F1角田裕毅 独占インタビュー「結果で恩返しをしたい」 日本GP、2024シーズンに向け気合い十分
F1 角田裕毅 インタビュー
今週末(9月22〜24日)に三重・鈴鹿サーキットで開催されるF1の日本GP。アルファタウリの角田裕毅はここ数戦、不運なアクシデントなどが続き、結果に結びつけることができていないが、着実に成長を遂げる姿に、ファンの期待は高まっている。
はたして、2回目の母国GPで角田はどんな走りを見せてくれるのか? そして気になる来季の動向は? 9月17日のシンガポールGP終了直後に話を聞いた。
シンガポールGP後にインタビューに応じたアルファタウリの角田裕毅
【日本GPは今後を占う大事な一戦】
ーーヨーロッパラウンド最終戦の第15戦イタリアGP、続く第16戦のシンガポールGPは両レースとともに予選まで速さがありましたが、結果を残すことはできませんでした。
角田裕毅(以下同) 過去2戦連続でまともにレースをすることができず、本当に残念です。イタリアでは、スタート前のフォーメーションラップでパワーユニット(PU)にトラブルが出てスタートできず、シンガポールでは1周目に接触されてリタイアに終わってしまいました。今年は、クルマの調子がよく入賞できそうなチャンスがある時に限って、レースを落としてしまっているので、とても悔しいです。
ーーシンガポールGPでは大きなアップグレードが投入され、マシンが確実に速くなっているように見えます。いい形で母国GPに臨めるのではないですか?
そこは正直言ってわかりません。シンガポールGPの舞台となったマリーナベイ市街地コースと、鈴鹿サーキットは特性が大きく異なります。シンガポールでよかったから鈴鹿でも速いとは必ずしも言えません。
でもマリーナベイと鈴鹿の両方で速かったら、他のサーキットでも通用するはず。日本GPは僕自身にとって母国での重要なレースになりますが、アルファタウリの今後を占う意味でも大事な一戦になると思っています。
ーー今年は、角田選手の成長が各所から高く評価されています。自分自身でも何か変わったと感じるところはありますか?
特にありませんが、あえて言うなら、「気合い」ですね。あまり注目されてはいませんでしたが、昨シーズンの後半戦では予選でチームメイトのピエール・ガスリーに勝っていました。でも、決勝ではもっと強くならないといけないということは自分でもわかっていました。
そのために毎戦毎戦、自分の力を100%出しきることを目標にして戦ってきました。前のレースがどんなによくても、いったん気持ちをリセットして、気合いを入れ直してレースに臨むようにしています。その結果、シーズンを通して集中して戦うことができています。もし今年もガスリーとチームメイトだったら、昨年以上にいい勝負ができていたと思います。
ーー今シーズンはニック・デ・フリース、ダニエル・リカルド、リアム・ローソンの3人がチームメイトになっています。第12戦ハンガリーGPから加入したリカルドはどんな印象ですか?
リカルドのクルマのフィードバックは適切ですし、チームに対する言動やスタッフを味方につけるような立ち振る舞いは本当にすごいと感じました。僕が一番学ばなければならないところだなと思います。
たとえば彼がコースに出ている時にミスをすると、落ち着いた態度でチームに無線で謝罪します。でも僕は熱くなってしまって、リカルド選手とは真逆のコメントを言ってしまうこともあります。そこは見習わなければならないところですし、すごくいいお手本になっています。
シンガポールGPは不運な接触によりリタイアに終わった
ーーオランダGPで負傷したリカルドの代役として加入したローソンは2019年にFIA-F3と並行して参戦していたユーロフォーミュラ・オープン(EFO)でチームメイトでした。
彼とは昔から仲がいいので、以前と変わらず友達のように付き合っています。でも以前とはレベルが違うところで戦っていますし、お互いにプロ意識があります。サーキットではプロ同士という感じで仕事に取り組んでいます。
ローソンは、オランダGPでリカルドが負傷して急きょ参戦が決定するという難しい状況でデビューしましたが、きちんとマシンや環境に適応して戦えています。もともと彼は速いドライバーですし、今年のクルマは新しいマシンレギュレーションが導入される以前のクルマとは比較にならないほど乗りやすいんです。そこも大きいと思います。
それにローソンは今年、スーパーフォーミュラに参戦してしっかりとパフォーマンスを発揮しているので、彼の活躍には驚いていません。
ーー2024年シーズンの動向がまだ発表されずにファンの皆さんもヤキモキしていると思います。現在の状況を言える範囲で教えてくれませんか?
僕の希望はありますが、最終的にはレッドブルとホンダ次第という状況にあります。でも今シーズンは今までとは違う感触や印象をレッドブルの首脳陣が持ってくれたと思っていますので、シートを失う理由はないと感じています。
だから来年に関しては、あまり心配していません。とにかく今は自分のパフォーマンスを上げることだけに集中しています。
ーー海外ではレッドブルのリザーブドライバーの可能性を報道しているところもあります。
リザーブドライバーよりは、このままアルファタウリでしっかりと1年間戦いたいという気持ちを強く持っています。
ーー2026年からホンダが正式に復帰しますのが、ホンダに対してはどんな思いを持っていますか?
そもそもホンダさんがいなかったら、僕が今、F1ドライバーとしてここにいることはありません。きっとヨーロッパのF3やF2の舞台にすら立てていなかったと思います。僕のキャリアを形成するうえで、父のサポートもかなりの大きかったですが、7〜8割を占めているのがホンダさんです。特にフォーミュラにステップアップしてからは金銭的な部分を含め、さまざまなサポートが必要となってきます。
ホンダさんがこれまで僕を毎年、適切なタイミングで適切なカテゴリーに送り出してくれ、F1まで導いてくれました。本当に感謝しています。だからこそ、僕は言葉じゃなく結果で恩返しをしたいんです。
自分の走りを成長させて、最終的にはこれまでのサポートに報いるだけの大きな結果を出したい。そこまでの道のりはまだまだ長いですが、一歩ずつ成長して、サポートしてよかったと思える選手になれるように努力を続けたいです。
ーーさて2回目の母国GPとなりますが、ファンの皆さんの前でどんな走りを見せたいですか?
いつもテレビの前で応援してくれているファンの方はもちろんのこと、海外のサーキットにまで足を運んでくれている方もいます。今年はこれまで開催された全サーキットで日本の国旗を持って応援に来てくれるファンの方がいました。そういったファンの皆さんのためにも力強い走りを披露したいです。
応援していてよかったと思える走りをしたいし、僕個人としても鈴鹿を走るのはすごくワクワクしています。ひとりのドライバーとして純粋にレースを楽しみ、もちろん日本のファンの皆さんの前で絶対にポイントをとりたいです!
川原田 剛/編集協力
【プロフィール】
角田裕毅 つのだ・ゆうき
2000年、神奈川県生まれ。18人目の日本人F1ドライバー。2020年、レッドブル・ジュニアチームの一員としてFIA F2選手権に出場し、優勝3回、ポールポジション4回、表彰台4回の活躍を見せ総合3位に入る。2021年、アルファタウリからF1参戦。その開幕戦では日本人F1ドライバーとして初のデビュー戦での入賞を記録。ランキング14位でデビューシーズンを終える。2022年は、ランキング17位。2023年でF13年目を迎えている。