三笘薫は、先日の対ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズ(ウルブス)戦で見せたスーパードリブルシュートで、日本代表から絶対に外すことができないスター選手に昇格した。代表の左ウイングは、向こう何年か、彼しか考えられない状態にある。

 ブライトンのロベルト・デ・ゼルビ監督は、そのウルブス戦で三笘をフル出場させていない。後半36分、アダム・ララーナと交代でベンチに下げている。事実上の「お疲れ様交代」だったが、左ウイングというポジションをひとりの選手で回すことができないことも事実だ。26人枠で戦う代表チームの場合は、2人ないし3人はほしい。準々決勝まで5試合戦うことをW杯本大会の目標とするならば、休ませる試合を設ける必要もある。

 逆に国内で行なわれる親善試合では毎回、招集しにくくなったと言える。何と言っても日本が誇る最高の選手。宝である。イングランドと極東を幾度も往復させるわけにはいかない。これは三笘に限った話ではない。すべての欧州組に言えることだ。遠藤航、鎌田大地など、とりわけ欧州のカップ戦に出場するエリート選手の扱いは慎重にしなければならない。ホームの親善試合にオールスターキャストで臨むことは、贔屓の引き倒しに値する。

 前回(エルサルバドル戦、ペルー戦)の日本代表は26人中、国内組が4人。全体の1.5割弱だったその比率を、候補選手全体の負担を均す意味でも、もう少し高めるべきだと考える。アジア枠が8.5に大幅増となり、落選の可能性が限りなくゼロになった今回のW杯予選も、その対象にすべきだろう。

 三笘をいかに休ませるか。客寄せパンダにしてはならない。というわけで、国内組の左ウイングに注目したくなる。

 先週の土曜日に行なわれた横浜F・マリノス対FC東京戦では、ディエゴ・オリベイラに同点ゴールをもたらしたFC東京の弱冠19歳、俵積田晃太が光った。近い将来、欧州に渡ってほしい選手である。


FC東京戦に久しぶりのリーグ戦先発を果たした宮市亮(横浜F・マリノス)

 一方、横浜FMの左ウイングは宮市亮が先発した。昨年7月、およそ10年ぶりに日本代表に選ばれ、東アジアE−1選手権に臨んだものの、韓国戦で右膝前十字靱帯断裂。今年5月に復帰を果たしたがいずれも交代出場で、スタメンはこの日が負傷後初めてだった。

【どこかC・ロナウド的な身体能力】

 前半12分、アンデルソン・ロペスのパスに反応する。ゴール前に走り込み、2プレー先に生まれた永戸勝也の先制ゴールに絡む決定的なアクションだった。

 走るほど速くなるそのランニングフォームに何より目を奪われた。マーカーのFC東京、白井康介は気がつけば裏を取られ、置いていかれた。持っているモノが違う。走っただけで違いが露わになった。

 快足ウイングと言えば、日本代表では右の伊東純也を想起する。こちらは髪を振り乱して走る疾走感あふれる走りだ。見るからに速そうである。それにひきかえ宮市はパッと見、それほど速そうに見えない。疾走感や躍動感は抱かせない。表情に力感はない。馬なりというか、8割の力で走っている様子なのだ。フォームに余裕がある理由である。力感なく滑らかな動きから、気がつけばグイグイと加速している。

 三笘とも対照的だ。巧緻性、俊敏性で勝るのは三笘で、プレミアの大型選手のなかに入ると、178センチの身長でも、すばしこく見える。そうした意味で三笘は日本人らしい選手である。宮市の身長は三笘より3センチ高い。たかが3センチ、されど3センチだ。スケール感で宮市は三笘に勝る。

 三笘がアイドル的なら、宮市は怪物的だ。宮市と同タイプの選手を見つけることは難しい。若干の誇張を交えれば、どこかクリスティアーノ・ロナウド的だ。身体能力の高さを感じずにはいられない。

 ゴルファーで言えば、8割の力で振っても300ヤード飛んでいくタイプ。三笘が石川遼なら、宮市は松山英樹タイプだ。宮市は排気量で三笘に勝るという感じなのである。安定感、余裕を感じさせるランニングフォームのそれは集約される。

 宮市の力を再認識したのは、7月23日に国立競技場で行なわれたマンチェスター・シティ戦だった。後半28分、交代で左ウイングの位置に入ると、何度か縦を突いた。その速さは、欧州チャンピオンを向こうに回しても際立っていた。

 試合後の会見でジョゼップ・グアルディオラ監督は、三笘について「いい選手だ」と讃えた後、こう続けた。

「今日プレーしたウイングの選手も速くていい選手だった。うちのカイル・ウォーカーを慌てさせたくらいだから」

 選手名こそ出なかったが、ウォーカーのくだりから、それが対峙する宮市であることが明らかだった。イングランド代表の右SB相手に、宮市は、ピッチを縦に引っ張り、突っかかるような動きで優位性を発揮。横浜FMのなかで最も頼りがいのある選手に映ったものだ。アーセナルの一員に戻ったかのような堂々としたアクションを見せられると、代表のみならず、もう一度、欧州でプレーさせたくなるのだった。

 現在30歳ながら、長くケガで休んでいたので使い減りしていない。実際、年齢より5歳ほど若々しく見える。もうひと花、咲かせてほしい選手である。まずは代表復帰を切望したい。