンドしか出ないイベントとかに遊びに行ってはいたんですけど、今はあの熱はどこへやらって感じで。大阪に関して言うと、大阪のシーンを作ってたライブハウスが潰れたっていうのが節目になったところがあるんかなっていうのと、AYATOMOが言うように、吹奏楽部の子、ホーン隊を集めるのが難しくなったっていうのと、時代……ですかね。ハッピーで楽しくて、大人数でワイワイしてるのが受け入れられていたところにヒップホップが来たんですよね。その波にガーッとかっさらわれて、その後もスカがくるくるって言われたままずっと来ないっていう(笑)。

AYATOMO:約20年の間、スカはまた流行るって言われてたけど(笑)。単純にバンド数が少なくなって、活躍できるバンドの母数も減って、シーンができづらくなってっていうところもあると思うんですよね。なので、そういうとこも含めて、僕らみたいなバンドが頑張らないとっていうのはありますね。

――最近、海外だとTHE INTERRUPTERSが人気ありますよね。

AYATOMO:アメリカに関してはここ数年で新手のスカバンドの人気が出始めたことでシーンがちょっと活発になってきてるので、その辺の流れもチェックしてます。

――最近キテるスカパンクバンドっていますか。

AYATOMO:海外だとBad Time Recordsっていうスカレーベルがありまして、KILL LINCOLNっていうバンドのメンバーが社長なんですけど、彼らが日本に来たときに僕らも一緒にライブをしてて、 そこのレーベルからはかなり人気のバンドが出てきてますね。それがTHE INTERRUPTERSに続く次世代のスカバンドとしてけっこう人気が出てきてる印象があります。

AYATOMO

――MAYSON’s PARTYはSKALL HEADZ を母体として2018年にバンド名を改名する形で活動が始まっていますけど、名前を変えてよかったですか。

AYATOMO:今となっては結果オーライで、その選択が正解だったなとは思いますけど、当時は本当に賛否両論ありました。やっぱり、俺らがやってたシーンには特に「続ける」という美学とか正義があったし、これまでの名前や曲を捨てて新しく始めるというのは本当にどうなるかわかんなかったんですけど、チャンスがあるのはそっちだなと思って振り切りました。今となってはそれでよかったと思います。そうでなければここまで続けられてなかったと思いますね。

――でも、再スタートを切って割とすぐにコロナ禍になってしまいましたよね。どんなこと考えてました?

AYATOMO:MAYSON’s PARTYは事務所もレーベルもない状態で始まって、そんなときにコロナ禍に突入したから「これはどうなるんだ……」っていう不安はあったんですけど、逆に僕らはネームバリューとか背負ってるものが一切なかったので、なんでもできる状態だったんですよね。なので、俺らと同じ世代のバンドだったらやりづらいようなことでもやってみようと思えたし、どう動いたら他のバンドと違うことできるかというのは考えてましたね。

――実際にどんなことをやったんですか。

AYATOMO:あの頃、みんな配信をとにかくやってたじゃないですか。なので、自分たちはまだデモしか出してないような状態だったんですけど、ライブに来てくれてるお客さんがちょっとつき始めてた時期だったので、そういう人たちのことをどうやって楽しませようか考えて、ツイキャスとかでお客さんからコメントもらいながら一緒に曲を作ったり。

――おお~。

AYATOMO:たとえば、「こういうメロディーができたんだけど、2ビートでダダダダダダダダってやるのと、8ビートでドンドンドンドンってやるのと、どっちの展開がいいか。はい、投票スタート!」みたいな(笑)。

――ええっ!?(笑)

AYATOMO:歌詞をつけるときも、お客さんとコメントでやりとりする中で出てきた単語を全部拾っていって。「なんか好きな単語ください。そこから無理くり歌詞つくります!」みたいな感じで1曲つくって、その曲を超DIYのデモ状態で録ってお客さんにプレゼントする、みたいなことをやってましたね。

――それはたしかにキャリアのあるSKALL HEADZにはできなかったでしょうね。

AYATOMO:できないですね、変なプライドが邪魔して(笑)。

――じゃあ、改めて頭の中をフレッシュできたと。

AYATOMO:そうですね。SKALL HEADZは11年間やってて、MAYSON’s PARTYを始めたのは僕が30を越えたぐらいで今6年目なんですけど、このバンドを組んだとき、SKALL HEADZを始めた19歳の頃の自分に戻った感覚があって。でも、ワクワクするのと同時に「またここからか……」っていう気持ちもあったんですよね。ただ、イチからバンドを始めるっていうハタチ前の情熱を思い出したからこそ、コロナ禍でもなんとかしなきゃっていう馬力が生まれたのかなっていうのはありますね。

SAKI

――ORESKABANDのメンバーだったSAKIさんも、新たにバンドを始めるという点ではAYATOMOさんと同じですよね。

SAKI:私、初めてバンドを組んだのが14歳だったんですけど、当時はまだ文化祭ノリだったし誘われて入ったので「売れてやるぞ!」みたいなことはまったく思ってなかったんですよね。しかも、高校を卒業するかどうかのタイミングでメジャーに行かせてもらって……。

AYATOMO:(ボソッと)ぜいたくな話ですよ(笑)。

――あはは!

SAKI:本当に! セレブをやらせていただいてました(笑)。でも、新しいバンドってなると結成のタイミングからそこにいるわけじゃないですか。それがめっちゃ楽しくて。バンド名がどうとかそんなんは全然関係なく、「機材車を買うらしい」っていう話を聞くだけでワクワクしてて。

AYATOMO:それは機材車移動をしたことがなかったからでしょ?(笑)

SAKI:そうなんです(笑)。

――当時のORESKABANDはそんな感じだったんですか!

SAKI:時代が時代やし。だから、みんなで車で九州まで移動するってだけで「ワクワク!」みたいな。今は「新幹線で行きたい!」って思うときもあるんですけど(笑)。だから、コロナ禍になってもいろんなことを考えてやるのが全部楽しくて、ライブすることが難しい環境になっても「どうやってこの状態を乗り越えようか」ってすごく前向きに考えられてたんですよね。「しんどいな……」って感じではなく、「じゃあ、これしよっか!」「こうしてみよっか!」みたいな。14歳でバンド組んだときに戻った感じがして、今でも楽しいですね。「やっぱ、バンドってこうやな!」っていうことを学び直してる感じです。

MAYSONʼs PARTY

――そうやってバックグラウンドが違う人たちが7人も集まっていて、どうやってバンドをまとめ上げてるんですか。

AYATOMO:これは本当に奇跡だと思ってます(笑)。僕とギターのMIKIちゃんとドラムのYa-knockの3人が元SKALL HEADZで、SAKIが元ORESKABANDで、サックスのPONちゃんが元FEELFLIPで、ベースのTSUKASAはスタジオミュージシャンとかサポートミュージシャンをやってたところから引っ張ってきて、MOEは奈良県の子で「どうしてもスカバンドでトロンボーンがやりたいです」っていう発信をしてたところから知り合って、みたいな。そうやって奇跡的なタイミングで全員が集まって、なんとなく「このバンドに懸けたらいけるんじゃないか」っていう思いが合致しはじめてから、ぐっと前に進んだかなっていうのはあります。でも、今はSouthBellというレーベルでやらせてもらってますけど、それまでは意思の統率の部分とかでけっこう危ない時期があって。

――それはそうですよね。

AYATOMO:ハタチとか10代とかで「よし、バンドやろう!」って始めてるわけじゃないし、それぞれの人生もあるじゃないですか。そんな中、この7人でこれまで6年間続けられただけでも奇跡だなって。やっぱりそれは、どうしてもバンドを諦められなかった気持ち、チャンスを掴みたいっていう気持ちがみんなの中で一致してるから前に進んでいけるんですよね。そういう気持ちがなかったらけっこう難しかったんじゃないかなと思います。みんな、このバンドがラストチャンスだと思ってるし、いただけるチャンスは全部掴みに行くっていう気持ちだし、そこに僕らはワクワクしているんだと思います。SouthBellでリリースできることになってなかったら心が折れるメンバーが出てきてたかもしれないですし、このご時世でCDを出してもらえるっていうこと自体なかなか難しいことなので、本当にありがたいですね。周りの人に支えられていることで成立してるバンドだなって日々実感してます。

SAKI:本当にそう思います。

――ということは、去年1stフルアルバムという形で大きな一歩を踏み出せたことはみなさんにとってかなり大きなことだったんですね。

AYATOMO:そうですね。1stフルアルバムであり自分たちの集大成だったので、それまでの活動によりブーストがかかって。お客さんの数が増えたのもアルバムの存在が大きかったので、今のMAYSON’s PARTYにとって大きなターニングポイントだったと思います。

――フルアルバムからちょうど1年ぶりとなる4曲入りの新音源『3-SUN-』はどういったきっかけで制作することになったんですか。

AYATOMO:基本的に僕らは作品を出してツアーを回るっていうことを毎年繰り返したいバンドなので、今回もツアーを回るために作品を出したいっていうところからはじまってます。なので、前回アルバムを出したタイミングですでに「次はこの辺のタイミングで、これぐらいのボリューム感で出せたら」っていう話はしてました。

――すごい。普通、アルバムをつくり終えたら、頭の中がすっからかんになるじゃないですか。

AYATOMO:ほんと、ハゲそうになるぐらい。

SAKI:うん、ハゲそうになるよね。

AYATOMO:ハゲそうになりながら、「やっと終わった……!」ってなりながら「次か……」ってなる(笑)。でも、ツアーを回ってお客さんに楽しんでもらうことが一番なので。それぐらいのペースで作品を出してツアーを回れたら楽しいだろうし、今は一番頑張らなきゃいけないタイミングだと思うので。先輩のバンドだとフルアルバムを1枚出したらしばらく作品は出さずにツアーを回ったりライブを繰り返したりすることが多いですけど、俺らはまだそういう状態ではないので、がむしゃらに頑張ろうっていう。

MAYSONʼs PARTY

――今回は4曲収録ということで、サウンドのバランスがうまくとれているように聴こえました。やっぱりそういうことは意識しましたか。

AYATOMO:アルバムでもEPでもそうなんですけど、今自分たちにどういう曲が足りないのか相談しながら進めるので、こういう雰囲気でこういうビートの曲はあるから、じゃあこういう曲をつくってみようか、みたいにバランスを見ながらつくってますね。

――それはライブをやっていく中で見えてくるんですか。

AYATOMO:それにプラスして、制作段階でも「これはなんかイケそうだな」っていうデモがあったら、「こういう雰囲気の曲はこいつに任せて、こっちの雰囲気の曲をつくってみよう」っていうこともあります。

――やっぱり、これまでの経験があるだけにその辺の判断は冷静なんですね。

SAKI:でも、曲づくり中はけっこうパニックよね。

AYATOMO:うん。

――あ、そうなんですね。

SAKI:なんか、わけわかんない曲が来たら、「どうやってわけわかんないって伝えようかな……」って悩みます(笑)。

――あはは!

AYATOMO:前回のフルアルバムはHEY SMITHの猪狩くんがプロデュースしてくれてたんで、ジャッジマンがいたんですよ。だけど、今回はプロデューサーがいなくて、自分らとレーベルの社長の判断で進めていったので、自分たちが厳しい目を持たなきゃいけなかったんですよ。だから、いまいちピンとこないなっていうものがあったらそれはしっかり伝えるようにしてましたね。

――それを言うのもけっこう辛いですよね。

AYATOMO:つくって数日後に全然よくないことに気づいたりはするんですけど、曲ができたときってつくった本人は絶対にいいと思ってるんで、自分らで進めるためには自分らで厳しくしないといけないんですよね。

SAKI:勝手に推し進めちゃったりすると危ないし(笑)。

AYATOMO:作曲は僕とSAKIとMIKIちゃんが作曲チームみたいな感じで進めてるんですけど、作曲チーム以外のメンバーは絶対意見しづらいはずなんですよ。「何、この曲?」とか絶対言えないと思うんですよ(笑)。だから、僕ら自身が厳しい目を持ってないと、そのまま進んでいっちゃうんですよ。

SAKI:3人でパニックやったらね。

――でも、過去の作品で猪狩さんがプロデューサーとしてついてくれた経験は活きてますよね。

AYATOMO:かなり活きてると思います。猪狩くんがプロデュースしてくれたのはデビュー作のミニアルバムと前回のフルアルバムなんですけど、自分たちでやってるとどうしても「イケるでしょ!」っていうハードルが低くなっちゃうので、猪狩くんのプロデュースを経験したことで「時間がかかってもいいから、ベストを出せるまでやる」っていうスタイルはすごく勉強になりました。

――じゃあ、今回もスポ根スタイルでとことんやったんですね。

SAKI:やりましたねえ。

AYATOMO:ジャッジに迷ったときに、「猪狩くんだったらこれはダメだよな、多分……」とか(笑)。

SAKI:「せやんなぁ~! もう一回やります!」とか(笑)。エンジニアの方も一緒になって、「猪狩くんやったらダメでしょうねえ」って言ってくれて(笑)、みんなで頭の中に猪狩さんジャッジを思い浮かべながらやってました。

――心の中の猪狩が(笑)。

SAKI:リトル猪狩を(笑)。

MAYSONʼs PARTY

――MAYSON’s PARTY自体がそもそもそういうバンドというのはありますけど、今作はハッピーな曲が集まっています。

AYATOMO:基本的に僕は明るい曲しかつくれなくて。僕が曲をつくるとどうしても明るくなっちゃうんです。SAKIはマイナー調のダークな感じの曲が得意なので、マイナー担当とメジャー担当で分かれてるんです。ただ、今回はリード曲のテーマが先にあったので、そこを目指すとなるとどうしても全体的に明るいイメージに引っ張られて、今回は4曲とも僕の曲だったこともあってさらに明るい印象が強めになっちゃったのかなという感じはあります。多分、SAKIの曲が3曲で僕が1曲だったらもっと違う印象になってたと思います。

――明るい曲しか書けないというのは性格的なところもあるんですか。

AYATOMO:それがわかんないんですよ。曲をつくると全部明るいスリーコードになっちゃうっていう病気にかかってまして(笑)。そういうのが好きなんですよね。俺、結末の暗い映画とかも嫌いだし、「イェーイ!」で終わるものしか好きじゃないんですよ。

――じゃあ、「ミスト」とかダメですね。

SAKI:絶対ダメだね。

AYATOMO:まず、怖い映画は観れないです。「ホーンテッドマンション」でギリなんすよ、俺。

――ええっ!?

SAKI:あれは明るいもんねえ(笑)。

AYATOMO:それぐらいホラーは苦手だし、暗い話とかちょっと考えさせる映画も苦手で。そうなってくるともう、「スターウォーズ」とかになってくるんですよ。

――それは幼い頃からずっと?

AYATOMO:怖いのはずっと嫌いでした。小さい頃、1人で家に帰ったときに親が出かけていなかったりすると、家の中で誰かが絶対自分のことを見てると思ってずっと話しかけてました。

――あはは!

SAKI:ヤバいね、それ。

AYATOMO:監視カメラとかあるかもって思って、「わかってるからな……!」みたいな。

――え、イマジナリーフレンド的なものじゃなくて、そういう話しかけ方なんですか(笑)。

AYATOMO:じゃなく。そうやって気を紛らわしてました。

――若干、中二病の匂いもしますね(笑)。

AYATOMO:そうそうそう(笑)、変なんですよね。

――じゃあ、「スターウォーズ」以外で一番好きな映画はなんですか。

AYATOMO:「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ですかね。

SAKI:わかりやすいなあ(笑)!

――あはは! とことんそういう気質なんですね。

AYATOMO:そうっすね。小学生の頃から音楽も映画もアニメも全部アメリカで、アメリカかぶれの子供だったので、歌も英語で歌いたいし洋楽っぽいことをやりたいっていうところがあって。しかも、キラキラしたアメリカ……ロサンゼルスみたいなのが大好きなので、暗いものにハマる要素がなかったんでしょうね。

――そういう気質がAYATOMOさんをスカパンクに導いていったところがある。

AYATOMO:かもしれないです。高校生の頃から「楽しい!」って感じでやってたんで。

AYATOMO

――一方で、SAKIさんはアニメ好きなんですよね。

SAKI:そうです。でも確かにうちは考えさせられるアニメが好きやな。「エヴァンゲリオン」とか。

AYATOMO:(小声で)いや、暗い……。

――あ、エヴァもダメですか。

AYATOMO:暗いんすよ。嫌いじゃないんすけど。

SAKI:意味わからんやろうね。私はそういうのをちゃんと理解できるまで観たくなるんで、エヴァは17回ししたんですよ。

AYATOMO:すご。

――ほとんど修行じゃないですか。

SAKI:そう、だからマイナーな曲ばっかりできるんでしょうね。

AYATOMO:俺、ジブリでさえちょっと苦手ですからね。

――ええっ!?

AYATOMO:なんか、エネルギーとかメッセージが強くて。

SAKI:岡本太郎みたいなところあるよね。

AYATOMO:嫌いじゃないし、映画館にも行っていろんな作品は観てるんですけど、「ちょっと……重たいなぁ……」って。

――2人でいい住み分けができてるんですね。

SAKI:そうかもしれない。

AYATOMO:それは前回のフルアルバムのときに強く感じました。そのときのリード曲はSAKIが書いたんですけど、「俺にこの曲はつくれないな」って感じてました。

――作曲面で影響を受けているアーティストは誰なんですか。

AYATOMO:世界で一番好きなバンドはランシドで、日本で一番影響を受けたのはSAなんですけど、高校生の頃、俺はスカとオイパンクが好きだったんですよ。メロコアよりも、 ストリートパンクとかパンクロックのほうに寄ってて。もちろん、ハイスタとかNOFXとかグリーンデイも通ってたんですけど、小学校の頃にJ-POPを聴いてた以外はずっとパンクですね。かなり偏ってパンクを聴いてます。

――MAYSON’s PARTYの明るいメロディーは純粋にパンク由来のものなんですね。

AYATOMO:そうですね。初期パンクとかランシドみたいなバンドが好きだったので、単純なコード、単純な展開、単純なメロディーが癖として出てるところはあります。

SAKI

――SAKIさんが好きなのはやっぱりアニソンですか。

SAKI:です。もう完全に。アニソンとモー娘。です。うちのつくる曲はあの要素でできてますね。

――作曲面で娘。のどんな要素に惹かれるんですか。

SAKI:「LOVEマシーン」とか「恋のダンスサイト」みたいにマイナーとメジャーが絡み合う感じがめっちゃ好きなんですよ。あと、イントロとアウトロの印象が全然違う曲とか、意味わかんない掛け声がめっちゃ好きで。そうやっていろんな曲を聴いて、「じゃあ、この要素をここに入れよう」みたいなことをやっていくと、ああいう形になります。それぐらいモー娘。とアニソンですね。

――アニソンと言っても色々ありますが。

SAKI:ワチャ系っていうんですか。でんぱ組.incさんとかああいう感じ。(「らき☆すた)の)「もってけ!セーラーふく」とか、ああいうわっちゃわっちゃごっちゃごちゃした曲が好きなので、そういう要素を入れてマイナーにします。

――はあ、なるほど! そういった要素がMAYSON’s PARTYを作っているんですね。

SAKI:変な土台ですよね(笑)。

AYATOMO:前回のフルアルバムのとき、俺も猪狩くんもSAKIの曲に関しては一旦頭を抱えたんすよ。「どういうことだろう……?」って。「でも、これは俺らみたいなバンドマンにはつくれない曲だな」と思ったので、そのときはバンドサウンドにぐっと寄せたアレンジにすることでちょうどよくなりました。それぐらい複雑な曲をSAKIはつくってくるんで、それを単純化する作業になるんですよね。逆に僕の場合はそういう要素がないので、単純なものをちょっと凝る作業が必要になるんですよ。だから、俺とSAKIの曲を真ん中に集めるっていう感じです。

――それぞれ振り幅のあるものをMAYSON’s PARTYに寄せていくという。

AYATOMO&SAKI:そうですね。

――さっき、今作はリード曲のテーマが先にあったと話していましたけど、それが1曲目の「SUNSHINE」ですか。

AYATOMO:そうです。最初に今回のEPのタイトルになるようなイメージを考えたんですけど、リード曲につながるものがいいだろうということで<SUNSHINE>とか<SUN>という言葉が出てきたので、曲の内容も含めて、ライブに来てくれてるお客さんを明かりで照らしたい、照らせるような存在になりたいという気持ちを込めました。僕らのバンドのスローガンは「PARTY4YOU」なんですけど、これは「お客さんのためにパーティーします」というメッセージで、前回のフルアルバムのツアーを経たことで少しでもポジティブなパワーを与えられたらという気持ちが強くなってきているので、作品もポジティブなメッセージのあるものにしたかったんですよね。なので、自然とそういうテーマになりました。

――ただ、今の暗いご時世、ハッピーな曲を書いたり、歌うことってなかなかパワーのいることだと思います。20年前に比べるとわりと覚悟が必要な気がするんですよね。

AYATOMO:ライブもそうなんですけど、とにかく楽しんでほしいし、明るくありたいんですよ。すごくシンプルですけど、それが俺らのメッセージで。

――「PARTY4YOU」という言葉にも通じますね。

AYATOMO:ライブに来てくれるお客さんにもいろんな人生があるし、いろいろと嫌なこともあると思うんですよ。僕はバンドが音楽の中で一番力を持ってるって信じてるんですけど、バンドにはそうやって大変な日々を生きている人たちを救う力が本当にあると思ってるので、自分もそういう力を持ちたいと思ってるんです。MAYSON’s PARTYのライブだけは本当に何も考えないで楽しくいられる空間にしたいし、MAYSON’s PARTYのライブがあるからちょっと頑張ってみようって思ってもらえたら嬉しいし、ライブに来て悩んでるのバカバカしくなったとか、ライブで友達できて幸せになったとか、全てポジティブな方向に持っていけるようなバンドでありたいなと思ってます。

――ハッピーなものを世の中に広めていきたいというよりも、せめて自分たちのライブに来てくれる人たちのことは幸せにしたいと。

AYATOMO:そうです。僕ら、"CLUB PATISTA"っていうちょっとしたファンクラブみたいなノリのイベントをやってて、僕らが作ってるラバーバンドを身につけてる人たちを無料でライブに招待するっていう内容なんですけど、僕らは目の前にいるお客さんを一番大事にしたいと思っているので、そういう人をコツコツ増やしていけたらと思っています。何かで急にバズっていきなり何千人もお客さんが増えるっていうのも嬉しいとは思うんですけど、俺らはそういうやり方が似合うバンドではないのかなって。

MAYSONʼs PARTY

――バンドとして着実に階段を上がっているように見えますが、次に目指しているものは何かあったりしますか。

AYATOMO:自分たちの中で出たいと思ってるフェスがあるので、そういうところには確実に出たいし、去年のツアーファイナルは渋谷クアトロでソールドアウトして、今年はEPのツアーなので新宿ACBでファイナルをやらせてもらうんですけど、この先はクアトロ以上のキャパに広げていきたいし、自分たちの冠イベントをもっと大きいところでできるようにスケールアップしていきたいと思ってます。

――スカパンクシーンを活性化していきたいという気持ちもあったりしますか。

AYATOMO:MAYSON’s PARTYを結成したばかりの頃、スカパラとHEY SMITHのイベントに出させてもらったことがあって、スカパラはだいぶ先輩なんですけど、メンバーさんから「君たちみたいなバンドが売れてくれないとスカのシーンは困るから」って言ってもらって。なので、新人……って言うのは変なんですけど(笑)、新しいバンドとして、スカシーンの中年の希望の星になれればなと思ってます。あと、30超えて新しいバンドをやってもイケるんだぞというところは見せたいですね。

――なるほど。スカバンドとしても、いちバンドマンとしても。

AYATOMO:昔は20代のうちに売れないと、みたいなことがよく言われてましたけど、 そんなことないんじゃないかと思うので、それを自分たちが体現できたらいいなと思ってます。

――ひとつバンドが上手くいかなかったからって諦める必要はないと。

AYATOMO:そうですね!


取材・文=阿刀"DA"大志 撮影=ヨシモリユウナ

SUNSHINE (Official Music Video)