カラスはゼロの概念を理解したり、忍耐力テストで人間の子ども並みの自制心を発揮したりと、優れた知能を持つことが知られています。そんなカラスに数字を見せて鳴き声を出させる実験により、カラスは数字を理解してそれに応じた鳴き声を出すことが可能なことがわかりました。

Crows “count” the number of self-generated vocalizations | Science

https://www.science.org/doi/10.1126/science.adl0984

Crows can deliberately plan how many calls to make | University of Tübingen

https://uni-tuebingen.de/en/university/news-and-publications/press-releases/press-releases/article/crows-can-deliberately-plan-how-many-calls-to-make/

Crows Can Actually Count Out Loud, Amazing New Study Shows : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/crows-can-actually-count-out-loud-amazing-new-study-shows

サルやミツバチなど、一部の動物には数を理解する能力が備わっていますが、数の処理と発声の制御という2つの高度な能力の合わせ技ができる動物は、これまで人間しか知られていませんでした。

「目的をもって特定の数の発声を行うには、数的能力と発声制御の高度な組み合わせが必要です。人間以外にこのような能力を持つ動物がいるのかは不明でした」と、ドイツ・テュービンゲン大学のアンドレアス・ニーダー氏らの研究チームは論文に記しています。

今回、ニーダー氏らの研究チームは、ゼロの概念を理解するなど高度な数的能力を持つことがわかっているハシボソガラス3羽を用いた実験を行いました。

実験の内容は、カラスに特定の数字を見せたり音を聞かせたりするというもの。お題を提示されたカラスは、それに応じて1〜4回の鳴き声を出してからボタンを押して、回答が終わったことを報告しなければなりませんでした。



訓練の結果、3羽すべてが数に対応した鳴き声を出すことができるようになりました。また、カラスがお題を提示されてから鳴き声を返すまでには間がありましたが、その時間は必要な鳴き声の回数が増えるほど長くなりました。その一方で、必要な時間は数字か音か、つまり視覚か聴覚かといった刺激の種類とは関係ありませんでした。

「これは、カラスが提示された情報から抽象的な数字の概念を形成し、それを元に何回鳴くかの計画を立てることが可能なことを示しています」と、ニーダー氏は説明します。

さらに、この実験ではカラスが鳴き声の回数だけでなく、鳴き声自体も数字によって変えていることが確かめられました。ニーダー氏によると、カラスの回答のうち、1回の鳴き声の音響特性を分析すれば、カラスが合計何回鳴くのかを予測できるとのこと。

とはいえ、カラスの回答は完璧というわけではなく、たまに数え間違いをすることもありました。ニーダー氏は、「鳴き声が多かったり少なかったりする数え間違いは、カラスが既に鳴いた鳴き声やこれから鳴く鳴き声を忘れた時に発生しました。鳴き声の音響特性を調べることで、このような間違えを読み取ることができるわけです」と述べました。



by Steve Herring

この研究結果は、野鳥のコミュニケーション能力の理解を深めるのに役立つ可能性があります。例えば、アメリカコガラ(チカディー)という鳥は、捕食者の種類に応じて「ディー」という警戒音を出す回数を変えるといわれています。

今回カラスが見せた、自発的に声の回数を変える能力には、高度に発達した数的能力と発声制御の組み合わせが要求されます。ニーダー氏は「私たちの研究結果は、このような芸当ができるのは人間だけではないことを示しています。原理的には、カラスも高度なコミュニケーションが可能なのです」と述べました。