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2022年公開『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は、それまでの『ジュラシック』シリーズの総集編とも言える立ち位置の映画となった。『ジュラシック・ワールド』シリーズのテーマでもある“人間と恐竜の共存”を継続させながら、『ジュラシック・パーク』シリーズのキャラクターを再登場させ、数十年と続いてきた物語に一つの終止符が打たれたのだ。

また、新たなキャラクターも登場し、新時代を感じさせる物語にもなったが、そのエンディングにはどのような想いが込められていたのだろうか。本記事では、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の物語を振り返りながら、監督を務めたコリン・トレボロウの意図を紐解いていく。

この記事には、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』のネタバレが含まれています。

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『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』エンディング解説 (c) 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は、前作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(2018)で恐竜たちが人間界に解き放たれてから4年後の物語。世界の至る所で恐竜たちが暮らし、“ウィズ・ダイナソー”の時代に突入していた。

シリーズの主人公オーウェン・グレイディ(クリス・プラット)とクレア・ディアリング(ブライス・ダラス・ハワード)は、クローン少女として世界中から狙われていたメイジー・ロックウッド(イザベラ・サーモン)を匿いながら山脈の麓で隠遁生活を送っていた。近所の山林には、オーウェンとは特別な絆で結ばれているヴェロキラプトルのブルーとその子どもも暮らしていた。

一方、『ジュラシック・パーク』シリーズに登場した古植物学者のエリー・サトラー(ローラ・ダーン)は全米各地で大量発生していたイナゴによる害虫被害の問題にあたっており、早くも黒幕がバイオシン社であることを察する。サトラーは旧友のアラン・グラント(サム・ニール)を訪れ、バイオシン社の関与を立証するため研究所からDNAを入手する手伝いを依頼するのだった。

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そんな中、メイジーとブルーの子どもがある組織によって連れ去られてしまう。組織を雇ったのはバイオシン社のCEO、ルイス・ドジスンだった。ドジスンは映画『ジュラシック・パーク』に登場したインジェン社のライバルにあたる会社「バイオシン・コーポレーション」で勤めていた男。遺伝学者兼スパイとして登場していたが、あれから(おそらく卑怯な手段を使って)恐竜事業で成功を収めていたようだ。

メイジーを追うオーウェン&クレアとDNAサンプルの入手を試みるサトラー&グラントは、最終的にバイオシン社の研究所(サンクチュアリ)へとたどり着く。スパイとしてバイオシンに潜入していたラムジー(ママドゥ・アティエ)とイアン・マルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)の協力により、サトラーたちはDNAの採取に成功。途中、研究所から逃げ出したメイジーと合流する。オーウェンたちは元空軍パイロットのケイラ(ディワンダ・ワイズ)の協力を得て、道中で肉食恐竜最大のギガノトサウルスと鉢合わせながらもなんとかメイジーと再会することができた。

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研究所では火だるまと化したイナゴが大脱走し、近隣の山林では山火事が広がっていた。火の手が上がり、脱出が困難となる中、再びギガノトサウルスと対峙することになったオーウェンたち。そこにシリーズの名物恐竜T-レックスが現れ、なんとかその場を脱出することができた。一方、イナゴのDNA改変で世界の食糧事情を一変させようとしていた悪党ルイス・ドジスンはエリマキトカゲのようなディロフォサウルスの群れに襲われ、なんとも皮肉な最期を遂げたのだった。

世界飢饉を引き起こす恐れのあったイナゴは、悔恨の念に苦しんでいたヘンリー・ウー博士(B・D・ウォン)が遺伝子を書き換えることでなんとか一件落着。恐竜との共存問題も一歩大きく前進し、国際連合はバイオシン社の跡地を生息地として認定することに。物語は、メイジーの母親にしてクローン技術を生み出した科学者シャーロット・ロックウッドがかつてビデオに遺した言葉によって締めくくられる。

「哺乳類の誕生は6,500万年前。まだ幼い。地球は人類のもの?人類はもろい生命体システムの一部。生存を望むなら信頼し合い寄り添えば、共存できる。」

人間と恐竜の共存をテーマに、いち時代に区切りをつけた『新たなる支配者』。物語は、これまで以上に人間キャラクターに重きが置かれていたようにも思えたが、製作陣は『ジュラシック』シリーズを継続させるため、これまでとは違うアプローチを試みていた。

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コリン・トレボロウ監督、『ジュラシック』シリーズを継続するために試みた別のアプローチ

『新たなる支配者』でメガホンを取ったのはシリーズ第1作『ジュラシック・ワールド』(2015)を手がけたコリン・トレボロウ監督。公開当時、トレボロウ監督が英に語ったところによれば、本作では『ジュラシック・パーク』を含むそれまでのシリーズ5作とは異なるアプローチを意識したのだという。それが、恐竜主体の物語から人間主体の物語への転換だった。

「シリーズのDNAを変えるために、私は特に他の映画とは違うことをしました。これまでの5作は恐竜についての話でしたが、本作は恐竜と共存する世界の登場人物たちの物語です。このシリーズが前進するためには、“島に戻らなければいけない理由はこれです”というように提示するのではなく、恐竜が存在する世界で物語を語らせるにはどうしたらいいのだろうか、と考えました。」

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たしかに全体を通して物語では恐竜たちへのフォーカスが薄れていった印象で、基本的には人間キャラクターたちの群像劇で前進していった。そうした背景の一つとして、『ジュラシック・パーク』から復帰した俳優陣を含めキャストの意向も汲み取る必要があったようだ。トレボロウ監督は、本作が「私たち全員による産物だ」と米に語る。

「私は、クルーの方々とだけではなく、特に物語を構築する上では俳優たちと密接に協力しました。この映画では、ローラ・ダーンがこの物語から何を必要とし、サム・ニールやジェフ・ゴールドブラムが何を必要とし、クリス・プラットやブライス・ダラス・ハワードが何を必要とし、そして共同脚本家のエミリー・カーマイケルが何を必要としていたかに影響を受けました。」

シリーズを一貫して描かれた「共存」というテーマも、人間主体の物語となった所以だろう。「私たちは『ジュラシック・パーク』を人間たちがムシャムシャ食べられる恐竜のシリーズだと考えています」と語るトレボロウ監督だが、「警告でもあると思います」と強調する。

「科学は自然界を改変するほどの驚異的な力を私たちに与え、私たちはその結果を目の当たりにしています。みんな、その結果とともに生きています。だから、生き残るために自然界を前に必要とされる謙虚さについての物語を語ることができるのは、私にとって意味のあることだと感じました。」

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本作をもって、トレボロウは監督を卒業する意思を見せている。一方、次世代のフィルムメイカーたちにとってのメンターとなるのは大歓迎の様子だ。「私がスティーブン(・スピルバーグ)とやったように、もし別の頭脳がテーブルを用意して、“話を聞いてください、アイデアがあるんです ”と言ってきたら、僕やスティーブンは“もちろん”と答えるでしょうね」と語っている。

現在、『ジュラシック・ワールド』からはシリーズ第4作が進行中。監督には、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)や(2023)のが就任している。米公開は2025年7月。もしかすると今この瞬間もトレボロウ監督はメンターとして次なる物語のアイデアを聞いているところかもしれない。

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