大黒将志が選ぶJリーグ歴代すごかったFWトップ10「サッカーセンスが抜群」「誰にも止められなかった」ストライカーとは
Jリーグ通算177ゴール。ガンバ大阪をはじめ所属した各クラブで得点しまくり、日本代表でも活躍したストライカー、大黒将志さんにインタビュー。同じFWのポジションですごいと思った歴代のJリーガーを、トップ10形式で挙げてもらった。
後編「大黒将志が振り返るJリーグでスゴイと思ったDFトップ10」>>
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日本代表でも活躍した大黒将志さんがJリーグ歴代のすごいと思ったFWたちを選んだ
10位 柳沢敦(元鹿島アントラーズ、京都サンガF.C.、ベガルタ仙台ほか)
ヤナギさんはスピードがあって、テクニックもあって、動き方もうまくて、いいストライカーでした。なにより人間性が面白くて、仲良くさせてもらっています。
最近は、先日やっていたU−17日本代表の合宿に(ゲストコーチとして)行かせてもらった時に、最終調整で鹿島ユースが試合の相手をしてくれたんですよ。鹿島ユースはヤナギさんが監督をしているんですけど、すごく協力的に森山佳郎監督の要求に応えていて、めちゃくちゃいい人でした。
もちろん、選手として尊敬しているし、ボール扱いの丁寧さとかは本当に勉強させてもらいました。だから当時、あのQBKだけで批判されるのは僕も腹が立ったんですけど、ヤナギさんは素直だから聞かれたら「急にボールが来た」とか答えてしまうんですよね。そんないい人で面白い人なので、トップ10に入れさせてください。
9位 高原直泰(沖縄SV)
高原さんが9位というのは申し訳ないですね(笑)。めちゃくちゃ万能で、トラップ、パス、シュート、どの技術を取っても質が高くて、なんでもできるストライカーでした。スピードもあって、しなやかさもあって本当に尊敬している選手です。
アルゼンチンのボカ・ジュニアーズに移籍した時は、「この人はすごいな」と思いましたね。みんながヨーロッパの移籍を目指しているなかで、アルゼンチンという選択肢は思いもしなかった。「南米に行こうなんて、どんだけたくましいねん」と思っていました。
年齢は1個上で近いんですけど、いろいろ参考にさせてもらっていました。ポストプレーは丁寧にされていたし、ゴール前への入り方もうまかった。あと左右両足どちらでもシュートがうまくて、そういう選手は少ないんですよ。だから自分もできるようにと思っていましたね。いつも勉強させてもらえる存在でした。
【偉大なストライカー】8位 中山雅史(元ジュビロ磐田、コンサドーレ札幌、アスルクラロ沼津)
ゴンさんが8位というのもちょっと申し訳ないんですけど、すごく尊敬しているストライカーです。みんなはゴンさんを魂の塊みたいに言うんですけど、僕はゴンさんの動き出しとか、シュート技術がすごく好きでした。
僕がプロ1年目の頃はジュビロ磐田の黄金期で、初めて対戦した時は「絶対こんなの勝たれへんやん!」「強すぎる!」「なにこの罰ゲームみたいな試合!」とか思ってやっていました(笑)。
そんななかでゴンさんは、もともと得点感覚はあったと思うんですけど、年々進化されていったんですよ。それでさらに覚醒したというか、1998年に4試合連続ハットトリックを記録して、シーズン36得点は本当にすごい記録だと思います。
サッカーにあまり詳しくない人は、ストライカーが決めたゴールを「たまたまいいところにいて」とか「ボールがこぼれてきて」とか、そう思うかもしれないけど、そうじゃない。
ちゃんと逆算してその場にいるわけです。そのすごさがもっとわかってもらえるようになると、ゴンさんの偉大さがよりわかってもらえるようになると思います。
7位 アラウージョ(元ガンバ大阪、清水エスパルスほか)
アラウージョは2005年に1年間だけ一緒にプレーしましたけど、シュートがうまくていい選手でしたね。加入間もないキャンプの時とか、シーズンの最初の頃はなんか遠慮していたんですよ。
だから「パスばっかりしないで、もっとシュート打っていいよ! 俺もまずシュートを狙って、シュートできない時にパスするようにしてるからお前もそうしろ」と言ったんです。そうしたらシュートばっかり打つようになって、全然パスしないようになったんですよ(笑)。でもバンバン点を取るようにもなって、33得点で得点王にもなりましたし、チームも優勝できましたからね。
一度、彼が無人のゴールに流し込んで、僕も走り込んでいてそのボールに触れたんですけど、彼のゴールを守ろうと思って触らなかったんですよ。二人の関係が悪いとそこで触っちゃうと思うんですけど、いい関係だったので瞬間的に彼のゴールにしようと思えました。
そうやって彼とは本当にいい関係で、彼がフリーだったら僕はパスをしたし、僕がフリーの時はパスをくれる関係でした。FWとしてお互いをわかり合えていたというか、すごくやりやすかったですね。
【サッカーセンスが抜群】6位 大久保嘉人(元セレッソ大阪、ヴィッセル神戸、川崎フロンターレほか)
嘉人はコントロールもうまいし、シュートもうまい。サッカーセンスが抜群なんですよ。一緒にサッカーをやったことがある人はわかると思うんですけど、味方がやってほしいプレーを確実にできるし、周りを使うプレーもできる。相手を見て判断を柔軟に変えることもできて、本当にサッカーIQが高い選手ですね。
川崎フロンターレに行って、優れたパサーがたくさんいたので嘉人が使われる側になり、才能をめちゃくちゃ発揮できたと思うんです。それまではどちらかというと味方の選手を使う側だったんで。
嘉人は能力が高いから、川崎以前のクラブではいろんなことをやっていたんです。個人的にそれがもったいないと思っていました。でも川崎では前にポジションを取って、ほかのことに力を使わずに点を取るプレーに集中できたのがゴール量産につながっていたと思いますね。だから3年連続得点王を取っても、全然不思議ではなかったです。
5位 興梠慎三(浦和レッズ)
興梠はすごく好きな選手ですね。昔、日本代表のベストイレブンを選ぶ企画があった時に、嘉人とツートップに選んだこともありました。前線でボールを収めるのがうまいし、パスを呼び込む動き出しとか、DFとの駆け引きとか、そういうところもすごくうまいので本当にいい選手だと思います。
対戦した時も、動きとか足元のテクニックとかがすごく柔らかいし、彼のところでよく起点を作られました。マリノス時代にマルキーニョス(※Jリーグ7クラブでプレーした外国籍選手最多得点者)と一緒にプレーしたことがあって、彼も興梠はめちゃくちゃうまいと評価していて、そういう一流の選手にも認められる選手ですよね。まだまだ頑張ってほしいなと、個人的にも応援しています。
4位 久保竜彦(元サンフレッチェ広島、横浜F・マリノス、横浜FCほか)
身体能力とか、柔らかさとかがアフリカ人みたいで、日本人選手のなかではちょっと飛び抜けた存在でしたね。だから僕もちょっとこの人のプレーはマネできないなと思っていました。
もちろん、テクニックのレベルもめちゃくちゃ高い。身体能力がいくら高くても技術が伴っていないと役に立たないですからね。無理な体勢からのゴールを決めることが多かったですけど、身体能力とテクニックがあったからこそできたのだと思います。
プレーもさることながら、キャラクターも本当に面白い人なんですよ。マリノス時代に聞いた話ですが、久保さんが家からマリノスタウンまで車まで来る時に、サイドブレーキを引いたまま走っていて、高速道路で煙が出ているのに気がついて止まったとか。プレーぶりもキャラクターもワールドクラスでした。
最近はチャリティーマッチで一緒にやらせてもらうことがあるんですけど、久保さんとツートップを組ませてもらった時に、あんまり動かずにしんどうそうだったので僕が代わりに動いたり、守備をしてあげたり。そうするくらい尊敬しています(笑)。
【憧れ&目標にしていたストライカー】3位 三浦知良(オリヴェイレンセ)
カズさんは小学生の頃から一番憧れていて、横浜FC時代は半年間チームメイトとしてプレーさせてもらいました。プレーヤーとしてはもちろん、人間性もすばらしい人でした。僕がPKを外した時に「次も絶対に蹴らなきゃダメだよ」ってわざわざ言いに来てくれたこともありましたね。
家が近所だったので家にも呼んでもらえて、ケガをした時はカズさんのトレーナーの方に診ていただいたり、いろいろと面倒を見てもらいました。
チームメイトとしてのカズさんはすごく謙虚なんです。僕なんかからも「オグリ、あのフリーになる動きどうやってるの?」って聞いてこられるんですよね。カズさんが僕に聞くなんて、僕からしたら信じられない感じですよ。
でもその貪欲さ、絶えない向上心というのは、本当にプロフェッショナルだなと思いました。休みの日に遊びに行こうと思って、近所のコンビニに寄ったらカズさんに会ったんです。ウェア姿だったんで「カズさんどうしたんですか?」と聞いたら「これから筋トレやるんだよ」と言うんですよ。それくらいプロ意識が高く、ずっとやっておられるんですよね。
今はポルトガルのクラブでプレーされていますが、いまだに試合に出られないと悔しいみたいで、その情熱とかモチベーションを持ち続けられるのもすごいと思います。サッカーに対する情熱は、10代の頃となんにも変わってないんでしょうね。本当に選手としても、人としても、ずっと憧れの人です。
2位 小島宏美(元ガンバ大阪、ヴィッセル神戸、FC岐阜ほか)
僕がガンバに入った当初の先輩で、本当に天才でした。当時のガンバは弱かったんですけど、その頃に一人で17点入れていたんですよ。なにもないところから一人でチャンスを作り出して、ゴールを決めちゃうんです。
足がめちゃくちゃ速かったし、ボールコントロールも抜群で、サッカーがとにかくうまかった。でもサッカー以外の私生活がテキトーな人だったんですよ(笑)。それでも17点も取れるなんて天才だなと。ユースの時代からプロのストライカーはすごいなと思っていて、コジさんの17点は当時ずっと目標にしていました。
しかもPKの得点なしで17点ですからね。弱かった頃のガンバでそれはホンマにすごかった。だから僕も2004年にPKなしで20点取った時は、PKなしでコジさんの得点数を超えることにすごくこだわっていました。
【誰も止められなった】1位 エメルソン(元コンサドーレ札幌、川崎フロンターレ、浦和レッズほか)
もう絶好調の時は誰も止められなくて、とんでもなかったです。コンサドーレ札幌や川崎フロンターレでもプレーしていましたが、やっぱり浦和レッズでの印象が強いですよね。
彼は爆発的なスピードが武器でしたが、スピードだけの選手は大したことないんですよ。彼はスピードに加えて、テクニックもものすごく高かった。とくにボールタッチが抜群で、あれだけのトップスピードのなかで思ったところにしっかりとボールをコントロールできるから、DFは止められないんですよ。ガンバ時代は対峙するツネさん(宮本恒靖)とかは、いつも可哀想だなと思っていましたね。
あれだけの能力があったので、セレソンにも選ばれていてもおかしくなかったと思います。僕はブラジル代表のロビーニョとかロナウジーニョとも対戦したことがあるんですけど、エメルソンもかなりすごいと思いました。
そんな選手がJリーグでプレーしたわけなので、それは飛び抜けた存在でしたよね。
大黒将志
おおぐろ・まさし/1980年5月4日生まれ。大阪府豊中市出身。ジュニア時代からガンバ大阪の育成組織でプレーし、1999年にトップチームに昇格。ストライカーとして頭角を現し、2004年は得点ランク2位の20ゴール(日本人最高)、2005年はJ1初優勝に貢献。同年は日本代表のW杯予選でも活躍し、翌年のドイツW杯に出場した。2006年からフランスのグルノーブル、イタリアのトリノでプレーした後、2008年にJリーグに復帰。東京ヴェルディ、横浜FC、FC東京、横浜F・マリノス、杭州緑城(中国)、京都サンガF.C.モンテディオ山形、栃木SCに所属しゴールを取り続け、2021年に引退。現在はガンバ大阪のアカデミーコーチを務めている。