ネイマールに早くも大ブーイング サウジよりセレソン優先、監督との確執説、故郷のクラブ買収の噂...
ネイマールがまたやらかし始めた。
ネイマールが大金でサウジアラビアのアル・ヒラルに移籍したのは世界中が知るところだ。8月に行なわれたサポーターへのお披露目では、2時間前からスタジアムが満杯に。無数のドローンを使って夜空にネイマールのプロフィールと顔を描くという大掛かりな仕掛けからも、人々の期待の大きさをうかがえた。
だが、サウジアラビアに渡っても、ネイマールは試合どころか練習にも参加しない。移籍してから4試合はベンチにも入らなかった。その理由を監督のジョルジュ・ジェズスは筋肉のケガであると言い、ネイマールのデビューを待ちわびるメディアにこう説明した。
「彼は疑いなく最高の選手だ。ただ彼はいくつかのケガがある状態でここに来た。しばらくはチームとともに練習できないし、デビューも見通しが立たない」
ネイマールは練習に参加しないまま9月を迎える。ところがここで、チームも監督もサポーターをも困惑させるような知らせが舞い込んできた。ネイマールが9月のW杯予選を戦うブラジル代表のメンバーに招集されたというのだ。
「なんで彼がセレソンのリストに入っているのか、まるでわからない。彼はケガを抱えて、まともに練習にも参加していない状態だ。プレーしていなくても、何か義務があって行かなくてはいけないのか?」
監督は記者会見で苦言を呈した。
ふたを開けてみると、ネイマールはベンチ要員どころか、代表戦2試合にフル出場。2ゴール2アシストを決め、ペレとタイだった代表通算ゴール数を79に伸ばし、歴代最多ゴールの記録を打ち立てる活躍ぶりだった。
世界はこの快挙を報道したが、サウジアラビアでの受け止め方は複雑だった。ネイマールはケガをしていたのではないか? 練習さえできない状態だったのではないのか? それとも誰かがウソをついていたのか? 監督も不満、チーム幹部も不満、そしてサポーターも不満だった。
アジアチャンピオンズリーグ、ナフバホール戦に登場したネイマール(アル・ヒラル) photo by Reuters/AFLO
代表戦から帰って来たネイマールは、リーグ戦第6節アル・リヤド戦でサウジアラビアでのデビューを果たしたが、これもベンチからのスタートだった。その後、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)のナフバホール(ウズベキスタン)戦とリーグ戦のダマク戦ではフル出場したものの、ゴールはなし。ダマク戦では、ゴール前でフリーだったにもかかわらずシュートを決めることができず、何度かスタンドからブーイングが聞かれた。
【監督との確執説には反論】
アル・ヒラルを率いるジェズスはポルトガル人。ベンフィカ、スポルティング、フラメンゴ、フェナルバフチェを率いた経験もあるベテランで、フラメンゴ監督時代にはブラジルと南米のすべてのタイトルを勝ち取り、チッチ後のブラジル代表監督の有力候補でもあった(しかしブラジルが煮え切らない態度をしているうちに、アル・ヒラルが彼を手に入れた)。
ただ、キャラの強い人物でもあり、思ったことを率直に口にする傾向がある。ネイマールとこれまで師弟関係になったことはないが、ジェズスがフラメンゴの監督をしていた時代には、ネイマールについて「彼は何が優先事項であるかを考えるべきだ」と発言したことがある。まさに今回、彼の頭にはこの疑問がよぎったかもしれない。
代表への参加に苦言を呈した監督に対し、ネイマールは「しゃべりすぎる」と不満を漏らしていたようだ。スペインのメディア『ディアリオ・スポルト』はACLナフバホール戦の試合後、監督とネイマールがロッカールームで口論をしたとも伝え、ネイマールが監督を変えるようにチームに進言したとの記事を載せた。
ただし、この噂をネイマールは否定。ブラジルのラジオ番組で「メディアは無責任で嘘つき」とぶち上げ、翌日には自身のインスタにも「全部ウソ、こんなことは皆、信じないでほしい。フェイクニュースを流すのはやめろ! リスペクトのかけらもない」とのメッセージを載せた。
ちなみに直近の9月26日に行なわれたサウジアラビア国王杯の対アル・ジャバライン戦ではネイマールはプレーしなかった。その理由を監督との不仲に求める者もいるが、監督自身は「ネイマールのケガはいまだ完治しておらず、休ませる必要があった」と説明している。この発言はネイマールをプレーさせたブラジルサッカー連盟も、暗に非難するものだろう。しかし連盟は10月のW杯南米予選にもネイマールを招集する予定だと発表している。
このように、サウジアラビアに行ってもネイマールの周辺は相変わらず落ち着かない。監督との諍(いさか)いについては、真偽のほどはわからないにしても、そういう噂が出てくること自体、何かがうまくいっていない証拠だ。
【サントスFC買収の噂も】
ネイマールのアル・ヒラルでのパフォーマンスは、出場試合数やゴール、アシスト、パスの数、すべてにおいて低調だ。サントス、バルセロナ、パリ・サンジェルマンでのスタート時期よりも大きく劣る。チームは2位につけているが、それは決してネイマールのおかげではない。今シーズン、ゼニトから移籍してきたブラジルのマルコムをはじめとしたチームメイトが多くのゴールを決めているからだし、これまでの対戦相手も、決して強いチームはない。
デビュー戦でゴールを挙げると、ほぼ毎試合得点を決め、すでに10ゴール以上をインテル・マイアミに捧げているメッシとは大きな差ができてしまった。
ここにきて、こんな噂も流れている。ネイマールがサウジアラビアに来た真の目的はサントスFCの買収で、アル・ヒラルが払う日給40万ドル(約6000万円)と言われるとてつもない報酬で、サントスのオーナーになろうとしているというのだ。
サントスはネイマールの古巣であり、サッカーの王様ペレだけでなく、ロビーニョ、ロドリゴなど、多くの才能を世に送り出した名門である。ネイマールと彼の父親は、選手としてのキャリアがあと数年で終わることを意識して、ピッチの外での将来設計をすでに練っているのかもしれない。
ネイマールが現在サウジアラビアで得ている超高額年俸を考えれば現実的なプランだし、前例がないわけではない。ネイマールの憧れだったロナウドは2つのクラブを所有している。 スペインのバリャドリードとブラジルのクルゼイロで、クルゼイロは、ロナウド自身がキャリアをスタートさせたクラブだった。
ネイマールの周辺は、相変わらずプレー以外のニュースにこと欠かない。彼は相変わらず台風の目。周囲を巻き込み、騒動を起こし続けている。