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会社を退職するとき、引き継ぎをすることは「義務」なのかーー。弁護士ドットコムに、このような質問が複数寄せられている。

ある相談者が勤める会社の就業規則には「すべての業務を引き継いでから退職すること。引き継ぎをしない場合は退職金を払わない」と書かれているという。会社側に「引き継ぎが不十分だった場合は損害賠償請求する」と言われた人もいる。

そもそも、引き継ぎは絶対にしなければならないのだろうか。しなかった場合の制裁は認められるのか。西山良紀弁護士に聞いた。

●「適切な引き継ぎ」の義務がある

ーーそもそも、退職時に引き継ぎをすることは「義務」なのでしょうか。

雇用契約上、労働者は「会社の正当な利益を不当に侵害してはならない」義務を負っています。

そのため、労働者には、会社に対して所定の予告期間をおいて退職の申し入れをおこなうことが求められています。また、自ら担当していた業務の遂行に支障が生じないように、それまでの成果物の引渡しや業務継続に必要な情報の提供などの適切な引き継ぎをおこなうべき義務があると考えられます。

ーー適切な引き継ぎをしなかった場合に「退職金を支払わない」「損害賠償請求する」などとする会社の言い分は認められるのでしょうか。

退職金の不支給・減額が認められるか否かは、具体的な事情次第となるでしょう。引き継ぎ拒否の悪質性、業務への支障の程度、労働者のこれまでの会社に対する貢献度など諸般の事情によって有効性が判断されることになります。

損害賠償請求については、引き継ぎの拒否によって会社に損害が発生しているのであれば可能です。ただし、裁判になった場合、「本当に損害が発生したといえるのか」「その損害が引き継ぎ拒否が原因で発生したといえるのか」などについて厳格に判断されることになります。そのため、会社の主張が認められるのは、なかなかハードルが高いと思います。

【取材協力弁護士】
西山 良紀(にしやま・よしのり)弁護士
兵庫県弁護士会所属。
離婚・男女問題、遺産相続、労働問題、債権回収などを多く扱う。
昼食の大半はラーメン。鶏がら・豚骨から出汁をとってラーメンを自作することもある。独立する際に、前所属事務所からもらった餞別は寸胴鍋とオリジナルラーメン鉢。
事務所名:リライト神戸法律事務所
事務所URL:http://relight-kobe.jp/