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▶前回:ついに「賃貸 VS 持ち家」議論に終止符!「都内に住むなら、家を買うべき」と断言できるワケ

宅地建物取引士の資格を持ち、「住宅購入エージェント」としてYouTubeで発信している水智氏の動画を紹介する。



水智 崚(みずちりょう)

不動産業界が大嫌いな住宅購入エージェント
「後悔しない住宅購入」の方法を追求&発信

SNS
YouTube:Tokyo Residential Academy
Instagram:@tra_miz
Twitter:@tra_miz




マンション購入前に、チェックしないと後悔する管理状況



これまで、不動産業界の闇や「賃貸 VS 持ち家」についてお伝えしてきた。

その上で「都内に中古マンションを購入しよう」と考えている方に、今回は素人ではなかなか見分けるのが難しい管理状況について解説する。

築年数、立地、内装のリノベーションがどんなによくても、管理状況が悪い物件はお勧めできない。しかし、その管理状況は内見では見分けにくいうえに、そもそも管理状況の良し悪しをどこで判断すればよいのかわかっていない消費者が多い。

マンションを購入すると、マンション自体の支払いとは別に、管理費と修繕積立金の支払いが月々必要になる。

なんとなくそれらを支払っている人も多いかもしれないが、まずこの2つの違いについて理解しよう。

管理費とは、管理を依頼している管理会社に支払う報酬額のことをいう。つまり、毎月掛け捨ての金額だ。

何に対して支払うかは、マンションによって異なるが、共用施設の維持費、日々の清掃業務、スタッフの人件費、管理会社の利益が含まれる。

共用施設として維持費がかかるプール、ジム、ラウンジがあったり、24時間管理体制やコンシェルジュを雇っていたりすると、管理費はその分高くなる。

一方「修繕積立金」は、主に10年〜15年に一度行われる大規模な修繕工事のために積み立てておくお金だ。つまり、マンション全体の資金となる

家計でいくと、生活費に回している分が管理費、将来のための積み立てが修繕積立金のようなものだ。

その違いを知らずに「修繕積立金が安くてラッキー」と思うのは危険だ。

次のことは、余談として聞いてほしい。

2023年現在、ここ数年で分譲された新築マンションの管理費は、高い傾向にある。その分、1年目の修繕積立金は安く設定されているので、消費者は合計金額では気づきにくい。それは私には、デベロッパーとそのグループの管理会社が利益を出しやすくしているように見えるが、あくまで憶測の範囲での話だ。


管理状況は、修繕積立金がどのように使われているかを見るべし!



管理費と修繕積立金の違いを理解した上で、今回焦点を当てるのは、修繕積立金。

先ほども述べたが、修繕積立金は、主に10年〜15年に一度行われる大規模修繕工事のための積立金だ。

大規模修繕工事とは、時々街中で見かける、マンション全体にネットを囲んで、足場を組んで修理しているものがそれにあたる。

そもそも、何のためにこの工事を行う必要があるのかというと、マンションの寿命を引き延ばすためだ。

鉄筋コンクリートは、適切なメンテナンスが行われれば100年以上もつと言われている。

とはいっても、どんなにきれいに施工しても、経年劣化で表面にクラックというひびが入る。

そのひびに雨水が侵入して鉄筋が錆びて、膨張してコンクリートを内側から破壊していく「爆裂」という現象が起こる。これがマンションの寿命を短くする。

この工事を適切な時期に行えるかが、マンションの寿命に大きくかかわる。

したがって、大規模修繕工事で、マンションの外壁の防水補強などを行う




マンションの管理状況が悪いと、どんなリスクがあるのか



修繕積立金がきちんと積立されていないと、どういうことになるのか。

築15年が経ち、修繕工事の見積もりを出したら、修繕積立金が全然足りなかったとする。

足りない分を補うため、まず「一時金の徴収」という形で、各居住者に不足額に応じて30万や50万円ずつ出してもらえないか打診する

これは話し合いで決まるが、そんなお金出したくないと住民に言われて、却下されることが多い。

すると、管理組合が金融機関からお金を借りることになる

しかし、金融機関から借金をするのも嫌だ、と修繕工事を見送る場合もある。実際に工事の見送りをしているマンションは、結構ある。

築20年で一度も大規模修繕工事をしたことがないマンションがあるとする。

その場合、修繕工事がされていない理由を調べるとよい。

そうそうないが、もし築15年あたりで、劣化状況を業者に依頼して調べた上で『工事は必要ない』と判断され、築20年まで工事を見送るのは管理状況が良い優秀なマンションといえる。

しかし、調査をせずにお金が足りないという理由だけで大規模修繕を行っていない場合は、建物の劣化スピードが速くなるだけなので管理状態が悪いマンションだといえる。このタイプだと、購入後の修繕積立金の急激な増額も覚悟しなければならない。

もし、購入前に管理状況の悪いマンションだとわかったら、大抵の人は購入しない。

購入希望者が減ることで、住んでいる人が入れ替わらない。もし、そのまま所有者が亡くなった場合などは、所有者不明の部屋が増えていくことになる。

そうなると、ますます修繕積立金や管理費が集まらず建物の劣化が進むことになる。さらにお金が必要になり…という負のスパイラルに陥る。

その現状を消費者は知らずに、管理状況の悪いマンションを買ってしまうことになるのが、今の不動産市場の怖いところだ




では、事前に管理状況を調べるには、どうしたらよいか。

消費者が気をつけるべきポイントを説明する。


管理状況の良し悪しの判断方法



管理状況が悪い、もしくはそうなりそうなマンションをどうやって判断するのか。

これは管理会社が発行している下記の書類をチェックする必要がある。

・重要事項調査報告書
・長期修繕計画書
・総会の議事録

不動産仲介業者の担当者に依頼して確認してもらうのがベストだ。逆に担当者からそれらの書類について、触れてこない時点で担当者を疑うべき。

今回は一つ一つの書類については詳しく説明しないが、これらの書類を確認することで、現在のマンションの資産状況や過去の修繕履歴、未来の修繕計画、マンションの現在進行形の問題を確認することができる。




ところで、そもそも管理状況の良し悪しは何で決まるのか。

管理会社の質と、管理組合の質だ

ただ、どんなに優秀な管理会社に依頼しているからといって、良い管理がされているわけではない。

結局は「管理組合=住民の管理意識の高さ」が影響する。

どんなに管理会社の質がよくて適切なアドバイスをしていても、住民の意識が低ければ、修繕積立金の増額に反対したりして、工事すべきタイミングで工事ができないことがあるからだ。

ちなみに、修繕積立金については、段階増額方式と均等法式がある。

名前のとおり、段階増額方式は、最初は設定金額が安く、だんだん上がっていく方式だ。それに対し均等法式は、新築時から毎月一定額を積み立てる方式だ。

今は、新築マンションの価格が高くなっていることもあり、段階増額方式がとられていることがほとんどだ

最初の修繕積立金を安くして、月々のトータル支払い額を抑え、物件を売りやすくするためである。

したがって、計画通り修繕積立金を上げていく必要があるのは当たり前。しかし、修繕積立金を1回も上げていないのでは、というマンションもある。そういったマンションは、要注意だ。

恐ろしいことに、マンションの管理状況の良し悪しは、価格にまったく反映されない

同じような場所にあって、同じような価格のマンションでも、管理状況の差が価格には表れていない。

だからこそ、今からマンションを購入する人は、必ず管理状況をチェックすべきだ。

なぜなら管理状況の良し悪しが価格に反映される未来は確実に迫っているからだ。

例えば、築5年のマンションと築15年のマンションがあるとする。現在は、築5年のマンションが築浅なので高くても、20年後どうなるのかは管理状況次第。

特に、新築や築年数が浅いマンションは、これまでに修繕工事などの実績がないため、管理状況を見分けにくいので要注意だ。

また、管理状況を把握できない不動産仲介業者の担当者はたくさんいるし、管理状況が悪くても消費者に伝える担当者は少ない。

管理状況が悪くても消費者の目に見える形で表れるのは、購入後しばらく経ってからの話なので、なるべく触れずに売りたいというのが担当者の心理だからだ。

だが、実は管理状況について全く触れずに終わることはない。

マンションの場合は、重要事項説明書で説明する義務がある。

契約の当日に、売り主含めて全員が集まったときに、はじめてマンションの管理状況が悪いことが告げられることがある。でも「大したことではない」と言われ契約することになる。

契約日に売主さんを目の前にしているところで「このマンションは、借金を抱えていますが、大したことありません」と突然報告される。

その状況下で、知識がない消費者が、詳細を把握できていないまま「やっぱり買うのをやめます」とは言いにくい。

そして結局、管理状況が悪いマンションを買ってしまうケースが多い。

本来は、不動産仲介業者が事前に伝えるべきことなのだが、それができていないのが現実。

これは、これまでも述べてきている不動産業界の悪しき慣習が関係している。

結局のところ、マンション購入で後悔しないためには、消費者が賢くなるべきだといえる。

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