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高齢者が要介護状態になったら、自宅で生活するため家の改修が必要になることもあります。その場合、経済的負担を軽くするための公的支援の制度があります。介護ジャーナリストの小山朝子氏の著書『ひとり暮らしでも大丈夫! 自分で自分の介護をする本』(河出書房新社)から一部抜粋してご紹介します。

介護状態になっても「家の改修」で不便のない生活を実現する

体が不自由になっても、住まいを「改修」することで暮らしやすくなることがあります。特に、ひとり暮らしの場合は、室内の事故を減らすための対策として、必要に応じて検討するとよいでしょう。

そうはいっても費用の負担が気になるところです。そこで、介護保険では一生涯で上限20万円まで、工事費用の7割〜9割が給付されます。一度の工事で上限額を超えなかった場合には、数回に分けて利用することもできます。

対象となる工事の種類は以下の通りです([図表1]参照)。

1. 廊下や階段、浴室への手すりの取り付け

2. 段差解消のためのスロープなどの設置、敷居撤去など

3. 転倒防止、移動を円滑にするための床材の変更

4. 扉の引き戸などへの取り替え

5. 洋式などへの便器の取り替え

6. 上記1〜5の住宅改修に付帯して必要となる工事

[図表1]介護保険でできる住宅改修の種類

すでに訪問看護や訪問リハビリといった介護サービスを利用している場合は、看護師や理学療法士などにアドバイスをもらうとよいでしょう。住宅改修を依頼する事業者は介護保険を利用した住宅改修の実績がある事業者に依頼すると安心です。

福祉用具のレンタルで改修工事が不要になることも

自宅を改修しなくても、介護保険の「福祉用具貸与(レンタル)」のサービスを利用するという方法があります。福祉用具とは、心身の機能が低下した要介護者の生活を補助したり、機能訓練(リハビリテーション)をするための用具のことです。

介護保険には要介護度によって定められた支給限度額があることは先に書きました。福祉用具のレンタルもほかのサービスの利用と合わせて支給限度額の範囲内であれば1〜3割の負担で借りることができます。

筆者が在宅で祖母を介護をしていた頃、祖母が車いすに乗ったまま外出できるよう、縁側にスロープ(傾斜の通路)を設置する工事を行うことを検討しました。しかし、結局工事はせず、折り畳み式のスロープを介護保険でレンタルすることにしました。

折り畳み式であれば、必要なときに取り出して使えるため、家族はこれまでの環境で生活することができました。

画家だった私の祖母は、天板に凹型のカーブがあるリハビリテーブルをレンタルし、車いすで絵を描いていました。ただし、要支援1・2、要介護1と認定された人は車いすなどの福祉用具は原則としてレンタルすることができないので確認しておきましょう。

[図表2]介護保険でレンタルできる福祉用具

福祉用具によっては「購入費用」の助成を受けられる

介護保険で借りられる福祉用具があることを前項で書きましたが、福祉用具のなかには、他の人が使用した後で再利用することに抵抗を感じる品目もあります。

具体的には排泄に関するもの、入浴に関するものなどです。このようなレンタルになじまない福祉用具を1〜3割の負担で購入できるのが「特定福祉用具販売」です。特定福祉用具販売は1年度につき10万円を上限額として1〜3割の負担で購入することができます([図表3]参照)。

[図表3]特定福祉用具販売の対象となる福祉用具

筆者が祖母を介護していた際、この「特定福祉用具販売」を利用したことがあります。

祖母は自力で入浴することができず、専用の浴槽を使って看護師などが入浴の介助をしてくれる「訪問入浴」のサービスを利用していました。しかし、このサービスは毎日利用することはできませんでした。そこで、「特定福祉用具販売」を利用して、「シャワーチェア」と呼ばれる入浴用車いすを購入しました。

ベッドからシャワーチェアに移乗し、そのまま浴室でシャワーを浴びることができ、夏場汗をかきやすい時期などはとくに役に立ちました。

ひとり暮らしで入浴が困難になった場合でも、シャワーチェアのような福祉用具があれば、看護師やヘルパーの介助でシャワーを浴びることも可能になります。

小山 朝子

介護ジャーナリスト・介護福祉士