『春になったら』ストーリーが遅々として進まず…木梨憲武の「余命わずかでも元気な病人」演技がさすがに違和感
そろそろストーリーの進展の遅さが気になってきた。2時間程度で完結させる映画か、単発ドラマ向きの題材だったんじゃないだろうか。
とんねるず・木梨憲武と奈緒がダブル主演で、2月12日(月)に第5話が放送された『春になったら』(フジテレビ系)。
3カ月後の春に結婚することを決めた娘・瞳(奈緒)と、がんで余命3カ月と宣告されている父・雅彦(木梨)。父娘2人きりの家族が、それぞれ「結婚までにやりたいことリスト」と「死ぬまでにやりたいことリスト」を叶えていくというホームドラマである。
■木梨の病人演技がハイテンションで一本調子すぎる
先週放送の第5話のストーリーを簡単におさらいしておこう。
物語は2月初旬になっており、雅彦は余命2カ月を切っている段階。瞳の男友達・岸(Snow Man 深澤辰哉)が葬儀会社勤めのため、雅彦は岸に葬式を仕切ってもらって明るく見送ってほしいと依頼。それを聞いたひとみは、まだ葬式のことを考えたくないと困惑して怒り出す。
また、瞳の彼氏である一馬(濱田岳)は、シングルファーザーながら売れないピン芸人をしているが、経済力のなさを理由に雅彦から結婚を反対されていた。そのため、芸人引退を決意して塾講師として正社員になるも、瞳はその決断に複雑な気持ちになる。さらに、幼い息子が家出してしまうエピソードも描かれた。
相変わらず奈緒は、こういった日常ものの自然体演技が絶品。
木梨の声の大きい頑固な人情オヤジも味があっていい……と思っていたが、第5話まで観るとさすがに木梨の演技が一本調子すぎやしないか? と引っかかるようになってきた。
第1話、2話のころは、がんで余命わずかでも元気な病人というのは、一周まわってリアリティがあるようにも感じていた。それに、序盤から中盤で徐々に弱っていくように演じ、終盤でかなり生気が衰えた姿を見せるという、グラデーションで表現する演技プランだと思っていたので、序盤の元気な病人像も受け入れられた。
けれど、第5話になっても木梨のテンションは第1話のころとほとんど変わっておらず、雅彦はまだまだ生気がみなぎっている。
第3話では、突然激しい痛みに襲われて倒れるシーンがあったし、第5話でも吐血して苦しむシーンがあったので、体は内側からどんどん病にむしばまれていっているのだろう。雅彦の性格的に、人目があるときは心配かけまいとカラ元気を出しているのもわかる。
ただ、それらを踏まえても、やはり引っかかる。人前での雅彦の振る舞いがとてもエネルギッシュで、つらいのに無理して気丈に明るく振る舞っているという印象はあまり受けない。普通にハツラツとしすぎているのだ。
2時間程度の作品ならば、木梨のこの演じ方も気にならず、むしろ名演技と絶賛したまま終われたかもしれないが、中盤回の第5話になっても変わらぬハイテンションの病人像を見せられると、違和感が出てきてしまう。
■途中回を観なくても話についていける遅々とした物語
ストーリー自体も、このテーマで1クール引っ張るのに無理があったのではないかと思ってしまう。好意的に解釈すれば、主要キャラたちの心の機微を丁寧に繊細に描いていると言えるのだが、あまりに展開が遅すぎるのである。
仮に第1話から一気に飛んで第5話を観たとしても、話についていけないことはないだろう。もちろん第2、3、4話もそれぞれに盛り上がる展開や涙腺を刺激されるシーンはあったが、話の大筋は第1話から変わっていないからだ。
雅彦は相変わらず結婚に反対しているし、瞳はいったん結婚をやめるかで悩んでいるし、男友達・岸は瞳への恋心を胸に秘めて隠しているまま。
第1話を観たときは、父との別れという切ないエンディングに向かって進むストーリーで、父親役の木梨の明るい演技が絶妙で名作になる予感がしていたのだが……。
世帯平均視聴率(ビデオリサーチ調べ/関東地区)は第1話7.2%、第2話5.8%、第3話5.8%、第4話5.5%、第5話5.4%と推移。第2話で5%台まで落ちてしまったものの、そこからは微減しつつも安定している。
今夜放送の第6話以降、この5%台の固定ファンに飽きられずに、最後までついてきてもらえるかどうかも注目だ。
堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』にて恋愛コラムを連載中。ほかに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿