「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 ~追憶展~」

写真拡大 (全9枚)

アニメーション映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の展覧会「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 ~追憶展~」が、2024年7月8日(月)まで、池袋PARCOにて開催されている。

本展は昨年秋に公開され、大ヒットを記録した映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の小道具や名シーンの再現フォトスポットなどで作品世界に入り込みつつ、制作の裏側も楽しめる展覧会。東京会場(池袋PARCO)のチケットはすでに完売しているが、2024年7月12日(金)から8月5日(月)までの広島会場(広島PARCOにて開催)がこの先に控えている。本記事では会場の雰囲気をお伝えしつつ、舞台である「哭倉村(なぐらむら)」への入村を熱くお勧めしていきたい。

※本記事は展示内容に触れています。ネタバレを避けたい方はご注意ください。

音声ガイドで広がる世界

会場エントランス

作品世界を体感し、没入する……はアニメ・漫画関連の展覧会でお馴染みのフレーズだが、正直なところ、本展の展示の豊かさは頭ひとつ抜けていると感じた。手の込んだ会場作りに、ツボを心得た資料展示。そして、キャストによる録りおろしの音声ガイドである。音声ガイドは【A:鬼太郎の父(声=関俊彦)がメインのバージョン】と、【B:水木(声=木内秀信)がメインのバージョン】の2種類が用意されている。自身のスマートフォンなどを使って再生するタイプなので、是非とも音質のいいイヤホンを持参して味わってほしい。ちなみに筆者は【B】の音声ガイドを聴いてみたが、第一声から水木らしさが全開で、ニヤニヤが止まらなかった。

作品をじっくりとなぞりながら

物語を追体験するように、水木が夜行列車に飛び乗るところから展示はスタートする。各シーンの美術ボードや、印象的なカットの複製原画を鑑賞しながら奥へと進んでいこう。会場では物語の舞台「哭倉村」へ通じる「哭倉トンネル」も立体的に再現されていて、冒頭から来場者へのおもてなしの心を感じた。

展示風景

右奥の風景パネルの足元にえらくリアルな雑草が生えているのも心憎い。複製原画は絵のキレイさももちろんだが、あちこちに総作画監督からの「こんな感じで!」「ありがとうございました!」といったコメントが書き込まれていてほっこりする。けっこうな頻度で絵文字的に目玉おやじが登場しており、喜んだり感涙にむせんだりしていて非常に可愛い。会場でぜひ注目してほしいポイントだ。

龍賀屋敷へと潜入

続いては、龍賀一族の屋敷をイメージした展示エリア。面白いのは右手の薄暗くなった一角だ。カゴの中のライトで壁を照らすと、屋敷に潜む妖怪たちが現れるのだ(結構怖い)!

展示風景

また、大広間風スペースの遺影とフカフカの座布団は撮影OKなので、龍賀一族の一員になった気分で、記念撮影をしてみよう。ほか、水木が思わずポッとなる「東京でもなかなか飲めない良い酒」やクリスタルガラスの喫煙セットなど、作中に登場する小道具の展示もあり、哭倉村や龍賀一族がまるで実在しているかのように感じることができる。

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は大人向けのホラーとして制作されただけあって、その再現展示もなかなかのホラーぶりだ。「なんだろう?」と軽い気持ちで暖簾をめくって小部屋に進むと、血だらけの殺害現場だったりする。残酷なシーンの複製原画をしみじみと鑑賞しながら、なんとなく背後に視線を感じるような気がして早々に小部屋を出た……。

座敷牢に入るレアな体験をどうぞ

会場内には、鬼太郎の父(ゲゲ郎)が囚われた座敷牢も再現。よく見ると、足元には灰皿や蚊取り線香も置かれている。牢は裏側から入れるようになっており、ゲゲ郎&水木と一緒に記念撮影をすることも可能だ。

展示風景

壁の展示を見ていくと、ゲゲ郎の資料の中に「美形キャラではないですが色気はあるキャラです」との一文を見つけて、深く納得。そう、まさにそれだ! と膝を打ちつつ、その絶妙な設定を人物造形に反映させ、視聴者に的確に伝えてくるクリエイター陣の手腕に感動した。またここでは、水木の印象的な食事シーンの絵コンテも展示されているので必見である。

喫しましょう、あの場所で

展示風景

物語とともに奥へ進むと、フォトスポットが並んでいる。若き日のゲゲ郎と妻の思い出(右)、そして、つるべ火に照らされながら墓場で酒を飲み交わす水木&ゲゲ郎のシーン(左)だ。墓場のフォトスポットはきっとあるだろうと思っていたけれど、クリームソーダまで再現してくれているのはうれしい驚きである。

クリームソーダを喫しました

椅子に座って、物語に入り込んだ気分で撮影してみた。モノクロの背景の中でポツンと鮮やかなクリームソーダが切ない。

貴重なバトルシーンの比較展示も

会場ではこのあと、展望テラスでのバトルシーンに焦点を当てた展示エリアが続く。写真でお伝えできず残念だが、二面の大スクリーンが用意されており、バトルシーンの絵コンテ・原画撮影・本編映像を同時に味わえる特別な一角だ。何周も繰り返して見たくなる、迫力ある展示なのでご期待あれ。

物語はクライマックスへ

展示風景

いよいよ展覧会もクライマックス。最後は壁にひらひらと桜の花びらが舞い散る、妖樹・血桜をイメージした展示エリアだ。幕で区切られた隣の小空間には、なんと窖(あなぐら)の底にある怨念の核心部分まで、リアルに再現されていて驚いた。ゲゲ郎と水木の絆に思いを馳せつつ、会場出口へと向かおう。

なお出口付近では、キャラクターデザインを担当した谷田部透湖氏による映画来場者特典イラストや、本展用の描き下ろしイラストが展示されているのでお見逃しなく。作品世界の愛憎や怨念にどっぷり浸ってきた後だからこそ、爽やかな気持ちで鑑賞を終えることができるのがとてもありがたい。

グッズも充実!

ショップでは、谷田部透湖氏による描きおろしイベントビジュアルを使ったグッズのほか、作中に登場する小道具をイメージしたアイテムも多数。個人的にツボだったのは、「血液製剤M風グリッターキーホルダー」だ。コレがあれば仕事がきついとき、頑張れる……かもしれない。

左:クリームソーダ風シャカシャカアクリルキーホルダー \1,000(税込)、右:血液製剤M風グリッターキーホルダー \1,000(税込)

この記事で紹介したのは、展覧会の魅力のほんの一部に過ぎない。写真の掲載数の都合で泣く泣くカットしたものの、本当ならこの2倍以上、紹介すべき見どころがあったことをお伝えしておきたい。ぜひ実際に会場へ足を運び、お確かめを。そして映画の感動を鮮やかに蘇らせてみてほしい。

「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 ~追憶展~」は池袋PARCOにて7月8日(月)まで開催中。その後、7月12日(金)から8月5日(月)まで広島PARCOにて開催。


(C) 映画「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」製作委員会
文・写真=小杉美香