日産 新型リーフ、最短で来年3月にも生産開始か 「困難」に直面する英サンダーランド工場
エネルギー価格は欧州本土の「2倍」になることも
日産自動車は英国のサンダーランド工場に20億ポンド(約4000億円)を投じる大規模な改修を行い、2025年3月からEV「リーフ」の次世代モデルの生産を開始する見込みだ。
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欧州市場向けの現行型リーフは3月に生産終了しており、同工場では生産ラインに新しいバッテリー組み付けステーションを追加する作業が始まっている。
日産の英サンダーランド工場で次世代EVの生産準備が進められる。
生産試験は8月から半年間行われる。早ければ来年3月から新型の導入準備が整うため、2024年末には情報解禁されることになりそうだ。
リーフは2021年公開の「チルアウト・コンセプト」で予告されたように、現在のハッチバックタイプからクロスオーバータイプへと変化する。欧州向けの車両はジュークやキャシュカイとともに英国で生産される予定だ。
日産はサンダーランド工場に多額の投資を行っており、5月24日に改良型キャシュカイの生産を開始したばかりだが、現地で生産を続けることには「障害がないわけではない」と、部門責任者のアラン・ジョンソン氏は言う。
「ここでの事業継続はおおむね正当化できますが、簡単なことではありません。本当に難しい課題です」
同氏は取材に対し、工場存続のためにはデータに基づく効率化の推進など厳格なコスト削減努力が必要だと語った。また、英国でのEV生産も「うまくいく」可能性はあるが、「すべての条件が整った場合に限られる」とした。
「他国との競争になると、英国にはかなりのハンディキャップがあります」
主な阻害要因としては、現地におけるサプライチェーンの最適化の難しさや英国政府の「堅実な政策」の欠如も挙げられるが、最大の課題はエネルギーコストだ。場合によっては「欧州本土の2倍を支払うこともある」ため、生産コストが上昇し、1台あたりの販売マージンが減少するという。
その対策として、日産は再生可能エネルギーを現地調達する取り組みを強化している。現在、工場のエネルギー使用量の20%(1週間で合計約350MW)は、敷地内の風力発電所と太陽光発電所から供給されている。将来的にはこれを100%まで引き上げる方針だが、具体的な達成時期は明らかにしていない。
コスト増を受け入れながらサンダーランドにこだわる理由について、ジョンソン氏は次のように答えた。
「ここには資産があります。施設や設備だけではありません。人も資産です。今ある資産を最大限に活用することが、当社の利益になるのです」
英国の雇用を支える巨大工場
20億ポンドにのぼる工場改修費用に対して英国政府からの支援はなかったが、代わりに日産のパートナー企業から資金援助を受けた。
「EV36Zero」と呼ばれるサンダーランド工場の拡大プロジェクトでは、新型リーフ用のバッテリーを供給するための第2バッテリー工場の建設と、近隣でのギガファクトリー建設が計画されている。これらは日産の中国パートナーであるエンビジョンによって運営される予定だ。
サンダーランドでは現在、欧州向けのキャシュカイ(写真)とジュークを生産している。 日産
サンダーランド工場は1984年にオープンし、ブルーバードを筆頭に40年近くエンジン車を生産してきた。欧州における日産最大級の自動車工場である。
改修の一環として、EVの重量に対応するために車両輸送用のキャリアも交換する。従業員の教育と訓練も重要な「柱」であり、メディアや外部の目に触れないよう厳重に隠された「極秘エリア」でさまざまなスキルアップが行われている。
工場長のアダム・ペニック氏は「工場全体をスキルアップしなければなりません。大きな課題ですが、品質の評判を維持できるでしょう」と語った。
増産に向けた従業員の増員も予定されている。新型EVが登場すれば、年間生産台数は現在の30万台から「倍増」する推測される。 日産は現在、英国で約7000人の従業員を抱え、国内のサプライチェーン全体で約3万人の雇用を支えている。
「サンダーランドの日産にとって、今はエキサイティングな時期です」とペニック氏は言う。