ランニング、ダイエット、勉強など新しく何かを始めることは、誰にとっても大変面倒です。何かを始める際の面倒さを克服するコツをご紹介します(写真:shimi/PIXTA)

さまざまな悩みや不安を抱え、「楽しくないまま、いまを過ごしている」

そんな人は珍しくありません。

とある調査によると「いま、あなたは幸せですか?」という質問にイエスと答えられる人は2割もいないのです。

現代は生きづらさや不安が増しているのかもしれません。

しかし、幸いなことに、多くの先人たちが幸せに生きるコツを残してくれています。

それらを現代の生活にあわせて整え、「即役立つ」ようにしたのが、新刊『あやうく、未来に不幸にされるとこだった』です。

以下では、「行動を増やすための技術」についてわかりやすく解説します。

考えるより行動するほうが幸せに近づく

「いま、正しい」と直感で感じたことは、思い切って行動するのがおすすめです。

「この選択でよいか」と悩み続けるより、良い結果が得られることがよくあります。


実際、ある心理学の研究によると、サッカーの試合結果に関する専門家の予測は、熟考したときよりも、直感に従ったときのほうが、的中率が高かったそうです。

ビジネスの世界で新しいプロジェクトや企画を進める際も、同じです。

「専門家の意見を聞いて入念に準備を重ねるより、とにかく実行するほうがうまくいく」

そんな傾向が見られます。

つまり「考えること」「検討を重ねること」以上に、「実際に行動に移すこと」が大事なのです。

「行動の結果がイマイチだとしても、とにかく行動したほうが幸福度は高い」

コロンビア大学の研究ではそんな結果が出ています。

またアップルの創業者であるスティーブ・ジョブズも、スタンフォード大学の卒業式のスピーチでこう述べています。

「私たちは、未来を知ることはできません。だからこそ『いまこの瞬間に自分自身が正しいと信じるもの』を選び、実行することをためらってはいけないのです」

とはいえ「新しく何かを始めること」は、誰にとっても大変面倒なことです。

安心してください、かくいう私もそうなのですから。

自動車だって、動き始めるときは多くの燃料を消費しますよね。

動き始める瞬間には、それだけコストがかかるわけです。

歴史上の偉人にだって、多かれ少なかれ「始めるって、ちょっとしんどいなぁ」という感覚はあったはずです。

例えば私の場合、特にランニングがそうです。

毎回、走り始めるまでがとても面倒です。

でも、走り終わった後は大変爽快で、「今日も走ってよかった!」と心から思います。

私にとってランニングは、「やってよかった」と思えるもので、それは十分にわかっているのですが、毎回毎回、面倒なわけです(笑)。

人の心って厄介ですよね。

私の8歳の息子も、湯船に浸かりながら「お風呂に入ると、こんなに気持ちいいのに、なんで入る前はあんなに嫌なんだろう」とこぼしていました。

疲れ知らずの子どもですら始めるのは面倒なのですから、大人はなおさらです。

心理的なハードルを簡単に下げられる放送

そんな大人にとっては有り難いことに、ある研究によって、始める際の面倒さを克服するコツがわかったそうです。

それは、なるべく小さく始めることだそうです。

この話をするたびにいつも思うのですが、私を含め、多くの人が考える「最初の第一歩」は大抵大きすぎます

例えば、「朝起きるのがつらい人」へのアドバイスは、大抵は生活習慣を整えるだとか、定期的な運動をするといったことです。

たしかにそれも大事ですが、起きる努力をするなら、まずはベッドで足の親指1本を動かしてみることからでもいいでしょう。

クエンティン・タランティーノの傑作『キル・ビル』では、4年間の昏睡から目覚めたユマ・サーマンは下半身が麻痺しており、立ち上がるまでに13時間かかるのですが、はじめに挑戦したのは右の足親指を動かすことでした。

プロの殺し屋らしく、決して慌てません。

ユマ・サーマンいわく、指を回せれば「関門は突破」だそうです。

さすがタランティーノです(笑)。

「がまん」とは無縁のダイエットがある!

このコツは、ダイエットにも当てはまります。

私たちはダイエットを始める際、綿密な食事制限を計画したり、厳しい運動プランを立てたりします。しかし、三日坊主で終わってしまい、早々とダイエットを諦める羽目になります

そんな大きな一歩では、なかなかダイエットは成功しません。

私たちの意志の力はとても弱いので、負担が大きなことは続かないのです。

だから、ダイエットを成功させるには、意志の力を最小限で済むようにする工夫、つまり、なるべく「がまん」しなくて済む工夫が必要です。

そんな工夫の一つに、「後で食べよう」と考える、というものがあります。

甘いものを食べたいという衝動が訪れたとき、「甘いものはダメ」と歯を食いしばるのではなく、「後で」と一時的に先送りするわけです。

面白いことに、多くの人は時間が経つとその食欲を忘れてしまいます。

夜まで食欲が続く場合でも、「明日の朝食べよう」と自分に約束することで、その日は乗り越えることができます

朝になり、まだ食べたければ約束通りに食べてもよいでしょう。

夕方や夜に食べるのに比べ、一日の始まりである朝に食べるとカロリーを消費しやすく、ストレスの軽減にもなるからです。

具体的な計画なしに、「後で食べよう」と思うだけで、ダイエットは始まります

そして、この小さな一歩が、ダイエットの成功という大きな成果へつながっていきます。

兎にも角にも、最初の一歩を小さくすること、それが大切です。

ランニングを始めようとするのであれば、遠くを目指して走り出すのではなく、まずは近くのコンビニに買い物に出てみる

勉強を始めようとするのであれば、いきなり教科書を開くのではなく、YouTubeで関連動画を見てみる

仕事を始めようとするのであれば、いきなり作業に着手するのではなく、近くの同僚に話しかけてみる

このように「始めたいこと」に関連する行動なら、どんなにささいなアクションでも構いません。

「始めること」がストレスにならないように、できる限りハードルを下げて、「スムーズに開始できる」ことから始めてみましょう

人の心とは不思議なもので、始めてしまえば、次第にその気になってきます。

自然にするするとチャレンジしたくなるようにできているのです。

コンビニに向かっている途中で、「あと少し、このまま走ってみよう」と足を動かし続けたり

YouTubeで歴史動画を見ているうちに、「あれはどうだったかな?」などと気になった出来事を教科書で調べたり

同僚と世間話をしているうちに、作成書類の具体的なイメージが湧いてきて、むしろいますぐ作業を始めたくなったり

「やる気」とは、行動の前にあるものではなく後にあるものです。

だから「やる気が起こりにくいこと」ではなく「やる気が起きやすいこと」でやる気を起こせばいいのです。

最初の10分で、嫌なら即やめていい

もう一つ、いい方法があります。

行動に移す際に、時計やタイマーで時間を測ってみてください

もし、スタートから10分経っても気持ちが乗ってこなければ、そのときは「見込みがない」かもしれません。

場所や時間や体調などで、イマイチ集中できないこともあります

そういうときには早々に切り上げて、他のことを始めたほうがいいでしょう。

大事なのは、自分を責めないこと

集中できなかったり、はかどらなかったりするのは、あなたのせいではありません。

単にタイミングの問題です。

ここまでお話ししても、真面目な人は「頑張ろう」としてしまうので、要注意です。

心が元気な時期なら、少し粘ったあとに集中できたり、満足のいく成果が出せたりすることがあります

でもストレス過多で疲れている時期には、粘ってもつらいだけです。

つまり、しんどいときに頑張るなんて、時間と労力の無駄です。

有限な人生において、そんな無駄を許せるほど、私たちは暇ではありませんよね。

例え話をしてみましょう。

意外に聞こえるかもしれませんが、優秀な営業マンほど、粘りません

また優秀な投資家ほど、早々に損切りします

「ここまで投資したのだから」とこだわり続けると、それがかえって命取りになるとわかっているため、手を引くのも早いのです。

また「多趣味多才」で知られる人は、見方を変えると「ただの続かない人」ともいえます。

だから、「粘れないこと」を気にする必要なんて、まったくありませんよ。

失敗後のダメージを未然に防ぐ技術

もう一つアドバイスしておきましょう。

「うまくいかないかもしれない可能性」を、最初からおりこんでおくのです。

例えば「最初から10件(10回)までなら失敗してもいい」、そう決めてから始めれば、失敗のたびにがっかりすることはありません。

この「がっかりする」という心の動きは、少なからずダメージを与えるので、できるだけ避けたいものです。

「失敗すること」「続かないこと」、そういったことがすべて無駄になるとは限りません。

確かに結果だけを見れば「無駄になった努力」もあるでしょう。

でも経験値は確実に上がります

「すべてが無駄になること」なんて、まずないのです。

それらはあとの人生において、必ず何かの役に立ちます。

未来のあなたの糧になってくれます。

がまんしながら続ける「無駄な努力」より、「新しいことに挑戦する努力」のほうが、あなたを確実に成長させてくれますよ

(堀内 進之介 : Screenless Media Lab. 所長、立教大学特任准教授)
(吉岡 直樹 : Screenless Media Lab.テクニカルフェロー)