《ジブリがっかりタレント声優ランキング》2位のポニョ長嶋一茂を超えた、1位の「お父さん」
3月10日の朝、日本の映画ファンに歓喜の時が訪れた。それは宮崎駿監督の長編アニメ『君たちはどう生きるか』が、アカデミー賞で長編アニメーション賞を取った瞬間だった。宮崎監督は'03年の『千と千尋の神隠し』以来、2度目の受賞となった。
【写真】ジブリがっかりタレント声優ランキング1位となった「お父さん」
観客動員数612万人、興行収入90・8億円を突破(3月17日現在)とアカデミー賞受賞を追い風に、まだまだ記録を伸ばしそうな『君生き』だが、キャスティングに目を向けると、声優ではない俳優や歌手といった顔ぶれが並ぶ。
ジブリ作品といえば、'91年の『おもひでぽろぽろ』以降、俳優などがメインキャストに起用され話題にもなっている。そんなキャストに、
「声優としても素晴らしい」
といった声が上がる一方、
「どうしてこの人を起用した」
など否定的な意見も……。そこで今回、全国の30代〜60代の男女1000人にアンケートを実施。これまでのジブリ作品で“がっかり”した、タレント声優は誰かをランキング! この結果を、あなたはどう見る?
“がっかり”タレント声優ランキング
まずは10位にランキングされた、『君たちはどう生きるか』のキリコ役、柴咲コウ(42)。
「何作か声優をやっているけど、やはりこの人は俳優だと思う」(神奈川県・女性・47歳)、「美人だから声だけではもったいない」(東京都・男性・53歳)
声をあてたキリコという女性が、勝ち気なキャラ。大河ドラマで女性であるにもかかわらず、城主を演じた彼女にはぴったりの役だとは思えるのだが……。続く9位も『君生き』でヒロインのヒミを演じたあいみょん(29)。
「彼女が歌う曲には感激や共感があるけれど、アニメではそんな感覚が何もなかった」(千葉県・女性・48歳)、「ヒミが登場したときから違和感があり、この声優は下手だなと思って、後からあいみょんだと知って驚きました」(大阪府・女性・35歳)
と、声優に初挑戦したあいみょんには手厳しいコメントが。もともと、ジブリが大好きと公言していた彼女だが、好きすぎて気持ちが空回りしてしまった!?
そして8位は、『風立ちぬ』の堀越二郎として、主人公に抜擢されたことがニュースにもなった、庵野秀明監督(63)。
「せめて俳優ならまだしも、演技経験のない人を選ぶのは理解できない」(東京都・女性・41歳)、「とにかくセリフが棒読みで、感情の起伏も曖昧で、見ているこちらが恥ずかしくなるほどだった」(神奈川県・女性・59歳)
アニメーターとして宮崎監督の“弟子”である庵野監督が、師匠からの「やって!」のひと言で受けたという。「ダメだったときは僕を選んだ(プロデューサーの)鈴木(敏夫)さんと宮さんが悪いんです」と、語っていたが……。7位には“喋りのプロ”六代目桂文枝(80)がランクイン。当時は桂三枝の芸名で、『紅の豚』のピッコロのおやじの声を担当した。
「役よりも本人のキャラが強すぎた。世界観に合っていないように感じた」(宮城県・男性・59歳)、「桂三枝の声がキャラクターと結びつかない」(神奈川県・男性・58歳)
主人公のポルコ・ロッソの声を担当した森山周一郎さんによると、宮崎監督は、文枝をピッコロのおやじとして起用する際、出番を大幅に書き足したという。話芸の達人でも声優という仕事は難しかったようだ。
6位は『ハウルの動く城』でハウルを演じた、木村拓哉(51)。
よくも悪くもその一挙一動に注目が集まる木村だが、
「“キムタク”が前面に出すぎている。もはや、ハウルがキムタクに見えてしまった」(京都府・女性・63歳)、「変わりばえのしない声が残念」(神奈川県・女性・38歳)
と、散々な言われよう……。ジブリキャラナンバーワンイケメン、ともいわれるハウルだが、木村とかぶって見えていたということはある意味、本人にとって喜ばしいことなのかも。
5位にランクインしたのは『平成狸合戦ぽんぽこ』の正吉役、野々村真(59)。
「声に深みがない」(山口県・男性・44歳)、「本人のイメージとキャラとのギャップが激しい」(愛知県・女性・65歳)
野々村が演じた正吉は、主人公で冷静沈着なリーダー格の狸。確かに、バラエティー番組でおバカなリアクションをしている彼の声では、説得力がないと言われても仕方ないのかも。
“本業”のイメージが強すぎると──
さて、4位にはまたもや最新作『君生き』で青サギとサギ男を担当した菅田将暉(31)。
「菅田将暉という人に対しての期待が大きすぎた」(愛知県・男性・64歳)、「声優としてというより、話題性で選んだのかなと思ってしまった」(神奈川県・女性・39歳)
劇場アニメ作品で2作目の声優となった『君生き』。コメントには、俳優としての菅田の評価が高く、その部分に引っ張られて声優としての評価が厳しくなっている観も。
“がっかり”トップ3の一角、3位に入ったのは6位にも登場した木村拓哉。『君生き』の勝一として再びランクイン。
「演技に幅がなく、木村拓哉本人の顔が浮かんでしまう」(滋賀県・女性・58歳)、「キムタクは声優より、ドラマや映画がふさわしい。何をやってもキムタクだから」(千葉県・男性・63歳)
息子思いの父親をカッコよく演じていて、木村本人の顔が浮かんでくるとは、もうそれ自体が才能といえるのでは。
2位は『崖の上のポニョ』でポニョと出会った宗介の父親、耕一役の長嶋一茂(58)。
「セリフは少なかったけど、発する声が長嶋一茂そのものだった」(大阪府・女性・58歳)、「本人の性格がジブリ作品に向いていないように思った」(大阪府・女性・42歳)
バラエティー番組で見せる天然な一面が、どうしても視聴者の頭から離れないようで……。そしてファンを“がっかり”させた第1位は、『となりのトトロ』サツキとメイのお父さん役、草壁タツオの糸井重里(75)!
「声が本人そのものだったから、糸井さんが普通に話しているようにしか聞こえなかった」(福岡県・女性・60歳)、「素直に“下手な素人”だと思った」(埼玉県・男性・59歳)、「今では慣れたけど、当初はキャラクターと声の違和感が半端なかった」(北海道・女性・46歳)
なんとも意外(!?)な結果に。実は、声優以外にもジブリ映画のキャッチコピーを何作も糸井は手がけている。『もののけ姫』の「生きろ」、『千と千尋の神隠し』では「トンネルのむこうは、不思議の町でした。」そして、『となりのトトロ』も、「このへんないきものはまだ日本にいるのです。たぶん。」
声優という仕事では“本業”の域には届かなかったようだ。これまで積極的にプロの声優以外を作品で起用してきたジブリ。次回作にはどんな人が起用されるのか。
『餅は餅屋』という言葉もあるが、ジブリ作品は、こと声の部分では専門外の未熟さも魅力のひとつとしているのかもしれない。
がっかりタレント声優ランキング
【全国30代〜60代 男女1000人アンケート】
タレント 作品(役名) 票数(男性/女性)
1 糸井重里 『となりのトトロ』草壁タツオ 177(123/54)
2 長嶋一茂 『崖の上のポニョ』耕一 126(91/35)
3 木村拓哉 『君たちはどう生きるか』勝一 117(65/52)
4 菅田将暉 『君たちはどう生きるか』青サギ・サギ男 65(47/18)
5 野々村真 『平成狸合戦ぽんぽこ』正吉 42(26/16)
6 木村拓哉 『ハウルの動く城』ハウル 38(20/18)
7 桂三枝(現・六代目桂文枝) 『紅の豚』ピッコロのおやじ 37(27/10)
8 庵野秀明 『風立ちぬ』堀越二郎 27(19/8)
9 あいみょん 『君たちはどう生きるか』ヒミ 26(14/12)
10 柴咲コウ 『君たちはどう生きるか』キリコ 19(14/5)
取材・文/蒔田 稔