米9月FOMC議事録:金利据え置きの決定は前回より楽にできた
CBS MarketWatchによると、米FRB(連邦準備制度理事会)は11日、先月20日のFOMC(連邦公開市場委員会)で行われた議論の要旨をまとめた議事録を公表した。議事録では、複数の委員が、前回(8月8日)のFOMC会合で2年ぶりに利上げを見送る決定をしたものの、「Close Call」(五分五分のきわどい判断)だったのに比べて、今回の2度目の金利据え置きの決定は、容易だったと指摘していることが分かった。その根拠について、議事録では「複数の委員は、最近のエネルギー価格の大幅な低下や経済活動の緩慢な動き、コアインフレ率(値動きの激しいエネルギーと食品を除いたインフレ率)がやや減速していることから、インフレの先行き見通しがやや改善したためだ」としている。
また、議事録では、米国の景気見通しについて、「景気の先行きの見通しが不透明なことから、景気が予想以上に悪化する可能性は完全には否定できない」としているが、「複数の委員は、エネルギー価格は依然として高水準で、他の国際市況商品の価格や設備稼働率、単位当たり労働コストが上昇する傾向にあり、インフレが期待通りに低下しないリスクがかなりある」と景気リスクよりもインフレリスクに重点を置き、FOMC会合後に発表される声明文に、将来の追加利上げの可能性を盛り込むよう主張していたことが分かった。
この議事録の公表を受けて、米債券市場では、景気の減速が行き過ぎてFRBは早期に利下げに転じるとの思惑が広がっていたが、「FRBは利下げを急いでいないようだ」(MFRのジョシュ・シャピロ主任エコノミスト)という金利据え置きは継続されるとの見方が支配的になり、債券は下落した。長期金利の指標である10年国債は、前日比6/32ポイント下落し、価格と反対方向に動く利回りは前日の4.76%から4.78%に上昇した。
RBSグリニッジ・キャピタルのスティーブ・スタンレー主任エコノミストは、「FRBの(インフレに関する)標準シナリオは、下期の米経済の成長次第だろう。もし、経済成長がトレンド(潜在成長率)以下になれば、コアインフレは(FRBの予想通り)緩やかに低下するので、FRBは金利を据え置きやすくなる。もし、トレンド並みかトレンド以上になれば、コアインフレは減速しないので、利上げが再開されるだろう」と述べた。また、同氏は、第3のシナリオとして、「経済成長が住宅市場の急落で、大きく減速する場合には利下げに転じる」とした。
また、FRBは、議事録の中で、潜在成長率を引き下げたことを明らかにした。具体的な数値は明らかにしていないが、米CBO(議会予算事務局)は潜在成長率を3.25%と推定している。その中で、FRBは、米経済は今年下期に減速し、来年以降からゆっくりと成長率が持ち直し、2008年までに潜在成長率に戻ると予想。インフレ率については、経済成長の減速とエネルギー価格の低下で、今年下期から来年にかけてやや低下するとしている。
9月のFOMC会合では、ベン・バーナンキFRB議長を始めとする多くの委員の支持を得て、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を5.25%のまま据え置かれたが、議事録では、前回に続いて、12人の委員のうち、リッチモンド地区連銀のジェフリー・ラッカー総裁ただ一人が、「今年上期の賃金と単位当たり労働コストは上昇しており、インフレ上昇リスクがある」とし、「コアインフレ率を引き下げるほど経済は減速しない可能性がある」との立場から利上げを求めたとしている。【了】
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この議事録の公表を受けて、米債券市場では、景気の減速が行き過ぎてFRBは早期に利下げに転じるとの思惑が広がっていたが、「FRBは利下げを急いでいないようだ」(MFRのジョシュ・シャピロ主任エコノミスト)という金利据え置きは継続されるとの見方が支配的になり、債券は下落した。長期金利の指標である10年国債は、前日比6/32ポイント下落し、価格と反対方向に動く利回りは前日の4.76%から4.78%に上昇した。
RBSグリニッジ・キャピタルのスティーブ・スタンレー主任エコノミストは、「FRBの(インフレに関する)標準シナリオは、下期の米経済の成長次第だろう。もし、経済成長がトレンド(潜在成長率)以下になれば、コアインフレは(FRBの予想通り)緩やかに低下するので、FRBは金利を据え置きやすくなる。もし、トレンド並みかトレンド以上になれば、コアインフレは減速しないので、利上げが再開されるだろう」と述べた。また、同氏は、第3のシナリオとして、「経済成長が住宅市場の急落で、大きく減速する場合には利下げに転じる」とした。
また、FRBは、議事録の中で、潜在成長率を引き下げたことを明らかにした。具体的な数値は明らかにしていないが、米CBO(議会予算事務局)は潜在成長率を3.25%と推定している。その中で、FRBは、米経済は今年下期に減速し、来年以降からゆっくりと成長率が持ち直し、2008年までに潜在成長率に戻ると予想。インフレ率については、経済成長の減速とエネルギー価格の低下で、今年下期から来年にかけてやや低下するとしている。
9月のFOMC会合では、ベン・バーナンキFRB議長を始めとする多くの委員の支持を得て、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を5.25%のまま据え置かれたが、議事録では、前回に続いて、12人の委員のうち、リッチモンド地区連銀のジェフリー・ラッカー総裁ただ一人が、「今年上期の賃金と単位当たり労働コストは上昇しており、インフレ上昇リスクがある」とし、「コアインフレ率を引き下げるほど経済は減速しない可能性がある」との立場から利上げを求めたとしている。【了】
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