オールカマーはラスト1ハロンが速い異例の馬場を味方にできる伏兵の一発に警戒せよ
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
――先週の菊花賞トライアル、GIIセントライト記念に続いて、今週も中山・芝2200mを舞台とした注目のレースが行なわれます。秋の大舞台を目指す古馬たちがしのぎを削るGIIオールカマー(9月24日)です。大西さんは同レースについて、どんな印象をお持ちですか。
大西直宏(以下、大西)僕が現役の頃は、秋のGIに向けた有力馬の始動戦と言えば、GII毎日王冠(東京・芝1800m)やGII京都大賞典(京都・芝2400m)がメインでした。特にGI天皇賞・秋(東京・芝2000m)を目標とする馬にとっては、東京コースでの試走が最適。ステップレースとして毎日王冠を使うのが一般的でした。
また最近では、秋の始動を急ぐ馬、あるいは天皇賞・秋に向けてある程度間隔をあけて臨みたい馬などは、8月に行なわれるGII札幌記念(札幌・芝2000m)をステップレースに使う馬が増えています。
そのため、中山開催で、秋競馬が始まったばかりのこの時期に行なわれるオールカマーには、トップクラスの馬たちの参戦が少なく、上がり馬や夏場のレースで結果を残してきた馬が集まる、といった印象が強いです。
そうしたなか、ここ数年はエリザベス女王杯(京都・芝2200m)を目指す牝馬がオールカマーをステップレースとして選択するケースが増えている気がします。近年、牝馬が好成績を収めているのは、そうした背景があるのかもしれませんね。
――ところで、現在の中山・芝コースではラスト1ハロンのタイムが速い競馬が続いています。3日間開催となった先週も、ほとんどの芝レースがそうでした。
大西 中山・芝コースは最後の直線の急坂が特徴的で、通常はラスト1ハロンでの失速が起こりやすいコースです。しかし今回の開催では、確かにラスト1ハロンでも速い時計が計測される、異例の現象が見られています。
その理由としては、9月に入っても真夏のような暑さが続いていることで馬場状態が非常に良好、という点が挙げられるのではないでしょうか。
道中、それなりにペースが流れていても、馬の負担は数字よりも少なく、最後の直線にも余力を持って迎えられるのかもしれません。それゆえ、ラストの時計がかかる消耗戦に強い馬ではなく、キレ味鋭いタイプが有利な状況が続いているのでしょう。
――そうした馬場状況も踏まえつつ、今回のオールカマーはどのような展開になると予想されますか。
大西 レースの主導権を握るであろうタイトルホルダー(牡5歳)の出方がカギを握っていることは間違いありません。後続を引きつけて逃げるのか。それとも、後続を引き離して均一の速いラップを刻むのか。同馬の走り次第で、レースの流れは大きく変わると思います。
前走のGI天皇賞・春(4月30日/京都・芝3200m)では、テンから他馬と競り合う展開となって、リズムを崩して競走中止というアクシンデントに見舞われてしまいました。そんなレースのあとだけに、慎重に乗る可能性も十分に考えられます。
いずれにしても、他の人気を集める馬たちはタイトルホルダーに意識を向けて、早めに圧力をかける乗り方をしてくるのではないでしょうか。
たとえば、ジェラルディーナ(牝5歳)、ガイアフォース(牡4歳)、ローシャムパーク(牡4歳)、ウインマリリン(牝6歳)など。それぞれ、早めの仕掛けで好成績を収めてきた実績もありますから、直線入り口でタイトルホルダーに並びかけて、叩き合いに持ち込む形を想定しているはず。そうなれば、チャンスも膨らみますからね。
――有力馬の動き次第では、もつれる展開もありそうです。そうなった時に、気にかけておきたい穴馬はいますか。
大西 先にも触れていますが、今の中山・芝コースはラスト1ハロンでのキレが求められる状況にあります。そこで注目すべきは、ゼッフィーロ(牡4歳)です。
近4走でメンバー最速の上がりをマークしているように、ディープインパクト産駒らしい決め手のある末脚が武器。まだ重賞勝ちはありませんが、無理のないローテで使われてきて、着実に力をつけてきました。人気的にも有力馬が動いたあとに、ワンテンポ遅らせた仕掛けから一発を狙える立場にあります。
オールカマーでの一発が期待されるゼッフィーロ
また、今回は戸崎圭太騎手が騎乗。戸崎騎手は重賞では積極的に行くような騎乗スタイルを取ることはありませんが、人気のない馬に騎乗する際にはその乗り方がレース展開にハマることがあります。
さらに、同馬の近親にはリアルスティールがおり、そのリアルスティール産駒であるレーベンスティールが先週のセントライト記念を制覇。その結果は追い風になるでしょうし、今の馬場も合っていそうな気がします。
ということで、オールカマーではこのゼッフィーロを「ヒモ穴馬」に指名したいと思います。