脂肪肝の人は「ウコン」を飲んではいけない…ウコンが「肝臓にダメージを与える最悪サプリ」である理由
※本稿は、鈴木素邦『その一錠があなたの寿命を縮める 薬の裏側』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
■サプリメントは病気を治すためのものではない
健康食品(サプリメント含む)は、健康な人が食べたり飲んだりすることで、健康維持につなげる目的で作られたものであり、病気を治すために作られたものではありません。
病気になった人向けのサプリメントも一部にはありますが、基本的には「食品」と考えたほうがよいと思います。
図表1は食品と医薬品を区分したものです。
健康食品の中にもいろいろな種類があります。
■「トクホ」と「機能性表示食品」の違い
・特別用途食品
乳幼児の粉ミルクなど特別な用途に使う食品のことです。
・特定保健用食品
通称「トクホ」と呼ばれている食品です。
商品ごとに国が審査をして、健康に良いことのお墨付きをもらったもので、医薬品ほどではないが、効能効果を書いてよいとされる食品です。
・機能性表示食品
「トクホ」に似ているが、開発した会社の責任のもとで売られる商品であり、国の審査は不要で届出だけでよいもの。普通の食品よりは信頼度が高い。
・栄養機能食品
カルシウム、ビタミンCなど定められた20種類については、決まった書き方で効能効果を表示することができます。例えば「カルシウム」なら、「骨や歯の形成に必要な栄養素です」等と書くことができます。
■サプリメントには強い成分は使えない
薬は、病気の治療や予防に効果があるものですが、サプリメントは食品であり、病気の治療や予防効果はありません。
食品であるサプリメントには、強い成分は使えないようになっていますから、薬のような効果を期待することはできません。
また、一部の病気を除いて、成分を補充することで体の状態がよくなることは、今の医学ではほとんど解明されていないため、効果があるかどうかは疑問がのこります。
■「都合の良いデータ」を作っている
さらに、サプリメントの情報についても考えてみましょう。
サプリメントの情報は、商品開発しているメーカーが実験したデータをもとにしています。先ほど、表でお伝えした「特定保健用食品(いわゆるトクホ)」、「特別用途食品」「栄養機能食品」以外の大部分のサプリメントは国の審査を通ったデータではありません。
その情報がインターネット、YouTuber、テレビなどを通じて発信されています。
伝え方を工夫したり、有名人をうまく使ったり、都合の良い体験談を抜き出したりしたもので、身体に有効であるのか、否かのデータから離れていることも多いように思います。
科学的な論文でも、ある程度都合の良いデータを作ることもできます。もちろん、まじめにやっているメーカーが多いとは思いますが、どのメーカーがそうなのか、薬剤師であっても、判断するのは簡単ではありません。
サプリメントを使っていることで体の調子がよくなる人がいるのも事実ですから、私も勉強し続けなければならない分野だと思っています。
ただ、本当に効くのか? と思うようなサプリメントも売られています。
サプリメントと薬の飲み合わせで問題が出てしまうこともありますので、病院や薬局では、必ず医師や薬剤師にお伝えください。
サプリメントでの注意や話題の健康食品を説明している一般の方向けのホームページもありますので、気になる方はこちらもご覧ください。
まだまだ、解明されていないことの多いサプリメント。良い働きを示すかもしれませんが、逆かもしれません。少なくとも皆さんは問題に巻き込まれないようにされてください。
■ウコンは本当に効くのか
現在、ウコンの市場規模は300億円とも言われ、とても大きな市場になっています。
ウコンは肝臓を元気にしてくれる、肝機能があがり、二日酔いになりにくくなる、というイメージがあるかと思いますが、果たして本当に、肝臓を元気にしてくれるものなのでしょうか?
ウコンには肝臓の機能を高めるクルクミンという成分が入っています。
この成分は、二日酔いの原因になるアセトアルデヒドの血中濃度を抑えるという報告もあり、二日酔いになりにくい成分として、愛用している人がいると思われます。
■肝障害の約25%はウコンによるもの
しかし、以下の情報もあります。
図表2は少し古いデータですが、日本肝臓学会で発表された「民間薬や健康食品による肝臓へのダメージ(病院でもらった薬以外のものによる薬剤性の肝臓へのダメージ)原因」のグラフです。
円グラフにあるように、ウコンが1番になっています。
もう少し深堀りしてみると、実際に肝臓にダメージを負った人達は、民間薬や健康食品をほとんど毎日使用していて、発症するまでに平均160日を要していました。1度だけウコンを飲んで肝障害になる、というわけではないようです。
■「肝臓にダメージを負っている人」はウコンで悪化する危険性
なお、少し専門的になってしまいますが、健康食品やサプリメント、薬などで起こる肝障害は、肝臓にそもそもダメージがある人になりやすいことがわかっています。
つまり、肝臓に元気がないから、良くするために摂取するのに、悪化してしまう可能性があるのです。
肝臓に病気がある人、ダメージを負っている人が、肝臓を元気にするためにウコンを大量にとるのは、避けてください。
■脂肪肝の人はウコンを避けよう
脂肪肝をご存知でしょうか。日本における推定患者数は3000万人、日本人の3人から4人に1人が罹っているという国民病です。
脂肪肝をお持ちの方は、自覚症状がなくても肝臓にダメージを負っていると認識して、ウコンを避けるのが賢明でしょう。
肝臓が健康な人が、ドラッグストアなどで買えるウコンのドリンク剤をたまに飲む程度であれば、おそらく心配無用です。
また、ウコンによる肝障害の割合が多いのは、ウコンの市場が大きいため、たくさんの方が使っているためとも考えられます。ウコンだけを過度に心配しなくて良いかと思います。
ウコンを摂取するにあたっては、以下の3点を参考にしてください。
・「高濃度ウコンを連続的に摂るのはよくない」
・「脂肪肝など肝臓に病気がある人は、避けたほうがよい」
・「単発で少量摂取は、恐らく問題ない」
正しい用量で摂取する必要があるでしょう。
■健康食品の情報は不足している
国のワーキンググループでは、健康食品の健康被害には大きく3つの要因が関わっていると分析しています。
第1が情報不足の問題です。
不確かな情報が氾濫(はんらん)する一方、確実な情報源が確立されていません。
第2は消費者の問題です。
健康食品はどんな量でも健康に良いと安易に考えている人が多過ぎます。もちろん、健康食品を作っているメーカーが、広告でイメージ付けしているのも問題とは思いますが、それにしても多量、高頻度、長期間に摂取する人が多いのです。
また、健康食品を摂取する人の体質も均一ではありません。
処方薬のように、医師や薬剤師が用法・用量をその人に合わせて、正しく調整してくれるのであれば問題はないでしょう。
■知識や経験が不足しているメーカーも少なくない
しかし、健康食品の場合、それぞれの体質に合わせて調整してくれる人はいません。病気の人や高齢者、乳幼児、妊婦、アレルギー体質など、摂取している人の体質を考慮されていないところは問題です。
また、健康食品が好きな人は、複数の健康食品やサプリメントを同時に摂取していることが少なくありません。
これも、飲み合わせが悪ければ、思わぬ副作用が起きることになります。
第3の問題は、メーカーの問題です。
健康食品の業界は異業種からの参入も多いため、成分についての知識や経験が少ないのに、健康食品を製造している場合も少なくありません。
さらに、製造環境も劣悪な場合があります。
そうした製造プロセスでつくられた健康食品を摂取して、健康被害が起きるのは当然と言えます。
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鈴木 素邦(すずき・そほう)
薬剤師、経営学修士(MBA)
1980年生まれ、千葉県出身。東京大学、慶應義塾大学など32大学の教壇に立ち、3万人以上の薬剤師を世に送り出す。また、武田薬品工業、ファイザー製薬など大手製薬企業20社以上から研修依頼なども受け、論理的でありながらユーモラスな講義で人気を集める。祖父が創業した不動産管理会社の3代目社長として、薬局経営を指導している。著書に『その一錠があなたの寿命を縮める 薬の裏側』(総合法令出版)がある。
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(薬剤師、経営学修士(MBA) 鈴木 素邦)