[6.22 J1第19節 東京V 1-0 名古屋 味スタ]

 あきらめない姿勢が生んだゴールとなった。東京ヴェルディは後半7分、FW木村勇大が倒されても主審の笛が鳴らなかったため、MF翁長聖はボールを拾って敵陣に進入。「今日の審判は流すというのは全員認知していたことだった」。プレーを続行させて決勝ゴールを奪い切った。

 この試合の主審を務めたのはダレン・イングランド氏。交流プログラムで来日していたイングランド・プレミアリーグの主審は、前半から球際の競り合いでも笛を鳴らさず。両チームの選手がファウルをアピールしても、流す場面が多く見られた。

「ファウルだったとは思うが…」と翁長は振り返る。後半7分、自陣からのカウンターで木村が右サイドをドリブル突破。すると、MF山中亮輔に背後から引っ張られて体勢を崩した。翁長が瞬時にボールを拾ってドリブルを続けると、右手で笛を持ったイングランド主審はすかさず東京Vのアドバンテージを取ってプレーを続けさせた。

 一瞬動きを止めた名古屋グランパスをしり目に、翁長がPA右に入り込む。「最初は中に(クロスを)上げようとしていた。だけど、DFが完全に中にいたので」。GKランゲラックの飛び出しを見計らい、冷静にループシュートを沈めた。

 城福浩監督は試合後の会見で翁長の判断に目を細め、チームの信条を明かす。

「倒れて痛がって、ファウルを取ってくれなくて、ずっと痛がってプレーがどこかで切れるまで倒れているみたいなチームは、世界にもあるだろうと。そういうチームだけにはならないと、倒れてレフェリーを見るようなチームだけには絶対になるなと言ってきている。選手がその意識を持ってやってくれたし、レフェリーがよく流してくれたと思う」(城福監督)

 東京Vは前節にサンフレッチェ広島に1-4と大敗。それでも今節は1点を守り切り、完封勝利を果たした。翁長は「ゼロで終われたのはよかった」と安堵しつつ「課題はたくさんあった」と前を向く。「次は連戦だが、修正して強くなった姿を見せたい」と意気込んだ。

(取材・文 石川祐介)