日本の"あの食材"が「脳疲労」をとるのに超役立つ
朝食の際のあの動作が脳疲労を軽くします(イラスト:『「心の勢い」の作り方』より)
「先延ばし」は多くの人にとって悩みの種です。
「とにかく1分だけやる」「作業をできるだけ小さく分けてやる」「ご褒美を用意する」
「先延ばし」を克服する本や、コツは世の中にあふれていますが、そのコツさえ実行するのを先延ばしにしてしまう!
そんな方が多いのではないでしょうか。
そんな「ずぼら」だけど、変わろうとしている「マジメ」な人のために、禅という新たな視点から行動する技術をまとめたのが新刊『クヨクヨしない すぐやる人になる 「心の勢い」の作り方』です。
著者である禅僧・精神科医の川野泰周氏と経営コンサルタントの恩田勲氏によると、マインドフルネスのルーツである禅には、「心を落ち着かせる」要素だけではなく、「心を勢いづける」モメンタムの要素も多く含まれていると言います。
締め切り前のレポート執筆」「転職」「結婚」など、心に勢いがあるとき、人は超行動的になります。そんな「心の勢い=モメンタム」を意図的に作り出す方法を紹介いたします。
以下では、「脳の疲労」について解説します。
脳疲労をとり、心身のバランスを保つ
近年、スマホなどの影響で1日に接する情報量は劇的に上がり、脳は常に高い負荷を強いられるようになりました。
老若男女問わず、脳が疲労しているのが、現代人の特徴かもしれません。
脳疲労は集中力低下やストレス増大など、日常生活に深刻な影響を与えます。
そこで、本記事では脳疲労を軽くし、心身のバランスを保つための効果的な方法を紹介します。
大切なのは、症状がひどくなる前に、脳を休めること。
その手段が、瞑想であり、マインドフルネスの心がけです。
前記事【「集中できない人」が食事中"無意識"にしてること】でも紹介した、DMNの働きを抑え、マインドワンダリングにストップをかけるには、さまよう心を「今、この瞬間」に繋ぎとめてくれる瞑想が特効薬になるのです。
そして、ここからが肝心です。
なんだか頭がモヤモヤとして、思い浮かぶのはネガティブな考えばかり。
「行動しなくちゃ」とわかっていても、心と身体がついてこない。
そんな人に、まず実践していただきたいのがマインドフルネスの瞑想です。
ずぼらな人ほど、うまくいく瞑想
一般的に、瞑想というと「作法が決まっているもの、ストイックなもの」というイメージがあるかと思います。
でも、禅の修行者でないなら、そんなことを気にする必要はまったくありません。
むしろ 「〜しないといけない」という思い込みが強いと、「今、この瞬間」に意識を集中する邪魔になります。
ずばり、瞑想は「頑張らない」ほどうまくいく。
これまで真面目に頑張ってきた人ほど「時間がない」「続けたくても、続けられない」といって悩むのですが、それもまた、思い込みです。
「なんとなく気持ちいいな」と感じられる瞬間を日常に増やせたら、ずぼら瞑想としては満点です。
ずぼら瞑想は、ずぼらな人でも続けられる瞑想です。
しかし同時に、真面目すぎる人たちが、もっと肩の力を抜くための瞑想でもあるのです。
ぜひお試しください。
なかには「こんなものが瞑想になるの?」と驚くようなものも、あると思います。
例えば、家事です。
家事は、ずぼら瞑想の宝庫です。
お掃除も、靴磨きも、洗濯も、普段は特別に意識を向けることなく済ませている人が多いはず。
でも、たまには「心を込めて」やってみる。
それだけで立派な瞑想になります。
「キャベツの千切り」瞑想も、その一つです。
特別なことは何もしません。ただ、キャベツを切る包丁の感覚に意識を向けてください。
キャベツを断ち切るときのザクザクとした手応えを感じ、まな板をたたくトントンという音を聞きましょう。
「ピーラーでやればもっと早いのに」といった気持ちも忘れて、「キャベツを切る」ことだけに意識を集中します。
家事だけではありません。
コツをおさえれば、どんなものでも瞑想になります。
特に、キャベツの千切りのように 「単純な動作の繰り返し」は、瞑想の効果大です。
納豆をかきまぜるのが瞑想に
例えば「納豆をかきまぜる」あの動作。
私は朝食の際に、よく実践しています。
慌てず、急がず、ただ丁寧に納豆を混ぜていると、頭のなかから言葉が消え、心が澄んでいくのがわかります。
起きてもいない未来を心配することも、変えられない過去を悔やむこともなく、「今、この瞬間」に没頭できる時間です。
また、そうして心を込めてかきまぜた納豆をご飯にのせていただく朝ごはんの、美味しいこと。
同じように、卵を「溶く」、大根を「すりおろす」、ネギを「刻む」、靴を「磨く」などの動作も、心を込めれば、瞑想に変わります。
単純な動作は脳が整う(イラスト:『「心の勢い」の作り方』より)
なぜ、瞑想をすると、こんなにも心が落ち着くのでしょう。
注意容量を奪うと、ムダな思考がへる
心理学の見地からは、「注意容量」というキーワードを使って説明できます。
人間の心は 「考えてはいけないと意識するほど、かえって考えてしまう」 性質を持っています。
「グズグズ考えているから動けないんだ、考える前に動け」と言われても難しいのはそのため。
しかし、人間が何かに向けていられる注意の量には限りがあります。
ならば、注意容量を使い切ればいい。そこで、瞑想です。
瞑想によって「今、この瞬間」に意識を向け、注意容量を使い切れば、何も考えずに済みます。
瞑想が注意容量を奪う力は強力です。
私はそれをお寺での修行中に実感しました。
雲水の修行は精神的にも肉体的にもハードです。
私は30歳と少々遅めの入門でしたが、多くの雲水さんは20〜25歳くらいの「現代っ子」でした。
修行に耐えかねて「帰りたい」と泣き出す後輩もいました。
それなのに、うつ状態のように心身のエネルギーが枯渇して寝込んでしまう人は、少なくとも私が修行させていただいた3年余りの間は誰もいませんでした。
毎日クタクタになるまで働いて、夜は「布団に入った瞬間に、もう朝」かと思うほど一瞬で深い眠りに落ちる。
これほどの厳しい修行で注意容量を消費していたら、あれこれと思い悩む暇もない、ということなのではないでしょうか。
「面倒」などネガティブな考えは注意容量を奪うことで考えなくなる(イラスト:『「心の勢い」の作り方』より)
(川野 泰周 : 臨済宗建長寺派林香寺住職/精神科・心療内科医)
(恩田 勲 : JoyBizコンサルティング代表取締役社長/一般社団法人日本モメンタム協会理事)