能登半島地震を受けて、北陸地域4県を対象に実施される「北陸応援割」の中身は?(画像:北陸応援割ポータルサイト

1月1日に発生した能登半島地震を受け、観光庁の主導ですすめられているのが北陸応援割だ。いよいよ今週金曜日、8日から予約が始まる(新潟、富山、福井県分)のを前に、観光庁が発表した内容をベースに今一度おさらいしてみたい。

なお、すべて3月5日の執筆時点の情報だ。利用する場合は最新の情報をインターネットなどで調べてほしい。

各県で異なる点もあるので注意

まず大前提となるのが、「北陸応援割」というのは新潟県・富山県・石川県・福井県の4県で実施する割引の総称であること。

割引率は共通で、ルールも「ほぼ」共通だが、実施時期や取り扱い対象となる旅行会社の定義などが県によって異なる点に注意したい。そのため、各県が設置する割引キャンペーンのサイトを確認するのが確実だ。

■名称

にいがた応援旅割キャンペーン(予算 約24億7000万円)

とやま応援キャンペーン(予算 とやま応援クーポンとあわせて約13億円)

いしかわ応援旅行割(予算 約50億2000万円)*特設サイトは3月11日より開設予定

ふくいdeお得キャンペーン(予算 約8億円)

■実施期間

2024年3月16日(土)〜4月26日(金)宿泊分まで

ただし、石川県はゴールデンウィーク以降に第2弾を実施することを発表している。

さらに被害の甚大な能登地域は北陸応援割の「対象外」となる代わり、改めて最大70%還元の観光振興策を実施する予定となっている。

■予約開始日

新潟県・富山県・福井県:3月8日(金)

石川県:3月12日(火)

予約開始日以前に申し込んだ旅行は対象外。開始時刻は午前0時からや午前10時からなど、受け付ける業者によって異なる。また、開始日の時点で予約受け付けがスタートしない業者があることも想定される。

■割引の対象者と条件

幼児・こども・外国人を含むすべての旅行者が対象となるが、宿泊施設で宿泊者全員分の身分証明書(運転免許証・マイナンバーカード・パスポート・健康保険証など)の原本を提示しないと割引が得られない。

■割引の対象となる旅行会社・宿泊施設

宿泊を伴うパッケージツアーもしくは宿泊のみ(日帰りは対象外)。対象となる旅行会社は県によって異なる。

【新潟県・富山県】北陸4県に本社がある旅行会社もしくは過去の需要喚起施策で取り扱いが多かった事業者

【福井県】北陸4県に本社がある旅行会社もしくは福井県内に営業所や支店がある旅行会社、OTA(オンライン旅行会社)からの予約は割引対象外

【石川県】後日発表

割引率は旅行・宿泊料金の最大50%

■割引率と1名あたりの割引限度額

旅行・宿泊料金の最大50%(1泊1名につき)

<限度額>
宿泊のみ・1泊のみのツアー 2万円
2泊以上のツアー 3万円
2つ以上の県にまたがって宿泊するツアー 3万5000円


「北陸応援割」の割引について(画像:北陸応援割 ふくいdeお得キャンペーン)

たとえば1室2名で旅館に1泊する場合、1泊8万円が4万円となる。また、8万001円以上の場合でも4万円が割引上限額となる。

かなり高額の高級旅館でないかぎり、上限は気にしなくてもよさそうだ。なお、利用回数制限はない。

このほかにもさまざまルールがあるが、ここでは紹介しきれない。3月5日現在、にいがた応援旅割キャンペーンのサイト内の「よくある質問」が非常に詳しい。

たとえば「気球は宿泊を伴う交通付旅行商品の対象となるか」というマニアックな質問までカバーしている(答えは対象外)。前述したように各都道府県で若干の相違点があるとはいえ、参考になるだろう。

なお、全国旅行支援とは異なり、地域クーポンのようなものは存在しないが、以下のクーポンは「北陸応援割」と組み合わせることも可能だ。

●とやま応援クーポン

■クーポン配布時期 2024年2月20日〜4月27日(ただし、宿泊施設利用者に先着順で配布し、予算がなくなり次第終了)

■対象者 富山県内の対象となる宿泊施設を一定額以上で利用する人(日帰りでの利用者を含む)

■割引額 富山県内の加盟店で利用可能な「とやマネー」の電子クーポンとして配布
【北陸応援割開始前】1人1万円以上の利用でクーポン3000円分を配布(旅行会社・OTA経由の場合は1万5000円以上)
【北陸応援割開始後】1人5000円以上の利用でクーポン1000円分を配布(旅行会社・OTA経由の場合は1万円以上)

このほか、新潟県新潟市でも北陸応援割と同じ時期に「新潟市北陸応援割にいがたクーポン」(予算4800万円)を提供するなど、市町村でも独自にクーポンを提供する動きがある。

気になることは?

北陸応援割で気になる点が2つある。

1つは、能登半島地震で集客にさほど大きな影響がなかった地域も、一律で割引対象となる点だ。

今回は能登地域を除く4県の全域が割引の対象となるため、極端な話、新潟県の越後湯沢周辺のスキー場から北陸新幹線の延伸での盛り上がりが期待される福井県の敦賀まで、いずれも50%引きの対象となることだ。

地域によっては、風評被害などもなく、復興支援はそもそも必要いのではないか、というところもあるだろうが、明確な線引きができない以上やむをえない側面はある。

こうしたなか、最も被害の大きかった石川県のみゴールデンウィーク以降も実施を予定しているほか、震災で特に大きな被害を受けた石川県の能登地域では、70%割引という強力な割引制度を将来実施することを事前に告知したのは得策だろう。

能登は北陸でも、とりわけ個性的な文化や景観を持つ地域である。今回の北陸応援割を機に北陸を訪れる人も多いと思うが、能登地域を対象とした割引制度が実施される際には、ぜひ足を運んでほしいと願っている。

早期に予約枠が埋まる可能性も

もう1つは4県トータルで約94億4000万円という予算額だ。

もともと多いとはいえないが、事務局の経費を差し引くと、実際に割引へ投入できる金額はさらに少なくなる。その金額を4県で分け合うことになるのだ。この予算の半分以上を石川県が占めるため、残り3県の予算の割り当てはさらに小さなものとなる。

仮に80億円が実際に割引に使える額で、1人2万円相当の割引があると仮定した場合、割引の対象となる旅行者の数は40万人となる。2022年の4県の延べ宿泊者数は年間を通じて約2000万人。これを単純に1.5カ月分とすると、約250万人分となる。

つまり250万人の宿泊を伴う旅行者のうち、実際に北陸応援割を享受できるのは40万人、すなわち16%にとどまることになる。規模の小さな宿泊施設では、1施設あたりの割り当ては100人程度と予想されていることもあり、予約受付開始日に予約枠がすべて埋まってしまう宿が続出しそうだ。

大々的に割引を宣伝した結果、すぐに割引枠が埋まってしまうと、宿泊施設はその対応に追われるばかりか、多くの顧客に対してお詫びをする必要が出てくる(実際に予算枠を決めているのは宿泊施設ではないので、お詫びをする必要は本来ないのだが)。

顧客として数少ない一部の人だけが割引を享受し、自分は得られないという不公平感が不満を増大させてしまうことにもなるのではないだろうか。だが、現時点では予算も確定してしまっており、いかんともしがたい。

利用者としては、電話予約でしか受け付けない宿や、有名観光地でないところにある宿をあえて選ぶことなどで、割引を獲得したい。

ツアーについては、旅行会社ごとに北陸応援割の予算が割り当てられ、宿泊については、宿泊施設ごとに予算が割り当てられる。予算の割り当ては、全国旅行支援の際の宿泊数をもとに算出される。

旅行会社について注意したいのは、福井県はOTAを「対象外」としていることだ(石川県は未定)。

新潟県・富山県はOTAも対象としているが、激戦も予想される。OTAの予約がとれなかった場合は、飛行機や新幹線などを自分で手配し、それに宿泊施設単独の北陸応援割を組み合わせるなど、次善の策をあらかじめ考えておいたほうがよさそうだ。

いずれにしても北流応援割のルールなどについては各県の公式サイトで確認を済ませ、個別の宿泊施設への問い合わせは極力避けたい。

(橋賀 秀紀 : トラベルジャーナリスト)