澤穂希が熊谷紗希を激励して喝! なでしこジャパン理想のチーム像を2011年から紐解く
7月15日、あらゆる角度からサッカー界を紐解くサッカー関連番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京)にて、なでしこジャパンのワールドカップ応援企画、「女子W杯開幕!新旧なでしこ対談と勝利への"気づき"」の前編が放送された。
主将の熊谷紗希(右)は澤穂希さんからのアドバイスでモチベーションが上がった
なでしこジャパンが2011年にW杯を制したメンバーがFIFA 女子ワールドカップ2023 オーストラリア・ニュージーランド大会を盛り上げるべく持ち込んだ企画である。2011年度のバロンドールを受賞した澤穂希さんが、現チームのキャプテンを務める熊谷紗希との対談と、若手注目選手の藤野あおばのインタビューが放送された。
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澤 キャプテンはまとめ役ではあるけれど、相談相手は絶対に必要。私はあや(宮間)がいたから本当にやりやすくさせてもらっていたけど、紗希は誰と話をしてるの?
熊谷 (南)萌華は守備としてポジションも近いし、話すことは多いです。萌華より下の年代は彼女が話をしてくれていますね。メンタル的に落ち込んでいそうな選手がいれば、「ちょっと聞いてみて」という風に萌華に伝えてます。誰とでも話ができるようにはしてはいますけど、そうは言っても私が聞くことで若手が緊張して本音が言えなくなってもダメなので。そうやって、すべてではないけどフィードバックをもらっています。
澤 そういうのは頼めるんだね。
熊谷 真ん中で言うと、(長谷川)唯、(清水)梨紗はキャラクター的にもピッチ上で影響力があるので、ここは直接普通に話しています。あとは(三宅)史織も。彼女も年齢的に上になったので、史織に「どんな様子?」みたいに聞いて、下の世代の選手達の情報を聞き取っている感じです。
澤 あとはどれだけの選手が「女子サッカーの将来がかかっている」自覚を持ってプレーできるか、だね。
熊谷 私自身20歳の時って自分のことで精一杯で、そこまで考えられていなかったと思うんです。当時はもう必死でしかなくて。やっぱり年下だったし「先輩であるこの人たちの足を引っ張らないように」という想いでプレーをしていましたから。
澤 いやいや(笑)、そう思っていたら、(2011年の時決勝のPK戦で勝負を決めた時)あそこ(ゴール真ん中のGKの頭上)に蹴れなくない?
宮間 ほんと、そう思っていたらあそこには蹴れない(笑)。
澤 そうだよね? あの状況で、まじリスペクトだよ!すごいと思う。
熊谷 私が外してもまだ日本にチャンスはあったし(笑)。
澤 そのメンタルがすごい。
宮間 すごいし、それが紗希のよさだと思う。
熊谷 なんか置きに行って外したらもったいないじゃないですか。
澤 そういう思いきりのよさを持っているのがすごいと思わない?
宮間 思う!思う!
澤 もしかしたら、あの時のチームのあの雰囲気があったから、紗希が伸び伸びとプレーに出せていたのかもしれないね。
熊谷 当時は長く同じメンバーでやっていたからっていうこともあるかもしれないけど、「みんなが、みんなのよさを引き出そう!」っていうチームだったじゃないですか。だから私はそれが「理想のチーム」だと思うし、今のチームでもやれると思っています。
澤 みんなの共通意識、だね。
熊谷 澤さんが、こうやって動いたら、ボールはきっとこうくるかな、みたいな。澤さんがアプローチに行ったら、こぼれるとしたらココだな!って予測があったから。
宮間 それが、試合をコントールできているってことなんだと思う。誰かにとって予想外のことが起きても他の誰かが予測していて、あの時はみんなで試合をコントロールしていたってイメージがあるなぁ。
澤 でも、私たちはチームづくりの時間があったし、ノリさん(当時の佐々木則夫監督)とも「こうしていいですか?」「こうします!」みたいな話ができていたけど、今回はあまりにも準備期間が短いから(※東京オリンピックの開催が1年延期されたため、新体制のスタートが通常より遅かった)難しい状況ではあるけど、紗希はどんな守備をしたい?
熊谷 今、太さん(池田太監督)ともノリさんの時のような関係を持てています。太さんもハイプレスとは言うものの、状況判断が大事だってことはわかっていて、私も、もうちょっと全員の認識のなかで割りきる時は割りきるべきだと思うんです。相手によっては個で守る時間も絶対にあると思うから......。そうしたみんなの認識を絶対に合わせないといけない。相手に合わせるというか、相手のストロングを消す守備は絶対に必要だと思っています。
結局、みんなで前に行って、うしろがスライドして、スライドして......その形を要求されているから、みんなに意識づけがなされている。それはいいんです。意識づけはOK! でもその時にボールを奪われて、ロングボールを入れられて失点することもあるんです。
宮間 今は行かないよ!って言うとか?
澤 言われたことだけやっていると難しい局面になることもあるからね。
熊谷 ここからはその判断ができないとダメだと思います。
澤 結局、自分たちのミスからやられる......。
熊谷 そう思います。だから「どこまで状況を考えて動けているのか?」っていうところを突き詰めて、私は守備をしていきたい。
宮間 W杯本大会までの時間、すり合わせなきゃいけないことはたくさんある。守備においても、チーム戦術もそうだけど、個人の状況判断で相手のストロングを消す、っていうところをもう少しこだわっていかないと、自分たちが目指す結果は得られない。「ここからの時間は相手のストロングを消す守備もやっていきます!」ってことでいいですか?
澤 キレイにまとまった!すごい!!
熊谷 ですっ(笑)!
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終始、テンポのいい会話と笑い声が絶えなかった対談後、「モチベーションがさらに上がった!」と語った熊谷。チームそれぞれに色がある。準備時間が短かった分、裏を返せば、今のチームはここからどんな色をまとうこともできるということ。すべては自分たち次第であり、やらない後悔ほど色濃く影を落とすこともある。若かりし頃の気持ちと、上に立ったからわかる難しさ――熊谷が「正解かどうかわからない」と振り返るこれまでのキャプテンとしてのアプローチにも、自信が持てる時間になったのではないだろうか。
7月20日に開幕した女子W杯。今のなでしこジャパンにしかできない、熊谷キャプテンだからこそ生まれたチームとして、堂々と世界と渡り合う姿を見せてくれることを信じている。