カワサキ6気筒水冷DOHC1300の超弩級フラッグシップ!【このバイクに注目】(このバイクに注目)
1972年に900ccのDOHC4気筒で成功を収めたカワサキは、この頂点を受け継ぐ次世代開発の模索、その案のひとつが6気筒だった。
もともと4気筒を先行して発売する筈が、ホンダにCB750フォアで先を越され、いったん750の4気筒を引っ込め900ccに拡大、さらにDOHC化することで大きな差をつけたのがZ1だったが、次は何としても世界で唯一無二をモノにしたかったのだ。
しかし6気筒は1972年にイタリアのBenelli seiが750ccでリリース(1979年に900ccへ拡大)、量産車で世界初は諦めざるを得なかったのと、実際にテストで走り出すと直6ならではのシルキーなフィーリングに、このあまりにスムースなエンジンはカワサキらしくないと消極的な意見が多く、その時点で頓挫していた。
しかしビッグバイクがさらにエスカレートして大排気量化していく流れにあり、高速ツアラーのニーズも予感されたことから最新エンジンということで当時では珍しい水冷化を前提に6気筒プロジェクトが再スタート。
62.0mm×71.0mmのボア径を小さく(因みに2バルブ)とり、キャブレターも2連タイプを3つ装着するなど6つのシリンダーが並ぶエンジン幅をコンパクトに設計、1,286ccで120PS/8,000rpmと11.8kg/6,500rpmのパフォーマンスに車重が乾燥で297kgの怪物バイクを1978年にリリースした。
ただホンダから空冷DOHC6気筒のCBXが4ヶ月先に発売され、またしても後塵を浴びるスタートとなってしまったが、シリンダーが敢えて冷却フィンを持たないノッペリとした表面で、Z1系で高速ツーリング向けにシャフト化モデルも好評だったことなど、そもそもコンセプトもルックスも違うZ1300の注目度は高かった。
キャブレターから電子制御燃料噴射化で130PSまでパワーアップ!シルキーでJETフィールなダッシュを楽しめる直6エンジンだが、この多気筒化でいちばんの問題が燃費の悪さ。ライバルのCBXもそれには勝てず高速長距離ツーリング向きではない需要の狭さで1982年に継続を断念、いっぽうのカワサキは燃費と排気ガス規制への対応を電子制御燃料噴射(カワサキではd.f.i.)と取り組み、1983年に最大出力も130PSへパワーアップしたモデルをリリースしたのだ。
とはいえ、さすがにニーズは限られ主にヨーロッパで販売が続けられていた。
ただ100PSの馬力規制で99PS表記のスペックだったドイツで、なぜか飛び抜けて人気が高くドイツ向けではサイドカバーにドイツ国旗を掲げていたほどで、何と1989年まで販売が続いていたのだ。
この6気筒エンジン、当然のアイデアとしてアメリカの大型クルーザー、Voyagerにも搭載されたが、電子制御燃料噴射でもやはり燃費で長距離向きではないと烙印を押され、4,500台が販売されたが4気筒へとバトンタッチして早々に姿を消している。
対して通常のZ1300は爆発的なヒットにはならなかったが、累計で20,000台というセールス結果を残していた。