9月の欧州遠征
日本代表にオススメの選手(1)

 サッカー日本代表が9月に欧州へ遠征。ドイツ(9月9日)、トルコ(9月12日)と対戦する。

 元世界王者であるドイツは、昨年のカタールW杯で日本に敗れた屈辱を晴らそうと襲いかかってくるだろう。2002年日韓W杯で(日本の)ベスト8の道を閉ざしたトルコも難敵だ。

 乾坤一擲の勝負で、森保一監督がどのような航路でW杯へ進むのか――。それが、明らかにされる。本気でW杯ベスト8を望むなら、能動的にプレーできる時間を増やすしかないが......。

 そこで問われるのが、まもなく発表のメンバーだ。


日本代表入りを目指して、MLSで奮闘している高丘陽平

 新メンバーに推したいのが、リオネル・メッシの移籍で俄かに注目を浴びるメジャーリーグサッカー(MLS)、バンクーバー・ホワイトキャップスのゴールマウスを守るGK高丘陽平(27歳)である。

 昨シーズン、高丘は横浜F・マリノスのリーグ制覇に大きく貢献し、ベストイレブンに選ばれている。得意のリベロプレーは出色だったが、それ以上にシュートストップなど、総合的なゴールキーピングで突出。優勝チームのリーグベストGKが代表未選出ということ自体、非合理だ。

 2023年、高丘はさらなる進化を求めてMLS挑戦を決意し、カップ戦を含めて30試合に出場(8月27日現在)。完全に定位置をつかんでいる。今年4月には月間MVPに選出され、カップ戦のカナディアン・チャンピオンシップではチームの優勝に尽力。現在MLSのベストGKと言えるスイス代表ロマン・ビュルキに追随する水準を見せつつある。

「言葉もそうですけど、まずはプレーで納得させてから、という順番でやりました」

 高丘は日本にいる間から英語習得にも励んで準備に余念がなかったが、ピッチで存在感を見せつけた。

「一発目のトレーニング、ビルドアップだったんですけど、そこで、右足、左足を使ってポンポンとパスを通したんです。それで、みんなの見る目が変わったのを感じました。この日本人は何なんだって!

 それで開幕戦は負けたけど、いいセービングもできて。プレーで見せると、自分の言葉にも反応してくれるようになって、早い段階でひとつ目の壁はクリアできました」

 海外挑戦する日本人GKの多くが、まずはコミュニケーションのところで苦労するが、高丘は難なく乗り越えた。チームにはセルビア、スコットランド、オーストリア、パラグアイ、ベネズエラ、カナダ、アメリカとさまざまな国の代表選手がいて、それぞれの主張も強いが、そのよさを組み合わせた守備を作ることに成功している。

 また、有力選手との勝負も強力な刺激だ。

 昨シーズン王者のロサンゼルスFCとの対戦(4月/CONCACAFチャンピオンズリーグ)では、ガボン代表アタッカーのデニス・ブアンガのシュートに衝撃を受けたという。Jリーグで感じたことがない球威で、失点を喫した。しかし今年6月の再戦(リーグ戦第21節)では、アウエーでの勝利に貢献。高丘自身も成長の手応えがあった。

 一方、レアル・ソシエダでも活躍した元メキシコ代表カルロス・ベラ(ロサンゼルスFC)の左足の一撃には、"世界"を感じた。

「ベラは最後の瞬間、左足で(バウンドを生かして)上に蹴り込んできました。甘いコースはすべて消していたのに、その上をいかれた。横浜FC時代、松井(大輔)さんがよくやっていた技で」

 高丘は楽しい声音で言う。

 世界では、打ち負かしたと思っても発見の連続である。Jリーグでは経験できない迫力のクロス(高さ)やパワーシュートを受けることで、ポジショニングやステップを細かく修正。ゴールキーピング全体を格段に向上させてきた。絶対的なGKになるべく、あらゆる穴をなくし、PKストップに対してさえ、不断の努力だ。

「過去のW杯で日本がPKで勝ち上がれなかった姿を見てきて、そこで勝ち上がれるGKになれるように、自分を追い込んで」

 そう語る高丘はコロラド・ラピッズ戦(リーグ戦第10節)、見事にPKをストップし、現地で話題になった。映像データ、試合での肌感、向き合った相手との波長などで複合的に判断し、ストップする自信がついてきたという。

「代表は小さい頃から描いてきた夢です」と高丘は言う。

「日本代表としてプレーするために海外に出てきたのもあって、代表選手としてW杯に出たい、というのが大きな軸です。今は、選ばれた時に力を発揮できるように準備をして、サッカー人生のすべてを注ぎ込みたいですね。次(のW杯)が30歳、その次が34歳になりますが、2大会を目指して。次はこっちでの開催なので、そこもポジティブな要素です」

 2026年W杯はアメリカ、カナダ、メキシコの共催だ。

 他のポジションでも推奨したい選手はいる。

 DFでは、ベルギーで腕を上げた渡辺剛(26歳)に期待したい。

 昨シーズン、渡辺はコルトレイクでリーグ戦全34試合、90分間フルタイム出場し、鉄人ぶりを見せた。無事是名馬なだけでなく、CBで累積出場停止なく1シーズン稼働した事実は特筆に値する。

 今シーズンは上位ヘントに移籍すると、開幕からスタメン出場。敵陣でのセットプレーに得意のヘディングで得点に絡む一方、質実剛健な守備は硬度を増し、ラインの駆け引きでも成長を見せる。

 また、攻撃的MFではサガン鳥栖の堀米勇輝(30歳)を推す。同ポジションは欧州組で人材がそろうが、Jリーグでは屈指。左利き独特のタイミング、判断で意表を突ける。そのイメージを具現化するための技術も備え、大げさに言えば「日本のダビド・シルバ」だ。

 台頭著しい選手を選ぶことで代表に活気が生まれ、競争力も高まる。選ばれた選手は所属クラブに戻り、さらなる価値を生み出す。高丘を筆頭に、この3人はその循環を作り出せそうだが......。

 メンバー編成に注目だ。